日本では地銀への影響が懸念されるが…
連鎖危機の入り口となるか、それとも食い止めることができるか─。
【あわせて読みたい】賃上げ、金融環境の激変下をどう生き抜く─ 問われる経営者の覚悟
2023年3月10日、米国のテクノロジー企業向け融資で知られたシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻した。そのわずか2日後、暗号資産(仮想通貨)企業への融資で知られたシグネチャー・バンクも経営破綻。市場は「金融危機」の入り口になるかどうかを慎重に見極めている。
SVBは1983年創業。米国のスタートアップやベンチャーキャピタルからの預金を多く集める一方で、企業の資金需要が低かったことからMBS(住宅ローン担保証券)などで運用に回していた。
だが、コロナ禍を受けた大規模金融緩和後に米国ではインフレが進行。これを受けたFRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締め、利上げによって米国の金利は急ピッチで上昇。
これに伴ってSVBが保有していた債券の含み損も急拡大。この状況を受けSVBは8日に増資を発表したが、逆に預金者の不安心理が増幅、9日には預金全体の約4分の1が引き出される「取り付け騒ぎ」となった。
「特殊事例として食い止められるかは、FRBが投資家、預金者の不安心理をどれだけ抑えられるかにかかる」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏。
SVBのケースは流動性が短期間で失われた。そこでFRBはSVB、シグネチャー・バンクとも破綻はさせたものの、「例外措置」として預金を全額保護することで、市場や預金者の動揺を抑えることに躍起。
ここで抑え込みができなければ金利引き上げの副作用ということでインフレ抑制ができなくなる恐れがあり「不況下の物価高」も現実味を帯びる。
さらに金融引き締めを行う欧州への波及や日本への影響がどうなるか。日本では米金利上昇に伴いメガバンクや地銀などでは外債含み損が拡大。メガバンクの利益体質では影響を抑えられても、経営基盤が脆弱な地銀では影響が拡大しかねない。
4月には日本銀行新総裁に植田和男氏が就くが、「金融正常化」の難しさを象徴する出来事が起きたと言える。
連鎖危機の入り口となるか、それとも食い止めることができるか─。
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2023年3月10日、米国のテクノロジー企業向け融資で知られたシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻した。そのわずか2日後、暗号資産(仮想通貨)企業への融資で知られたシグネチャー・バンクも経営破綻。市場は「金融危機」の入り口になるかどうかを慎重に見極めている。
SVBは1983年創業。米国のスタートアップやベンチャーキャピタルからの預金を多く集める一方で、企業の資金需要が低かったことからMBS(住宅ローン担保証券)などで運用に回していた。
だが、コロナ禍を受けた大規模金融緩和後に米国ではインフレが進行。これを受けたFRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締め、利上げによって米国の金利は急ピッチで上昇。
これに伴ってSVBが保有していた債券の含み損も急拡大。この状況を受けSVBは8日に増資を発表したが、逆に預金者の不安心理が増幅、9日には預金全体の約4分の1が引き出される「取り付け騒ぎ」となった。
「特殊事例として食い止められるかは、FRBが投資家、預金者の不安心理をどれだけ抑えられるかにかかる」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏。
SVBのケースは流動性が短期間で失われた。そこでFRBはSVB、シグネチャー・バンクとも破綻はさせたものの、「例外措置」として預金を全額保護することで、市場や預金者の動揺を抑えることに躍起。
ここで抑え込みができなければ金利引き上げの副作用ということでインフレ抑制ができなくなる恐れがあり「不況下の物価高」も現実味を帯びる。
さらに金融引き締めを行う欧州への波及や日本への影響がどうなるか。日本では米金利上昇に伴いメガバンクや地銀などでは外債含み損が拡大。メガバンクの利益体質では影響を抑えられても、経営基盤が脆弱な地銀では影響が拡大しかねない。
4月には日本銀行新総裁に植田和男氏が就くが、「金融正常化」の難しさを象徴する出来事が起きたと言える。