限られた面談時間の中で効率よいプレゼンを
「コロナ禍で従来型の対面による営業スタイルが制限され、オンラインによる面談が増えた。顧客との雑談の機会は減り、上司が同行して営業担当者の商談を確認したり、丁寧な指導ができなくなっている。そんな時、AI(人工知能)を活用することで、顧客ニーズを引き出す深掘りといった営業トークを磨き、営業効率を高めることができればと考えている」
こう語るのは、インタラクティブソリューションズ代表取締役の関根潔氏。
ITを活用した営業支援サービスを手掛けるインタラクティブソリューションズ。主な対象となるのが、関根氏の出身である製薬業界で、MR(医薬情報担当者)向けのコミュニケーション能力、俗に言う、営業トークの向上を目指している。
新型コロナウイルス感染症が拡大して早3年。あらゆる業界がテレワークとリアル出社の最適解を模索する中で、対面営業が難しくなった業種の一つが製薬業界。そもそも医師はコロナ前から多忙で、MRにとってはただでさえ面談時間を確保することが難しい。そこにコロナが加わり、MRが医師への直接訪問を軒並み制限される中で、成長してきたのが同社である。
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同社が開発する法人向けの営業支援プラットフォーム『Interactive-Pro(インタラクティブ・プロ)』は、医師とMRや、上司と部下の対話履歴をデータベース化。約8万ページの中から、必要な単語を話すと、わずか2秒でAIが関連事例を探し出して画面に表示。AIを有効に活用すると、顧客の疑問を電波が届かない場所でも速やかに解決することができる仕組みだ。
関根氏が医師に聞いたところによると、医師同士では15秒程度で説明できる専門的な話をMRに伝える場合は5~10分程度かかってしまう。こうしたギャップが医師にとってはかなり煩わしい点になっているという。
「日本では臨床をやっていないMRが臨床の話をしなければならないが、海外ではMR自体がドクターの資格を持っていたり、同等レベルの人たち。日本ではそうしたレベルに達しているのは、残念ながら全体の1~2割程度。コロナ禍で医師側が求めるレベルがより明確になったように思う。残り8割の人を、顧客が望む高いレベルに速やかに育てていく仕組みが必要であると、切実な声をいただいている」(関根氏)
そこで開発したのがAIを活用した『iRolePlay(アイロールプレイ)』。時間や場所をとられず、プレゼンテーションやコミュニケーションの練習を図ることができる仕組みだ。
このツールを活用することで、新入社員や若手のレベルアップに加え、経験豊富な営業担当者のプレゼンやノウハウを共有。実際の営業活動と同じようにAIドクターに質問することもできる。スムーズな会話ができるようになったら、上司などと実際に会話をするなどして、人とAIで役割を分担できる。
営業担当者にとっては限られた面談時間の中で、効率よいプレゼンが求められる。同社の調査によると、〝話すこと〟が記憶の定着を促し、伝わる説明につながるのを64%アップさせ、効率よく営業活動ができるようになったという。
「かつては40代が20代のMRの面倒をみていたのに、今はどこも人手不足になって、30代同士、20代同士で練習していたりする。でも、経験がある人が面倒をみるから育つのに、今はそうでないから人が育ちにくくなっている。上司だって忙しいので、1から10まで人対人で練習するよりも、AIを効率的に活用した方がいい」(関根氏)
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研究開発型企業として…
関根氏は1965年岡山県生まれ。明治薬科大学で薬剤師免許を取得し、1990年日本ロシュ(現・中外製薬)入社。ここで病院や薬局への営業やマーケティングを行い、2001年ノバルティスファーマへ転職。
共にスイスの製薬企業で「スイス企業はムラ社会で、競合というよりも、どうしたら国全体として生き残れるのかを考える文化があり、本部長同士がトレードしたような形での転職になった」(関根氏)と苦笑する。
ここで顧客データベースや製品情報サイトの構築、営業社員向け社内イントラネットの構築など、ITをビジネスに活用した様々な仕組みづくりに従事。DTC(疾患啓発)サイトの構築で「厚生労働大臣賞」を受賞するなどの実績を残した。
ところが、関根氏は過労がたたってダウン。この頃、世の中にはパソコンよりも小型で手軽に持ち運ぶことができるタブレット端末が普及。会社にあるコンテンツやデータの中から最適な情報を取り出し、顧客と面談した時に即座に提供できる仕組みができれば、営業活動がもっと効率化できるようになるのではないかと考え、2010年に独立して同社を設立した。
最近はアイロールプレイの仕組みを生かして、MR向けの営業トークの向上だけでなく、金融機関や自動車業界などの要請を受けて、外国人社員の日本語練習などにも応用。あらゆる業種の営業スキルや語学学習への活用を図ろうとしている。
「人間は常に新しい情報をつくり、アップグレードする。AIは新しい情報はつくれないが、過去の情報から学ぶ。人間とAIをうまくコラボさせることができれば、視野が広がった営業スタイルを習得できるのではないかと。特に最近は政府がリスキリング(再教育)など人への投資に充てるとしており、様々な教育現場での応用も考えられる。これから労働人口がどんどん減っていく中で、日本再生のカギを握るのは〝人〟。当社も研究開発型企業として、ITの活用で人間の価値を今まで以上に高めていくことができれば」と語る関根氏。
製薬業界での実績を武器に、新たな領域への挑戦が続く。
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「コロナ禍で従来型の対面による営業スタイルが制限され、オンラインによる面談が増えた。顧客との雑談の機会は減り、上司が同行して営業担当者の商談を確認したり、丁寧な指導ができなくなっている。そんな時、AI(人工知能)を活用することで、顧客ニーズを引き出す深掘りといった営業トークを磨き、営業効率を高めることができればと考えている」
こう語るのは、インタラクティブソリューションズ代表取締役の関根潔氏。
ITを活用した営業支援サービスを手掛けるインタラクティブソリューションズ。主な対象となるのが、関根氏の出身である製薬業界で、MR(医薬情報担当者)向けのコミュニケーション能力、俗に言う、営業トークの向上を目指している。
新型コロナウイルス感染症が拡大して早3年。あらゆる業界がテレワークとリアル出社の最適解を模索する中で、対面営業が難しくなった業種の一つが製薬業界。そもそも医師はコロナ前から多忙で、MRにとってはただでさえ面談時間を確保することが難しい。そこにコロナが加わり、MRが医師への直接訪問を軒並み制限される中で、成長してきたのが同社である。
【力をためて跳躍! 卯年生まれの 経営トップたち】アサヒグループホールディングス会長兼取締役会議長 小路 明善さん
同社が開発する法人向けの営業支援プラットフォーム『Interactive-Pro(インタラクティブ・プロ)』は、医師とMRや、上司と部下の対話履歴をデータベース化。約8万ページの中から、必要な単語を話すと、わずか2秒でAIが関連事例を探し出して画面に表示。AIを有効に活用すると、顧客の疑問を電波が届かない場所でも速やかに解決することができる仕組みだ。
関根氏が医師に聞いたところによると、医師同士では15秒程度で説明できる専門的な話をMRに伝える場合は5~10分程度かかってしまう。こうしたギャップが医師にとってはかなり煩わしい点になっているという。
「日本では臨床をやっていないMRが臨床の話をしなければならないが、海外ではMR自体がドクターの資格を持っていたり、同等レベルの人たち。日本ではそうしたレベルに達しているのは、残念ながら全体の1~2割程度。コロナ禍で医師側が求めるレベルがより明確になったように思う。残り8割の人を、顧客が望む高いレベルに速やかに育てていく仕組みが必要であると、切実な声をいただいている」(関根氏)
そこで開発したのがAIを活用した『iRolePlay(アイロールプレイ)』。時間や場所をとられず、プレゼンテーションやコミュニケーションの練習を図ることができる仕組みだ。
このツールを活用することで、新入社員や若手のレベルアップに加え、経験豊富な営業担当者のプレゼンやノウハウを共有。実際の営業活動と同じようにAIドクターに質問することもできる。スムーズな会話ができるようになったら、上司などと実際に会話をするなどして、人とAIで役割を分担できる。
営業担当者にとっては限られた面談時間の中で、効率よいプレゼンが求められる。同社の調査によると、〝話すこと〟が記憶の定着を促し、伝わる説明につながるのを64%アップさせ、効率よく営業活動ができるようになったという。
「かつては40代が20代のMRの面倒をみていたのに、今はどこも人手不足になって、30代同士、20代同士で練習していたりする。でも、経験がある人が面倒をみるから育つのに、今はそうでないから人が育ちにくくなっている。上司だって忙しいので、1から10まで人対人で練習するよりも、AIを効率的に活用した方がいい」(関根氏)
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研究開発型企業として…
関根氏は1965年岡山県生まれ。明治薬科大学で薬剤師免許を取得し、1990年日本ロシュ(現・中外製薬)入社。ここで病院や薬局への営業やマーケティングを行い、2001年ノバルティスファーマへ転職。
共にスイスの製薬企業で「スイス企業はムラ社会で、競合というよりも、どうしたら国全体として生き残れるのかを考える文化があり、本部長同士がトレードしたような形での転職になった」(関根氏)と苦笑する。
ここで顧客データベースや製品情報サイトの構築、営業社員向け社内イントラネットの構築など、ITをビジネスに活用した様々な仕組みづくりに従事。DTC(疾患啓発)サイトの構築で「厚生労働大臣賞」を受賞するなどの実績を残した。
ところが、関根氏は過労がたたってダウン。この頃、世の中にはパソコンよりも小型で手軽に持ち運ぶことができるタブレット端末が普及。会社にあるコンテンツやデータの中から最適な情報を取り出し、顧客と面談した時に即座に提供できる仕組みができれば、営業活動がもっと効率化できるようになるのではないかと考え、2010年に独立して同社を設立した。
最近はアイロールプレイの仕組みを生かして、MR向けの営業トークの向上だけでなく、金融機関や自動車業界などの要請を受けて、外国人社員の日本語練習などにも応用。あらゆる業種の営業スキルや語学学習への活用を図ろうとしている。
「人間は常に新しい情報をつくり、アップグレードする。AIは新しい情報はつくれないが、過去の情報から学ぶ。人間とAIをうまくコラボさせることができれば、視野が広がった営業スタイルを習得できるのではないかと。特に最近は政府がリスキリング(再教育)など人への投資に充てるとしており、様々な教育現場での応用も考えられる。これから労働人口がどんどん減っていく中で、日本再生のカギを握るのは〝人〟。当社も研究開発型企業として、ITの活用で人間の価値を今まで以上に高めていくことができれば」と語る関根氏。
製薬業界での実績を武器に、新たな領域への挑戦が続く。
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