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【厚生労働省】「年収の壁」問題 政府の新たな課題に

財界オンライン 2023年3月23日 11時30分

パート従業員らの年収が一定額を超えると社会保険料が生じる「年収の壁」問題。女性らの働く意欲を阻害し、労働現場の人手不足につながっているとの指摘を踏まえ、岸田文雄首相は制度の見直しを表明した。政府は今後、現行制度の問題点を整理した上で具体案を議論するが、本格的な見直しには課題も多く、「解はなかなか見えない」(厚生労働省幹部)のが現状だ。

 現在、非正規の配偶者が働く際、配偶者控除の適用や社会保険の加入で「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」「201万円の壁」などが発生。会社員家庭では社会保険料負担に伴う世帯収入が減らないため、「130万円未満」の年収となるよう仕事量を調整するケースが多い。

 岸田首相は2月上旬の衆院予算委員会の質疑で「年収130万円」の基準に関し「制度を見直し、幅広く対応策を検討する」と強調。「『130万円の壁』の問題のみならず、正規・非正規の制度・待遇面の差の改善など幅広い取り組みを進める」と踏み込んだ。

 こうした壁の問題は以前から問題視されていたが、自営業者や単身世帯、共働き世帯との公平性の観点から見直しが進んでこなかった。制度の見直しに本格的に取り組む場合、サラリーマンらの配偶者の年金保険料納付を免除する「第3号被保険者制度」も含めた大幅な改正が必要となるが、自民党内での慎重意見が根強く、政治的なハードルが非常に高いのが現状だ。

 別の官房幹部は「壁となる基準を引き上げても引き下げても公平性の問題は残るし、新たな壁が発生するだけだ。130万円の基準を変えるのは無理だろう」と断言する。

 政府・与党内では社会保険料の負担発生で減った手取り分を何らかの形で時限的に補充する案も浮上。与党で具体的な議論が進められているが、この幹部は公平性の観点から実現を困難視。仮に導入する場合には経済活性化や労働力確保など新たな大義名分も求められそうだ。

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