「ある試算によれば、関東だけで年間37万人のご高齢の方々が行き場を失ってしまう」─。こう警鐘を鳴らすのは医師で京都大学経営管理大学院特命教授でもある高齢社会街づくり研究所社長の岩尾聡士氏だ。医療依存度の高くなる後期高齢者が急増する日本で、特に中間層・低所得者層の退院後の受け皿をどうするかが喫緊の課題として浮上。そんな中で行き場を失った高齢者を救う「Dr.IWAOモデル」を提唱する。カギは既存の訪問看護ステーションと看護師だ。「病院完結型医療」から「地域完結型医療介護」へどう切り替えていくか?
特許の崖を乗り越えた【アステラス】 新社長に副社長の岡村副社長
我が国を断じて〝姥捨て山〟にさせない
─ 岩尾さんは医師でありながらベンチャー企業の経営者でもあります。まずは日本の医療に関する課題認識とは。
岩尾 今、日本の医療・介護は危機的な状況にあります。世界に冠たる国民皆保険のお陰で国民全員が長生きできる国になりました。そういった国は日本だけです。2005年から75歳以上のご高齢の方々が急増していますが、他国は40年頃から増えると言われています。
75歳以上の人口が増える国と、65歳以上の人口が増える国では構造が全く違います。75歳以上の人口が増える国では、医療と介護の問題が同時発生し、既存のヘルスケアシステムではカバーし切れない医療難民や介護難民が急増します。
米国などは1980年代から医療体制が充実した「スキルド・ナーシング・ファシリティ」というナーシングホームを病院の前に建て、病院を退院した患者さんが入居し、何かあっても医師や看護師がいつでも駆け付けてフォローができる体制をとっています。その結果、米国の平均在院日数は約5日となっています。
─ 日本はもっと長いと?
岩尾 はい。足元の平均在院日数は病院の種類にもよりますが、約16日です。今、国は社会保障費削減に向けた取り組みの一環で、在院日数の削減に動いています。しかし、退院した人たちの受け皿の整備が不十分で、何もしなければ極端な話、我が国は〝姥捨て山〟になってしまいます。
人生100年時代では、ご高齢の方々を退院した後も寝たきりにせず、関節を拘縮させず、認知症を進行させないといったケアを継続しなければなりません。我々は今、地域全体でご高齢の方々を看守る仕組みをつくろうと動いています。医療度の高い施設が病院と在宅療養のハブとなり、地域に密着しながら先進的な在宅医療の充実を実現します。それが「Town Hospital Dr.IWAOモデル」です。
─ 退院後の高齢者の受け皿を作るわけですね。
岩尾 はい。我々のグループでは約1200人の患者さんを在宅、施設計約250人のスタッフで看ています。このモデルを「Dr.IWAOモデル」と呼んでいます。ご高齢の方々や障がいを持たれた方が住み慣れた街で暮らすことを可能にするモデルと言えます。各士業の網の目のネットワークで街を看守るイメージです。
我々は名古屋市及びその近郊エリアにおいて3施設120床の施設を展開しており、医療度の高い要介護者でも入居できる体制を整備しています。また、この120床以外の1000人以上の患者さんも在宅で診ています。常勤の医師7人と非常勤の医師8人に加え、施設では看護師が常勤換算で40数名、介護士が60数名、理学療法士と作業療法士が約20数名、さらに言語聴覚士も10数名配置しています。
中間層、富裕層向けのモデルが成功
─ この仕組みを整えるまでに、どのくらいの期間がかかったのですか。
岩尾 20年弱です。もともと日本は米国と違って富裕層や中間層、低所得者層それぞれに医療体制を分けてはいませんでした。例えば住宅の分布を見ても、米国では富裕層が住む街と低所得層が住む街とは、はっきり分かれていますが、日本ではそういった区別があまりありません。
そして、日本では医療依存度が高い中間層や低所得者層のご高齢の方々の退院後の受け皿整備が急務となっています。先ほど申し上げた我々の展開する3施設は主に中間層、富裕層を対象としているのですが、これからは低所得者層の受け皿がますます必要になります。
ある試算によれば、関東だけで年間37万人のご高齢の方々が行き場を失ってしまうとされています。しかも、低所得の方の割合は、富裕層の集まっている地域でも7割、低所得者層の多い地域では9割と言われています。国として皆が幸せになるためには、しっかりとした対策が必要ではないでしょうか?
─ 財源はどのように確保していく考えですか。
岩尾 日本には医療体制を支えてきた冠たる国民皆保険があります。これを活用すれば、安定した仕組みが構築できます。もちろん、利益率は落ちますが、投資家サイドから見て、十分に許容できる営業利益が出せると考えています。
先ほど申し上げた行き場をなくす7割から9割の方々をどうするかを考え、老若男女、貧富の差なく、等しく幸福な社会を我が国において継続するためには、医療で成功してきた方法と同じ手法でこういった方々を支える仕組みづくりを短い期間で整備していかなければならないと考えています。この拠点網の拡大をITソリューション、フランチャイズ(FC)の仕組みで達成したいと考えています。
─ そういうノウハウも持っているのですか。
岩尾 はい。当社は国の研究費で作成したカルテの共有の仕組みを持っています。また、セブン-イレブン・ジャパンの元常務を顧問で迎え入れています。
─ なぜFCなのですか。
岩尾 もともと日本には多くの訪問看護ステーションがあります。そのうちの半分が3人から5人の中小零細運営なのです。これらの訪問看護ステーションは事務作業も含め、ギリギリのところで運営しています。2~3年で疲弊しきってステーションを廃業するというケースが後を絶ちません。
しかも、訪問看護師は現場のプロではありますが、経営のプロではありません。これに加え、日本特有の問題として訪問看護師を含めた在宅医療の地位は決して高くないこともあります。
そこでしっかりとしたキャリアパスを示し、訪問看護師のブランド価値を京都大学、財団法人生涯デザイン研究所で高めることができれば、訪問看護師もプライドを持って働くことができ、離職を防ぐこともできます。さらには病院を退院した方々を地域で、しっかりケアする新しいシステムを構築できます。
訪問看護ステーションの活用
─ これを「Dr.IWAOモデル」で展開していくと。
岩尾 はい。ここで大事なのがハード運営だけではなく、各地域に訪問看護ステーションの輪を広げていく点です。
我々は現場でのノウハウの共有に加え、ルート設定やシフト編成、総務や経理などの事務作業を代替するソフトプロバイダーとして機能する「スペシャリティーケアステーションDr.IWAOモデル」を構築していく予定です。
─ 本業ではない業務を省くことができれば、訪問看護師は看護に集中できますね。
岩尾 はい。ですから、今までの「病院完結型」の仕組みから「地域完結型」の仕組みに切り替えていくことになります。これまでも在宅医療の重要性は認識されていたのですが、それを一気に広げようと思っても、そのためのインフラがありませんでした。
しかし、スペシャリティーケアステーションDr.IWAOモデルでは訪問看護ステーションこそが地域完結型医療介護の主役となると考えています。
─ そうなると、訪問看護ステーションというハードも一定程度必要になりますが。
岩尾 我々には医療面、アカデミックでの信用はありますが、金融面での信用は不足しています。ファンドと連携することができれば、1つのモデルが成功したときに、その資金力を活かして一気に拠点展開が可能です。
訪問看護ステーションの方々にDr.IWAOモデルに参加いただき、フランチャイジーとして加盟いただければ、しっかりと利益も確保できます。必然的に訪問看護師の年収も増やすことができます。スピードも直営と比較して格段に上がります。
また、当直が毎日のようにある労働環境が1カ月に1回ぐらいになりますし、キャリアパスもできます。休眠看護師も現場に戻って来ようと考えますし、さらには症例を集め、専門性を高めることもできます。既存の病院で働く看護師との連携も可能になります。DXにより職場のフレキシビリティーをあげることが可能です。
─ このモデルでは医療のDXも進めるのですか。
岩尾 もちろんです。我々のFCに加盟してもらえば、例えばある病院を退院する患者さんの情報を入力すると、資格や人数から、どこの訪問看護ステーションが適しているかを自動的に抽出するようなシステムを構築中です。
また、電子カルテも手がけていますので、例えば糖尿病の患者さんでしたら食事と血糖の関係から最適な食事の提案や糖尿病の専門ナースの訪問を手配したりできます。
国は25年までに平均在院日数を9日に短縮すると言っています。このままでは、病院を退院して路頭に迷ってしまうご高齢の方々がたくさん出て来ます。この時に、これまで医療を支えてきた国民皆保険があれば国民皆幸福が実現できると私は確信しています。
─ まだまだこの領域では競争も起きていませんね。
岩尾 はい。この市場はブルーオーシャンです。まだ参入する方が少ない。なぜかというと、医療法人からすると、1人当たりの収入が少なく、病院のベッドに専念せざるを得ない。
一方で看護師さんからすれば、単月黒字を達成するための稼働率の目安はだいたい7割入居です。ただ、7割の稼働率まで多額の累積債務を抱えることになります。そういったリスクは怖い。結果として誰も参入しない市場となっています。
安心・安全・安定・健康、楽しいまちづくり
─ 受け皿は今後必ず必要になってくるわけですね。
岩尾 はい。我々はこの受け皿づくりを運営委託でやりたいと企業様をまわりました。最初は、相手にされませんでしたが、ようやく1部上場企業が2社行ってもいいと言ってくれました。彼らと社会に資する仕事を行えればと考えています。
実際に検証レベルで我々のグループで実施したところ、うまく行くことが検証できました。単月黒字になるまでの赤字は投資家が肩代わりし、黒字になった時点から利益の大半を投資家に返す。いわゆるMC方式です。
その際に運営事業者にも利益が入るわけですが、看護師の平均の営業利益率よりも高い数値が確保されます。現場の看護師さんにも満足いただける数値です。しかも、コロナ発生時にも、ホテルや旅館業と比べるとダメージが少ない事業です。
─ 既存の医療資源を活用して新たな社会課題を解決するための方策と言えますね。
岩尾 はい。日本は国民皆保険という比類なき共同体精神から生まれた素晴らしい制度で国民全体の長寿を成し遂げました。これは欧米諸国とは違い、わが国の教養、文化の深度から生まれた助け合いの精神が根本にあると思っています。しかし今はご高齢の方々が病院からの退院を余儀なくされています。
この状況を打開するためにも、老若男女、貧富の差なく、皆が安心・安全・安定・健康、そして楽しいと思える街づくりに貢献できればと思っています。
特許の崖を乗り越えた【アステラス】 新社長に副社長の岡村副社長
我が国を断じて〝姥捨て山〟にさせない
─ 岩尾さんは医師でありながらベンチャー企業の経営者でもあります。まずは日本の医療に関する課題認識とは。
岩尾 今、日本の医療・介護は危機的な状況にあります。世界に冠たる国民皆保険のお陰で国民全員が長生きできる国になりました。そういった国は日本だけです。2005年から75歳以上のご高齢の方々が急増していますが、他国は40年頃から増えると言われています。
75歳以上の人口が増える国と、65歳以上の人口が増える国では構造が全く違います。75歳以上の人口が増える国では、医療と介護の問題が同時発生し、既存のヘルスケアシステムではカバーし切れない医療難民や介護難民が急増します。
米国などは1980年代から医療体制が充実した「スキルド・ナーシング・ファシリティ」というナーシングホームを病院の前に建て、病院を退院した患者さんが入居し、何かあっても医師や看護師がいつでも駆け付けてフォローができる体制をとっています。その結果、米国の平均在院日数は約5日となっています。
─ 日本はもっと長いと?
岩尾 はい。足元の平均在院日数は病院の種類にもよりますが、約16日です。今、国は社会保障費削減に向けた取り組みの一環で、在院日数の削減に動いています。しかし、退院した人たちの受け皿の整備が不十分で、何もしなければ極端な話、我が国は〝姥捨て山〟になってしまいます。
人生100年時代では、ご高齢の方々を退院した後も寝たきりにせず、関節を拘縮させず、認知症を進行させないといったケアを継続しなければなりません。我々は今、地域全体でご高齢の方々を看守る仕組みをつくろうと動いています。医療度の高い施設が病院と在宅療養のハブとなり、地域に密着しながら先進的な在宅医療の充実を実現します。それが「Town Hospital Dr.IWAOモデル」です。
─ 退院後の高齢者の受け皿を作るわけですね。
岩尾 はい。我々のグループでは約1200人の患者さんを在宅、施設計約250人のスタッフで看ています。このモデルを「Dr.IWAOモデル」と呼んでいます。ご高齢の方々や障がいを持たれた方が住み慣れた街で暮らすことを可能にするモデルと言えます。各士業の網の目のネットワークで街を看守るイメージです。
我々は名古屋市及びその近郊エリアにおいて3施設120床の施設を展開しており、医療度の高い要介護者でも入居できる体制を整備しています。また、この120床以外の1000人以上の患者さんも在宅で診ています。常勤の医師7人と非常勤の医師8人に加え、施設では看護師が常勤換算で40数名、介護士が60数名、理学療法士と作業療法士が約20数名、さらに言語聴覚士も10数名配置しています。
中間層、富裕層向けのモデルが成功
─ この仕組みを整えるまでに、どのくらいの期間がかかったのですか。
岩尾 20年弱です。もともと日本は米国と違って富裕層や中間層、低所得者層それぞれに医療体制を分けてはいませんでした。例えば住宅の分布を見ても、米国では富裕層が住む街と低所得層が住む街とは、はっきり分かれていますが、日本ではそういった区別があまりありません。
そして、日本では医療依存度が高い中間層や低所得者層のご高齢の方々の退院後の受け皿整備が急務となっています。先ほど申し上げた我々の展開する3施設は主に中間層、富裕層を対象としているのですが、これからは低所得者層の受け皿がますます必要になります。
ある試算によれば、関東だけで年間37万人のご高齢の方々が行き場を失ってしまうとされています。しかも、低所得の方の割合は、富裕層の集まっている地域でも7割、低所得者層の多い地域では9割と言われています。国として皆が幸せになるためには、しっかりとした対策が必要ではないでしょうか?
─ 財源はどのように確保していく考えですか。
岩尾 日本には医療体制を支えてきた冠たる国民皆保険があります。これを活用すれば、安定した仕組みが構築できます。もちろん、利益率は落ちますが、投資家サイドから見て、十分に許容できる営業利益が出せると考えています。
先ほど申し上げた行き場をなくす7割から9割の方々をどうするかを考え、老若男女、貧富の差なく、等しく幸福な社会を我が国において継続するためには、医療で成功してきた方法と同じ手法でこういった方々を支える仕組みづくりを短い期間で整備していかなければならないと考えています。この拠点網の拡大をITソリューション、フランチャイズ(FC)の仕組みで達成したいと考えています。
─ そういうノウハウも持っているのですか。
岩尾 はい。当社は国の研究費で作成したカルテの共有の仕組みを持っています。また、セブン-イレブン・ジャパンの元常務を顧問で迎え入れています。
─ なぜFCなのですか。
岩尾 もともと日本には多くの訪問看護ステーションがあります。そのうちの半分が3人から5人の中小零細運営なのです。これらの訪問看護ステーションは事務作業も含め、ギリギリのところで運営しています。2~3年で疲弊しきってステーションを廃業するというケースが後を絶ちません。
しかも、訪問看護師は現場のプロではありますが、経営のプロではありません。これに加え、日本特有の問題として訪問看護師を含めた在宅医療の地位は決して高くないこともあります。
そこでしっかりとしたキャリアパスを示し、訪問看護師のブランド価値を京都大学、財団法人生涯デザイン研究所で高めることができれば、訪問看護師もプライドを持って働くことができ、離職を防ぐこともできます。さらには病院を退院した方々を地域で、しっかりケアする新しいシステムを構築できます。
訪問看護ステーションの活用
─ これを「Dr.IWAOモデル」で展開していくと。
岩尾 はい。ここで大事なのがハード運営だけではなく、各地域に訪問看護ステーションの輪を広げていく点です。
我々は現場でのノウハウの共有に加え、ルート設定やシフト編成、総務や経理などの事務作業を代替するソフトプロバイダーとして機能する「スペシャリティーケアステーションDr.IWAOモデル」を構築していく予定です。
─ 本業ではない業務を省くことができれば、訪問看護師は看護に集中できますね。
岩尾 はい。ですから、今までの「病院完結型」の仕組みから「地域完結型」の仕組みに切り替えていくことになります。これまでも在宅医療の重要性は認識されていたのですが、それを一気に広げようと思っても、そのためのインフラがありませんでした。
しかし、スペシャリティーケアステーションDr.IWAOモデルでは訪問看護ステーションこそが地域完結型医療介護の主役となると考えています。
─ そうなると、訪問看護ステーションというハードも一定程度必要になりますが。
岩尾 我々には医療面、アカデミックでの信用はありますが、金融面での信用は不足しています。ファンドと連携することができれば、1つのモデルが成功したときに、その資金力を活かして一気に拠点展開が可能です。
訪問看護ステーションの方々にDr.IWAOモデルに参加いただき、フランチャイジーとして加盟いただければ、しっかりと利益も確保できます。必然的に訪問看護師の年収も増やすことができます。スピードも直営と比較して格段に上がります。
また、当直が毎日のようにある労働環境が1カ月に1回ぐらいになりますし、キャリアパスもできます。休眠看護師も現場に戻って来ようと考えますし、さらには症例を集め、専門性を高めることもできます。既存の病院で働く看護師との連携も可能になります。DXにより職場のフレキシビリティーをあげることが可能です。
─ このモデルでは医療のDXも進めるのですか。
岩尾 もちろんです。我々のFCに加盟してもらえば、例えばある病院を退院する患者さんの情報を入力すると、資格や人数から、どこの訪問看護ステーションが適しているかを自動的に抽出するようなシステムを構築中です。
また、電子カルテも手がけていますので、例えば糖尿病の患者さんでしたら食事と血糖の関係から最適な食事の提案や糖尿病の専門ナースの訪問を手配したりできます。
国は25年までに平均在院日数を9日に短縮すると言っています。このままでは、病院を退院して路頭に迷ってしまうご高齢の方々がたくさん出て来ます。この時に、これまで医療を支えてきた国民皆保険があれば国民皆幸福が実現できると私は確信しています。
─ まだまだこの領域では競争も起きていませんね。
岩尾 はい。この市場はブルーオーシャンです。まだ参入する方が少ない。なぜかというと、医療法人からすると、1人当たりの収入が少なく、病院のベッドに専念せざるを得ない。
一方で看護師さんからすれば、単月黒字を達成するための稼働率の目安はだいたい7割入居です。ただ、7割の稼働率まで多額の累積債務を抱えることになります。そういったリスクは怖い。結果として誰も参入しない市場となっています。
安心・安全・安定・健康、楽しいまちづくり
─ 受け皿は今後必ず必要になってくるわけですね。
岩尾 はい。我々はこの受け皿づくりを運営委託でやりたいと企業様をまわりました。最初は、相手にされませんでしたが、ようやく1部上場企業が2社行ってもいいと言ってくれました。彼らと社会に資する仕事を行えればと考えています。
実際に検証レベルで我々のグループで実施したところ、うまく行くことが検証できました。単月黒字になるまでの赤字は投資家が肩代わりし、黒字になった時点から利益の大半を投資家に返す。いわゆるMC方式です。
その際に運営事業者にも利益が入るわけですが、看護師の平均の営業利益率よりも高い数値が確保されます。現場の看護師さんにも満足いただける数値です。しかも、コロナ発生時にも、ホテルや旅館業と比べるとダメージが少ない事業です。
─ 既存の医療資源を活用して新たな社会課題を解決するための方策と言えますね。
岩尾 はい。日本は国民皆保険という比類なき共同体精神から生まれた素晴らしい制度で国民全体の長寿を成し遂げました。これは欧米諸国とは違い、わが国の教養、文化の深度から生まれた助け合いの精神が根本にあると思っています。しかし今はご高齢の方々が病院からの退院を余儀なくされています。
この状況を打開するためにも、老若男女、貧富の差なく、皆が安心・安全・安定・健康、そして楽しいと思える街づくりに貢献できればと思っています。