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【2023新春インタビュー】御手洗冨士夫・キヤノン会長兼社長CEOを直撃!

財界オンライン 2023年1月5日 15時0分

製造の国内回帰も視野に

─ キヤノン会長兼社長CEOの御手洗冨士夫さん。コロナ禍の3年をどう総括しますか。 

 御手洗 20年にコロナウイルスが世界中に広がり、中国・アジア地域でもロックダウン(都市封鎖)が起こりました。その結果、様々な企業が部品不足・半導体不足に陥り、生産に大きな支障が出ましたが、当社も例外ではありませんでした。 

 その結果、当社の20年12月期の業績は売上・利益ともに前年比で大きく落ち込み、役員賞与の不支給はもちろん、長年に渡り維持・向上を続けてきた配当も半分に減配せざるを得ませんでした。非常に厳しい局面でしたが、合理化を推進すると同時にコスト削減を徹底し、調達や物流などでも最大限の工夫をすることで、その影響を最小限に抑えました。その結果、21年は増収・増益を達成し、今年も増収・増益が見えてきました。 

 また、モノ不足によるインフレが継続したことで、調達や物流のコストも膨れ上がりましたが、商品価格の値上げなどにより、何とか対応してきました。 

 今回のインフレは、好景気が続き、過剰流動性が起きて発生したインフレではありません。そうした時のインフレは、金融政策で収めることができます。しかし、モノ不足が原因となったインフレは、需給関係が正常に戻るまでは解消されません。 

 こうした状態はもうしばらく続くのではないかと思います。 

 ─ 足元では円安が進み、地政学リスクも高まっているわけですが、キヤノンは製造の国内回帰を進めています。 

 御手洗 当社はもともと国内生産を重視してきました。しかしながら、バブル崩壊後の影響を受けた90年代半ばや、11年の欧州債務危機の際には1㌦=70円台を付けるなど極端な円高が起こり、当社もやむを得ず一部の生産を海外に移しました。 

 しかしながら、昨今の地政学的な緊張感の高まりは懸念事項の1つです。これを受け現状の生産体制を見直し、徹底的な生産の合理化やロボット化を条件に、国内生産の比率を上げ、為替の状況なども考えながら国内外でバランスの取れた生産体制を構築していきます。 

 ─ この数年、キヤノンは医療機器やネットワークカメラなどの新規事業を育成してきました。この構造改革は今後も続くのですか。 

 御手洗 構造改革に終わりはありません。過去10年近くに渡り事業ポートフォリオの入れ替えをしてきたことにより、成長を期待できる企業体に変わってきました。 

 特に医療機器事業は人々が安心・安全を希求する今後の世界を考えても不可欠です。ようやく新規事業が既存のカメラ・プリンター事業などの減少分を補うところまで来ましたので、これから更に構造改革の成果をお見せできると考えています。

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