半値戻しの「壁」は未だ突破せず
足元の日本の株式市場の動きを見ると、2万8000円台が続いていた日経平均は2023年4月5日には前日比474円安の2万7813円と、2万8000円を割れました。
【あわせて読みたい】「米国株は波乱相場、下落が続く。日本は30年続くデフレを脱却できるかが問われる」スガシタパートナーズ・菅下清廣
価格の波動から見ると、2021年2月16日に3万714円で一番天井、9月14日に3万795円で二番天井を打った後、下落調整局面が今もなお、続いています。株価の波動には上昇、下降、横ばいの3つがありますが、今は下降の波動が続いているということです。
二番天井の3万795円から、翌22年3月9日の安値、2万4681円までの下げ幅の半値戻しが2万7700円です。足元ではこの水準近辺で揉み合っています。一時的に2万8000円を突破しても、4月5日のように大幅安となって割り込んでくるようでは、半値戻しの「壁」を突破したとは言えません。
半値戻しの壁を突破し、2万8000円から2万9000円のゾーンに入っていくと、下落調整局面が終わって、底入れから上昇局面に入っていくことになりますが、1年半以上下落調整局面が続いているというのが現状です。
ただし、日経平均の安値はジリジリと切り上がってきています。22年3月9日の次の安値は10月3日の2万5621円、さらにその次は23年1月4日の2万5661円、直近は3月16日の2万6632円となっています。株価の下落局面は続いていますが、安値が切り上がる状況が続くようであれば、底入れから反転上昇は近いということになります。
ただ、足元で株価は一進一退の域を出ないでしょう。それはなぜかというと欧米で「信用不安」が起きているからです。米国ではシリコンバレーバンク(SVB)など2行が破綻、欧州ではクレディ・スイスが経営危機に陥り、UBSに買収されました。
信用不安が起きるとどうなるか。特に巨額のマネーを動かしている人は、株式や投資信託などといった金融商品を売却して資産の現金比率を高めてきます。今、その流れが続き、金融市場が揺らいでいます。
3月26日付の日経ヴェリタスには「投資マネー、『米国債MMF』に退避」という記事が掲載されていました。3月に5兆ドル(約660兆円)の資金がMMF(マネー・マーケット・ファンド、公社債などを投資対象とする投資信託の一つ)に流入したという内容です。
米国債によるMMFは、もはや現預金と同じです。この動きは世界的に「質への逃避」が続いていることを示しており、信用不安が収まるまでは、株価は頭打ちとなります。大きく下がらないまでも下落、揉み合いが続くことになるでしょう。
それでも日本で言えば、3月期決算が出揃う5月中旬頃から株価が上がっていくのではないかと見ています。日本企業が予想よりも業績が改善しているところが多いのではないかと見られているからです。
さらに言えば、この3月期決算では、業績のいいところと悪いところの差、勝ち組と負け組がはっきりしてくるのではないでしょうか。そして、この勝ち組を中心に、それ以降、株価は上がっていくことになります。
この3月期決算前までの勝ち組は円安や価格の上昇の恩恵を受けた海運や鉄鋼、総合商社でした。それ以外のセクターで、どこの業績がよくなっているかは、フタを開けてみなければわかりませんが、円安とインフレ傾向は企業業績にはプラスです。
日本の株式市場の焦点は、2万8000円の壁をいつ突破するかです。直近の壁は23年3月9日の2万8734円で、その後下落しています。「3月またがり60日」の法則で見ると5月9日、つまりゴールデンウィーク明けに、この2万8734円を突破してくる可能性があります。
日本が30年続くデフレを円安によって脱却し、「脱デフレ、円安、株高」という循環が出てくることが予想されます。ただ、足元の株価の動きは一進一退です。
前述のように、欧米では信用不安が起きていますが、欧米の銀行が揺らいでいるのは、レバレッジをかけ過ぎたからです。それによって金利上昇で逆ザヤになったのです。一方、足元で日本の金融機関には、そうした問題は起きていません。ですから、「質への逃避」で投資マネーが日本に入ってくる可能性は十分にあります。
また、以前から指摘していますが、日本は円安によって「物価目標2%」を達成する可能性がありますし、インバウンド(訪日外国人観光客)が加速し、国内消費が刺激されそうです。
日本経済は脱デフレ、インフレに向かいそうですが、この恩恵を受けて業績を伸ばす企業と、そうでない企業に分かれますから、いわば「格差インフレ」となります。
さらに歴史の流れ、国際情勢を考えると、23年は日本と世界が大きく変わる「パラダイムシフト」が始まる最初の年になると見ています。米国で言えば、長きにわたる金融緩和が終わり、金融引き締め、インフレの時代に入りました。日本は先進国の中で最後発ランナーとして、いよいよ脱デフレに向かいます。
4月9日には新しい日本銀行総裁に植田和男氏が就きましたが、私は期待をしています。言うまでもありませんが、植田氏は国際的に非常に評価される経済学者で、金融・経済の動きに精通していることに加え、かつて日銀審議委員を務めたことで日銀の現場も知っています。
植田氏は前総裁の黒田東彦氏の政策を、慎重に引き継ぐのではないかと見ていますから、その意味で「アベノミクス的」な金融政策が当面継続することになります。ただ、同時に「マイナス金利」や「YCC(長短金利操作)」といった政策は徐々に修正していくでしょう。
日本経済、日本の株式市場を評価する動きは、年央から年末にかけて起きてくる可能性があります。4月、5月は新しい株高相場の「助走」の段階だと見ています。
足元の日本の株式市場の動きを見ると、2万8000円台が続いていた日経平均は2023年4月5日には前日比474円安の2万7813円と、2万8000円を割れました。
【あわせて読みたい】「米国株は波乱相場、下落が続く。日本は30年続くデフレを脱却できるかが問われる」スガシタパートナーズ・菅下清廣
価格の波動から見ると、2021年2月16日に3万714円で一番天井、9月14日に3万795円で二番天井を打った後、下落調整局面が今もなお、続いています。株価の波動には上昇、下降、横ばいの3つがありますが、今は下降の波動が続いているということです。
二番天井の3万795円から、翌22年3月9日の安値、2万4681円までの下げ幅の半値戻しが2万7700円です。足元ではこの水準近辺で揉み合っています。一時的に2万8000円を突破しても、4月5日のように大幅安となって割り込んでくるようでは、半値戻しの「壁」を突破したとは言えません。
半値戻しの壁を突破し、2万8000円から2万9000円のゾーンに入っていくと、下落調整局面が終わって、底入れから上昇局面に入っていくことになりますが、1年半以上下落調整局面が続いているというのが現状です。
ただし、日経平均の安値はジリジリと切り上がってきています。22年3月9日の次の安値は10月3日の2万5621円、さらにその次は23年1月4日の2万5661円、直近は3月16日の2万6632円となっています。株価の下落局面は続いていますが、安値が切り上がる状況が続くようであれば、底入れから反転上昇は近いということになります。
ただ、足元で株価は一進一退の域を出ないでしょう。それはなぜかというと欧米で「信用不安」が起きているからです。米国ではシリコンバレーバンク(SVB)など2行が破綻、欧州ではクレディ・スイスが経営危機に陥り、UBSに買収されました。
信用不安が起きるとどうなるか。特に巨額のマネーを動かしている人は、株式や投資信託などといった金融商品を売却して資産の現金比率を高めてきます。今、その流れが続き、金融市場が揺らいでいます。
3月26日付の日経ヴェリタスには「投資マネー、『米国債MMF』に退避」という記事が掲載されていました。3月に5兆ドル(約660兆円)の資金がMMF(マネー・マーケット・ファンド、公社債などを投資対象とする投資信託の一つ)に流入したという内容です。
米国債によるMMFは、もはや現預金と同じです。この動きは世界的に「質への逃避」が続いていることを示しており、信用不安が収まるまでは、株価は頭打ちとなります。大きく下がらないまでも下落、揉み合いが続くことになるでしょう。
それでも日本で言えば、3月期決算が出揃う5月中旬頃から株価が上がっていくのではないかと見ています。日本企業が予想よりも業績が改善しているところが多いのではないかと見られているからです。
さらに言えば、この3月期決算では、業績のいいところと悪いところの差、勝ち組と負け組がはっきりしてくるのではないでしょうか。そして、この勝ち組を中心に、それ以降、株価は上がっていくことになります。
この3月期決算前までの勝ち組は円安や価格の上昇の恩恵を受けた海運や鉄鋼、総合商社でした。それ以外のセクターで、どこの業績がよくなっているかは、フタを開けてみなければわかりませんが、円安とインフレ傾向は企業業績にはプラスです。
日本の株式市場の焦点は、2万8000円の壁をいつ突破するかです。直近の壁は23年3月9日の2万8734円で、その後下落しています。「3月またがり60日」の法則で見ると5月9日、つまりゴールデンウィーク明けに、この2万8734円を突破してくる可能性があります。
日本が30年続くデフレを円安によって脱却し、「脱デフレ、円安、株高」という循環が出てくることが予想されます。ただ、足元の株価の動きは一進一退です。
前述のように、欧米では信用不安が起きていますが、欧米の銀行が揺らいでいるのは、レバレッジをかけ過ぎたからです。それによって金利上昇で逆ザヤになったのです。一方、足元で日本の金融機関には、そうした問題は起きていません。ですから、「質への逃避」で投資マネーが日本に入ってくる可能性は十分にあります。
また、以前から指摘していますが、日本は円安によって「物価目標2%」を達成する可能性がありますし、インバウンド(訪日外国人観光客)が加速し、国内消費が刺激されそうです。
日本経済は脱デフレ、インフレに向かいそうですが、この恩恵を受けて業績を伸ばす企業と、そうでない企業に分かれますから、いわば「格差インフレ」となります。
さらに歴史の流れ、国際情勢を考えると、23年は日本と世界が大きく変わる「パラダイムシフト」が始まる最初の年になると見ています。米国で言えば、長きにわたる金融緩和が終わり、金融引き締め、インフレの時代に入りました。日本は先進国の中で最後発ランナーとして、いよいよ脱デフレに向かいます。
4月9日には新しい日本銀行総裁に植田和男氏が就きましたが、私は期待をしています。言うまでもありませんが、植田氏は国際的に非常に評価される経済学者で、金融・経済の動きに精通していることに加え、かつて日銀審議委員を務めたことで日銀の現場も知っています。
植田氏は前総裁の黒田東彦氏の政策を、慎重に引き継ぐのではないかと見ていますから、その意味で「アベノミクス的」な金融政策が当面継続することになります。ただ、同時に「マイナス金利」や「YCC(長短金利操作)」といった政策は徐々に修正していくでしょう。
日本経済、日本の株式市場を評価する動きは、年央から年末にかけて起きてくる可能性があります。4月、5月は新しい株高相場の「助走」の段階だと見ています。