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『ユニクロ』会長兼社長・柳井 正の「会社はいつでも潰れるもの」

財界オンライン 2023年2月27日 7時0分

企業は何のためにあるのか?

 ─ 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るってから3年、ロシアによるウクライナ侵攻も早1年が経ちました。世界が非常に混沌とする中で、経営の基本軸が求められていると思うのですが、柳井さんが今、思うことを聞かせてもらえませんか。

 柳井 企業はもともと何のためにあるのか? ということですよね。社会や世界にとって、良い影響を与える。そういう組織や団体でない限り、金儲けだけやっても存在する価値がないと思うんですね。

 これは中小企業でも、零細企業でも、大企業でも一緒だと思うんですけど、社会の公器だと思ってやった企業だけが永続して成長しています。だから、そこに自分中心みたいな人が入るとダメになる。本当の客観性というのはなかなか難しいのかもしれませんが、自分自身でよく考えて、客観的に正しいことは何か? と。

 政府やメディアなど、いろいろな利害関係者が言っていることを鵜呑みにしたり、単純に信じたりしないようにしなければならないと思いますし、そういうことを追求していくしかないのではないでしょうか。

 ─ これは世界共通の考えだと。

 柳井 共通です。皆さん、違いのことばかり主張するんですけど、8~9割は世界で共通していますよ。だったら、共通しているものを一緒にやればいいのではないかと思います。

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会社はいつでも潰れるもの

 柳井 それと最近思うのは、日本自体の劣化ですよね。昔の人は戦争の記憶があったから皆、苦労していますよね。今の人はあまり苦労していないように感じます。

 それと成長するということに対しての価値観が違うんです。すでに資産みたいなのができていて、その地位や会社自体が安定することが当たり前だと思っている。でも、会社に安定ということはないんですよ。

 だから、経営者には危機感がないとダメだし、会社はいつでも潰れるもの。潰れないようにするために経営が必要なのだと思います。

 ─ 大事なのは、その辺りの覚悟ですね。命ある限り、会社を潰さないぞと。

 柳井 命ある限りだし、世界中にはチャンスがごまんとあるんです。

 われわれだって、衰退する石炭の町(山口県宇部市)で創業し、しかも、商店街にある洋服屋ですからね。ファッション産業が成功する要素が何もないところから出発して、現在の位置にいるということを考えたら、わたし以上に成功する要素を持っている人は沢山いるということだと思います。

 ─ これも勇気づけられる話ですね。人はそういう可能性を皆持っていると。

 柳井 持っていますよ。だから、自分がそれをまず考えて、どういうことをやろうかというのを個別、具体的に書き出して、その上で実行する。実行して、達成するのはどういうことなのか? というのを考えて達成する。それの繰り返しですよ。

 そう考えると、今は凄いチャンスですよ。皆消極的になっている今こそ、飛び出せばチャンスがあると思いますね。

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