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「スモールビジネスをテクノロジーで支える」 freee・佐々木大輔の中小企業活性化策

財界オンライン 2023年2月16日 7時0分

紙と人手に依存した仕事をテクノロジーの活用で便利に

「この10年でスマートフォンやEC(電子商取引)は当たり前になり、テクノロジーが人々の生活スタイルを大きく変えた。一方、バックオフィスの世界は、未だに請求書は紙のやり取りが多く、データを手入力することも多い。こうした紙と人手に依存してきた仕事のやり方を、テクノロジーの活用でもっと便利にしていくことができれば」

 こう語るのは、freee(以下、フリー)CEO(最高経営責任者)の佐々木大輔氏。

 1月25日、東京国際フォーラムで『バックオフィスの日2023』が開催された。主催はクラウド会計ソフトを手掛けるフリー。企業経営者や経理、人事、総務といったあらゆるバックオフィス関係者に向けて、会計ソフトや人事労務ソフトなど、企業の経営効率化に向けた同社の様々なサービスが展示された。

 多くの来場者が訪れたこの日、『財界』誌のインタビューに応じた佐々木氏は、「10年前に個人事業主向けに確定申告についてのセミナーをやったら一人しか来なかった。それがこれだけの人に集まってもらえるんだから」と苦笑していた。

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「インボイス制度開始に向けていつまでに何をしたらいいの?」

「請求書の管理をどうしたらいいの?」

 特に来場者の関心が高かったのが、今年10月に施行されるインボイス制度(改正消費税法)と24年1月から義務化される改正電子帳簿保存法への対応だ。

 インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)と呼ばれる一定の条件を満たす請求書や領収書等のやりとりを通じ、消費税の仕入税額控除をできるようにする制度。売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものだ。

 また、昨年から改正電子帳簿保存法が施行され、来年1月から紙で保存していた帳簿書類を電磁的記録(電子データ)で保存することが義務付けられる。

 政府の狙いは、なかなか進まない中小企業のデジタル化を推進させようということ。

 例えば、インボイス制度対応において事業者が対応するべきことは、事業者登録申請・取引先の登録申請・適格請求書の作成の3つに集約される。それが同社のソフトを導入すれば、基本的に全ての課題が解決できるという。どのように対応していいのか分からない企業やデジタル対応に遅れている中小企業は多く、同社に注目が集まるのはこうした理由があるからだ。

 同社CPO(最高プロダクト責任者)の東後澄人氏は「課題意識を持っていたり、インボイス登録をされる方はかなり増えてきている。ただ、何をしなければいけないのかとか、これで十分なのかということに関しては、まだ不安を感じている人が多い。だからこそ、当社もそこをサポートしたい」と語る。

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中小企業が変わるきっかけを

「あらゆる世の中に挑戦するスモールビジネスの方々が、より強く、より格好良くなるために、われわれがテクノロジーで支えていく。そのために誰もが自由に経営できる統合型経営プラットフォームを提供していく」

 このように考えて、佐々木氏が2012年7月に設立したのがフリーである。

 佐々木氏は1980年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。投資ファンドやITベンチャーを経て、2008年に米グーグルへ入社する。

 グーグルでは日本・アジア地域のマーケティングを担当。まだFAXが当たり前だった日本の中小企業を見て、デジタル化が遅れていることに危機感を抱いたことが創業につながった。

「やはり、日本の中小企業の生産性の低さやテクノロジー活用の遅れを少しでも改善できればと。大企業と違って、中小企業には専門的な知識を持った人や部署が無いので、新しい情報を得ることが難しい。そういった課題はまだまだ沢山あると思うので、われわれがうまい形でまとめて情報をお伝えし、中小企業の皆さんが変わるきっかけをつくることが大事」(佐々木氏)

 日本再生には日本の99%を占める中小企業の活性化が不可欠。課題解決に向けた佐々木氏の挑戦は続く。

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