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脱炭素化のカギを握るのは家庭、三井物産の「脱炭素ソリューション戦略」

財界オンライン 2023年4月10日 7時0分

〝企業・製品・生活者〟3つの視点で脱炭素を促す
「大企業はともかく、中小企業は脱炭素と言っても、何から手をつけたらいいのか分からない人たちも多い。中小企業にとっては、どれくらい自分たちがCO2(二酸化炭素)を排出しているのか分からないと次の対策を打てないというのが一番の問題。われわれはそこに目を付け、脱炭素化の第一歩となる可視化の部分に焦点をあてたプラットフォームを提供している」

 こう語るのは、三井物産デジタル総合戦略部事業系DX担当部長補佐の鈴木次郎氏。

 足元の資源価格の上昇や円安傾向を受けて、今期(2023年3月期)業績が初めて純利益1兆円超えとなる見通しの三井物産。

 一般的には、石油や天然ガスなどの上流領域の開発・生産を手掛ける〝資源商社〟というイメージが強いが、近年は個人や中小企業向けのサービスやソリューションを提供している。それが、〝企業・製品・生活者〟3つの視点で脱炭素を促すプラットフォームだ。

 例えば、企業や自治体のCO2削減を支援するプラットフォームが『e-dash』。電気代やガス代の請求書をアップロードするだけで、企業単位のCO2排出量を自動で算出。月々の使用量とコストをデータ化し、電力契約の見直しなどをアドバイスしたりする仕組み。同サービスを始めた2022年4月から約1年で提携金融機関は100行庫を突破した。

 二つ目は、国内で初めて、製品単位でCO2排出量を可視化するのが『LCA Plus』。今まで見えてこなかった製品や部材一つひとつに対し、環境影響の大きい項目を明確にすることで、削減に必要なアクションを検討することができる。

 三つ目が、博報堂と共同開発した『Earth hacks』。脱炭素に関心がある人向けに、生活者が楽しみながら脱炭素に貢献できるよう、自分の生活にも取り入れたいと思えるライフスタイルやエシカル(倫理的)な商品の情報を提供したりしている。

「例えば、e-dashを活用することで、あなたはこの電力会社を使うと、これくらいCO2を排出しているから、こちらにするとこれくらい減りますということが言える。電気は普段何気なく使っているものだけれども、CO2を意識した選び方であるとか、選択肢を与えることができる」(鈴木氏)

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個人の行動変容をいかに促していくか

 世界的な脱炭素化の機運が高まり、近年は投資家が「ESG(環境・社会・企業統治)投資」を重視。米アップルは自社のみならず、部品調達先などのサプライヤーに対しても2030年までに「カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)」を達成することを求めており、脱炭素化に消極的な企業にとっては、サプライチェーンから締め出されるリスクになっている。

 こうした動きは今後ますます加速していくことが予想されており、企業にとっても脱炭素化の取り組みは急務だ。

 一方、「令和4年版 環境白書循環型社会白書・生物多様性白書」によると、日本のCO2排出量は、消費ベースでみると、60%以上が家庭からの排出。社会全体で脱炭素化を推し進めるためには、企業が努力することは当然だが、今後は個人の削減努力が今まで以上に求められるようになる。

「脱炭素は企業規模や業種問わず、全ての人に対応が求められている。特に足元ではウクライナ問題があって、日本がLNG(液化天然ガス)を確保できなくなるのではないかというマーケットの焦りや不安を直接聞くようになった。今までは『やらなきゃいけないよね』という感じだった脱炭素への動きが必至になっていることを日々感じており、総合商社としての知見やノウハウを活かして、様々なソリューションを提供していきたい」と語る鈴木氏。

 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて越えなければならない壁は高いが、今は企業・個人それぞれの責任と役割が問われているといえそうだ。

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