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【わたしの一冊】『人生の経営』ソニー元会長・出井 伸之さんを偲んで

財界オンライン 2023年2月5日 11時30分

全てのサラリーマンへの遺言

 昨年、84歳で惜しくも亡くなった出井伸之氏の生前、最後の著書である。出井さんは、ソニーが電機メーカーからデジタル型テクノロジー企業へと大きく舵を切ることを先導したCEOであり、ソニー退任後はクオンタムリープを創業し、ベンチャー支援に大きな足跡を残された。

 私たちの経営共創基盤グループも、16年前の創業時に前面に立って応援してくれたのは出井さんだった。松本大さんのマネックスグループ、さらには教育の世界では小林りんさんのインターナショナル・スクール・オブ・軽井沢など、まさに時代を変えるイノベーションを志向する若者を、自ら行動を起こし、応援して来られたのである。

 普通、大企業のトップをつとめたような方は、当初はどうなるか分からない構想に対し、自らの名前まで出して応援することに逡巡する。しかし、出井さんはそんなことは気にせず、世の中を変える志に燃える私たちを全面支援してくれた。

 4半世紀前に「デジタル・ドリーム・キッズ」と言う概念を打ち出し、会社を変えるために企業統治改革にも着手した圧倒的先見性と言い、やや不本意な形でソニーCEOを退任した後もイノベーターたちを応援し続けた信念と行動力と言い、出井さんの偉大さは歴史が証明しつつある。

 本書には、一介のサラリーマンだった出井さんが、どのように巨大企業ソニーのトップになり、さらには本格的な会社改造の戦いを始めるような大経営者に成長したか。なおかつソニーの枠を超えてスタートアップ的な空間でも大きな業績を残すようなユニバーサルな経営リーダーになっていったか、が活写されている。

 最近、大企業的な空間から飛び出して経営リーダーに成長しよう、と言う本はたくさん出ている。しかし、出井さんは大企業の中で育ってもイノベーションリーダーになれるロールモデルであり、老若男女を問わず、多くのサラリーマン的立場にいる人々に是非とも手に取ってもらいたい一冊である。

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