Infoseek 楽天

第一生命経済研究所・熊野英生氏の危機感「ドイツに追いつかれる日本」

財界オンライン 2023年2月21日 7時0分

日本の経済規模(名目GDP=国内総生産)がドル換算で小さくなっている。気が付けば、ドイツが徐々に接近していて、近々、追い抜かれる可能性がある。IMF(国際通貨基金)の経済予測(2022年10月)を使うと、22年は日本がドイツを6.7%ほど上回る経済規模と予測されていた。23年は6.0%とさらに差は縮まる。もしも、日本がドイツに抜かれると、世界で3位から4位へと転落する。米国、中国、ドイツ、日本という順位になる。

【あわせて読みたい】【株価はどう動く?】 日本株を見直す「バイ・ジャパン」の時代が到来か?

 日本が抜かれる理由を、コロナ前の19年から22年までで調べてみると、変化率の約6割が物価変動によるものだった。ドイツは、インフレによって経済規模が膨張している。為替要因は、寄与度の約4割を占めていた。実は、実質GDPの変化率では、日本とドイツはほとんど差がなかった。

 しかし、不思議なのは、ドイツのインフレ率が高くても、為替レートが割安にならないことである。理由は、日本が利上げをせず、ユーロ圏では利上げをしていることである。日本は、低金利+通貨安のせいで、ドイツに抜かれようとしている。

 ドイツと日本を比べると、日本の方が人口が多い。人口8400万人のドイツが、人口1億2500万人の日本よりも経済規模を大きくできるということは、1人当たりGDPがドイツの方が1.5倍も高いことを示している。

 しかも、労働者の年間総労働時間は日本の1600時間に対して、ドイツは1300時間と短い。つまり、労働時間1時間当たりの生産性でもドイツの方が高いということになる。

 日本では5年くらい前に「働き方改革」が叫ばれた。働き方を合理的に見直して、生産性を高めようという掛け声として「働き方改革」が強調された。

 現在、日本では賃上げを政府が企業に求めている。確かに、大企業は労働分配率が相対的に低く、まだ賃上げの余地が大きいように思える。それでも、単に分配率を引き上げるだけならば、賃上げの余地は限られてしまう。もしも、継続的な賃上げを今年も来年も長く行っていこうというのであれば、やはり生産性を高めていかねばならない。

 ドイツは、日本と同じく、人口減少と高齢化の圧力にさらされている。ドイツの場合は、輸出を通じて外需を取り込むことで、内需に働く減少圧力を跳ね返そうとしている。日本は、ドイツのように製造業に強みがある。だから、日本は1人当たりGDPを増やすために、もっと輸出拡大を目指していく必要があると考えられる。

 興味深いのは、ドイツの自動車関連産業が進出した東欧で、1人当たり平均賃金が上がり、スロベニアは日本を抜いたことだ。チェコ、ハンガリーも日本の平均賃金に接近している。ドイツ企業の海外展開は、進出先の東欧をも豊かにしている。

この記事の関連ニュース