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【訃報】イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊氏が死去

財界オンライン 2023年3月25日 15時0分

間口二間半のお店から日本最大の流通グループへ

 3月10日、セブン&アイ・ホールディングス名誉会長で、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊氏が死去した。98歳だった。

 伊藤氏は大正13年4月生まれ。横浜市立商業専門学校(現・横浜市立大学)在学中に陸軍に新設された船舶兵の特別幹部候補生として約1年訓練を受けた。敗戦で復学し、兄・譲氏が経営する東京・千住の洋品店「羊華堂」を手伝うことになった。間口二間半に奥行き二間の小さなお店だったという。

 伊藤氏は1958年(昭和33年)に前身の「ヨーカ堂」を設立。欧米の流通業を視察したことをきっかけに、チェーンストア経営に乗り出し、品揃えを食品や生活用品に広げていった。

 その後、総合スーパー(GMS)だけでなく、ファミリーレストランの「デニーズ」や盟友・鈴木敏文氏(現・名誉顧問)と共にコンビニエンスストア「セブン‐イレブン」などの事業を展開。現在のセブン&アイの成長の礎を築いてきた。

 江戸商人で〝闘志を内に秘めるタイプ〟と称され、関西商人で〝ギラギラと闘志をむき出しにする〟ダイエーの中内㓛氏とはよく比較された。競合他社が店舗拡大に伴う売り上げ拡大に突き進む中、利益重視の計画を掲げたことでも知られている。

「うちは、一度も売上高競争に参加したことはないんです。われわれはミエをはる商売はやる必要はない。地域のお客様にどんないい品物をどれだけ安く提供できるかが勝負であった、何でも安く売ればいいというものじゃないですね。生活に便利な商品を選択できるように置くことも必要でしょう」(「財界」1976年春季特大号)

 ただ、現在、祖業であるGMS事業は不振が続いており、伊藤氏が亡くなる前日の9日、セブン&アイは126店舗(2月末時点)あるイトーヨーカ堂のうち、新たに14店舗の閉鎖を決定したばかり。アパレル事業からも完全に撤退し、今後はグループ戦略の軸である「食」に経営資源を集中する方針。

 時代が変わればビジネスモデルも変わっていく。しかし、同社の社是でもあり、伊藤氏の「信頼と誠実」という精神は今後も受け継がれていくのだろう。

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