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日本企業の99%を占める中小企業の底上げをどう図るか? 答える人 小林 健・日本商工会議所会頭

財界オンライン 2023年1月13日 18時0分

中小企業の生産性向上がカギ
 ─ 日本商工会議所は1922年(大正11年)に設立され、2022年に創立100周年を迎えました。改めて、日本再生には、日本企業の99%を占める中小企業の生産性向上が不可欠です。この中小企業の底上げをどのように図っていきますか。

 小林 日本に企業は約360万社あり、99.7%を中小企業が占めています。中小企業白書によると、日本全体の従業者数は約4700万人、その7割にあたる約3200万人は中小企業で働いているわけです。

 その家族を含めれば、日本の人口の半数以上は中小企業を頼りにして生活しているわけですから、中小企業で働く方々の生活が向上しないと、日本全体の成長もないということです。

 ─ ここが大事なところですね。中小企業をいかに活性化していくか。

 小林 難しいのは、中小企業をひと括りにはできないことです。中小企業は業種・規模で特徴があり、例えば、製造業と非製造業では違いますし、非製造業の中でも飲食、宿泊、観光、運輸、サービス業など、それぞれに特徴があります。また、取引関係という点では、いわゆるサプライチェーン(供給網)の中で、大企業を中心にしたピラミッドがあり、下請け、孫請けなど、その会社の位置づけはそれぞれ違う。

 一方で、系列関係に拘らず、独自に自分の技術を持って生産したり、サービスを提供したりする会社もあるわけです。

 そうした中で、中小企業の生産性を考える際、参考となるのは、付加価値に占める人件費の割合、すなわち、労働分配率です。中小企業の労働分配率は75%~80%で非常に高い。したがって、残りの20%ないし、25%で税金を払い、投資をしているわけです。

 この20%、25%というのは、ほぼ限界に近い水準です。賃上げをしろということになったら、賃上げの原資はそこから捻出しないといけません。ですから、付加価値を高め、この20~25%の部分をもっと増やすことで労働分配率を下げる。それが生産性を高めることにつながるわけです。

 では、どうやって生産性を高めていくかが問題です。いろいろな手段が考えられますが、大企業も、中小企業も含めて、日本でいま相当遅れている部分はDX(デジタルトランスフォーメーション)です。まずはDXへの取り組みを通じて生産性を高める。これについては、商工会議所も伴走型で支援していきます。

 もう一つは、大企業と中小企業との取引を適正化することです。要するに、サプライチェーン全体で、利益もコストも適正に分かち合うということです。

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 ─ 今はエネルギー・資源価格が高騰し、あらゆる物価が上昇しています。この上昇分をいかに価格に転嫁するかが、日本企業の課題になっています。

 小林 かつての高度経済成長の時代は、大企業はコストカットのために、下請け、孫請け企業に相当負担を強いてきました。コストカットが成長の源泉だったのです。生産性向上のためにはコストカットが近道だと考えた企業経営者が多かったのかもしれません。

 わたしが商工会議所で様々な活動に参加するようになり、中小企業の実態を見るにつけ思うのは、大企業のコストカットについてくることができない中小企業はどんどん振り落とされてきたという厳しい現実でした。

 10年くらい前の円高不況局面でも大企業によるコストカット要請があり、中小企業は相当な努力をして、この要求に応え、日本全体で円高をしのいでいきました。そして、今は逆に円安局面になって、再びコスト負担を押し付けられるのかと、中小企業は非常に辛い思いをしています。

 日本全体が活性化するためには、99.7%を占める中小企業が活性化しないといけない。その方法はいろいろあると思いますが、先ずは、DXと大企業と中小企業の取引適正化、具体的には価格転嫁を実現することだと思います。

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