「最後のフロンティア」と呼ばれるアフリカ。途上国の多いこの地で日本を中心とした中古車輸出・販売で急成長しているのが、山川博功氏が2004年に起業したビィ・フォアードだ。ユニークなのはスマートフォンでのオンラインシステムを導入し、物流網も整備したこと。書類作成から通関手続き、輸送までの一連の作業が一気通貫でできる。同社のアフリカ市場攻略の戦略とは。
BYDオートジャパン・東福寺 厚樹社長「誰でも手が届く電気自動車の選択肢を増やし、日本の脱炭素に貢献していきたい」
扱う中古車は年間約 15万台
「中古車の輸出は誰でも始めることができる。ただ、手数料が安くて輸送が速く、対応が丁寧でなければ生き残ることはできない」─。このように語るのはアフリカ大陸を中心にした越境ECサイトとして中古車などを販売するビィ・フォアード代表取締役の山川博功氏だ。
〝最後のフロンティア〟。自動車業界でアフリカはこう例えられる。中古車販売が市場の9割を占める「中古車王国」であるアフリカでは、日本車への信頼度は高く、トヨタ自動車の商用車やホンダの小型車、日産自動車のミニバンなど求められる車種も様々で、「幼児バス」のマークがある小型バスなどもある。
日本からのアフリカ向け中古車の台数は約135万台規模で推移。国土は広いが公共交通機関のインフラは未整備で、どこへ行くにもクルマで出かけるしかない。さらに人口も現在は約10億人だが、2050年には20億人に倍増すると予測されている。トヨタやスズキなどが新車の販売市場として熱い視線を送るのはそのためだ。
その新車販売以上に盛り上がっているのが中古車になるわけだが、ビィ・フォアードが取り扱う中古車は年間約15万台。日本からの輸出車の1割強を手掛けている計算となり、日本でナンバーワンの規模になる。
同社が登場するまで、中古車輸出は日本の業者が現地業者に中古車を売り、現地業者が購入者に販売するという流れだった。しかしビィ・フォアードはECを取り入れて購入者が日本から直接買えるようにしたのだ。ECであれば、いつでも注文できるし、中間マージンもなくなるため販売価格も抑えられる。
山川氏は「日本から中古車を輸出する業者はたくさんいるが、それをオンラインで対応できるようにし、クリック1つで決済も運送もできるというのは、他では真似できない」と語る。
実は海外への中古車輸出は決められた手続きを踏めば誰でも参入できる。海外の顧客から注文を受けたら日本で中古車を仕入れ、書類作成や輸出申告、船積み手配などの輸出手続きをとって国際輸送。輸出先で保税管理といった手続きを経て顧客の元へと届けるという手順だ。
ところが実際は、手続きの煩雑さもあってトラブルが後を絶たない。日本の中古車を扱う業者の中には予定通りの輸送時期に中古車を届けられないといった事例もある。こうした事例が頻発するのは、アフリカで中古車を輸送する物流網を整備していないことが背景にある。
ビィ・フォアードの強みはそこにある。同社には111社にも上る現地の海外代理店と提携し、中には現地の通関業者もある。そのため、フォワーダー(自ら輸送手段を持たず、船舶などを利用して貨物輸送を行う事業者)ともネットワークがあり、「輸送に関わる通関業などを全て代行できる」(同)。また、中古車をアフリカへ直接運ぶルートを開拓して輸送費を下げ、届くまでの日数を短縮している。
そしてビィ・フォアードは海外代理店が業務を進めるために必要なシステムを構築。日本から書類が届くと、代理店の担当者は自分の名前でログインして通関手続きに必要な書類を作る。すると顧客に自動配信メールが送られ、顧客は自分が購入した車が港に着いたことまで分かる。
グーグルのナンバー2の来訪
さらに越境ECサイト「beforward.jp」には中古車の写真が35枚掲載されている。通常の中古車サイトであれば多くて10枚程度だ。チャットでの質問に対して即座に対応することができるため、購入希望者の不安も解消することができる。
しかもアフリカはパソコンよりもスマートフォンの方が普及が早い。アフリカの人々はスマホ1つで日本の中古車を購入できるようになっているのだ。そのため、アフリカの人々の間で同社の名前は口コミで広がった。今では月間6000万プレビューを超え、売上高も800億円を超えるまでになった。
「10年ぐらい前にグーグル本社のナンバー2が訪ねてきて、『なぜ日本のサイトにアフリカからこんなにアクセスがあるのか。何をやっているのか教えてくれ』と聞かれた」(同)ほどだ。
山川氏がビィ・フォアードを設立したのは04年。東京・調布の中古車買取店が前身だ。「中古車を扱ったのはたまたま」と話した上で、「我々が目指したのはインターネットによる物流。その中で勝てる要素が中古車の輸出にあっただけ。今ではアフリカだけでなく、新興国を中心に世界207の国や地域に輸出することができる。世界の自動車流通のプラットフォーマーを目指す」と力を込める。
ビィ・フォアードが扱う商材は中古車だけではない。世界中の独自の物流網を活用し、ミッション、エンジン、足回り、灯火類といった自動車パーツも手がける。
もちろん、政変や感染症などアフリカを巡る独特のリスクがあるのも事実だ。それでも走行距離が10万キロを超えていてもアフリカでは「ニュー・カー(新車)」と捉えられるだけに、潜在力の高さは誰もが感じるところだろう。
アジアの次に成長する有望市場と捉えられるアフリカ。ECのシステムとリアルな物流という〝両立て経営〟で、その成長を取り込む足掛かりをビィ・フォアードは構築しようとしている。
BYDオートジャパン・東福寺 厚樹社長「誰でも手が届く電気自動車の選択肢を増やし、日本の脱炭素に貢献していきたい」
扱う中古車は年間約 15万台
「中古車の輸出は誰でも始めることができる。ただ、手数料が安くて輸送が速く、対応が丁寧でなければ生き残ることはできない」─。このように語るのはアフリカ大陸を中心にした越境ECサイトとして中古車などを販売するビィ・フォアード代表取締役の山川博功氏だ。
〝最後のフロンティア〟。自動車業界でアフリカはこう例えられる。中古車販売が市場の9割を占める「中古車王国」であるアフリカでは、日本車への信頼度は高く、トヨタ自動車の商用車やホンダの小型車、日産自動車のミニバンなど求められる車種も様々で、「幼児バス」のマークがある小型バスなどもある。
日本からのアフリカ向け中古車の台数は約135万台規模で推移。国土は広いが公共交通機関のインフラは未整備で、どこへ行くにもクルマで出かけるしかない。さらに人口も現在は約10億人だが、2050年には20億人に倍増すると予測されている。トヨタやスズキなどが新車の販売市場として熱い視線を送るのはそのためだ。
その新車販売以上に盛り上がっているのが中古車になるわけだが、ビィ・フォアードが取り扱う中古車は年間約15万台。日本からの輸出車の1割強を手掛けている計算となり、日本でナンバーワンの規模になる。
同社が登場するまで、中古車輸出は日本の業者が現地業者に中古車を売り、現地業者が購入者に販売するという流れだった。しかしビィ・フォアードはECを取り入れて購入者が日本から直接買えるようにしたのだ。ECであれば、いつでも注文できるし、中間マージンもなくなるため販売価格も抑えられる。
山川氏は「日本から中古車を輸出する業者はたくさんいるが、それをオンラインで対応できるようにし、クリック1つで決済も運送もできるというのは、他では真似できない」と語る。
実は海外への中古車輸出は決められた手続きを踏めば誰でも参入できる。海外の顧客から注文を受けたら日本で中古車を仕入れ、書類作成や輸出申告、船積み手配などの輸出手続きをとって国際輸送。輸出先で保税管理といった手続きを経て顧客の元へと届けるという手順だ。
ところが実際は、手続きの煩雑さもあってトラブルが後を絶たない。日本の中古車を扱う業者の中には予定通りの輸送時期に中古車を届けられないといった事例もある。こうした事例が頻発するのは、アフリカで中古車を輸送する物流網を整備していないことが背景にある。
ビィ・フォアードの強みはそこにある。同社には111社にも上る現地の海外代理店と提携し、中には現地の通関業者もある。そのため、フォワーダー(自ら輸送手段を持たず、船舶などを利用して貨物輸送を行う事業者)ともネットワークがあり、「輸送に関わる通関業などを全て代行できる」(同)。また、中古車をアフリカへ直接運ぶルートを開拓して輸送費を下げ、届くまでの日数を短縮している。
そしてビィ・フォアードは海外代理店が業務を進めるために必要なシステムを構築。日本から書類が届くと、代理店の担当者は自分の名前でログインして通関手続きに必要な書類を作る。すると顧客に自動配信メールが送られ、顧客は自分が購入した車が港に着いたことまで分かる。
グーグルのナンバー2の来訪
さらに越境ECサイト「beforward.jp」には中古車の写真が35枚掲載されている。通常の中古車サイトであれば多くて10枚程度だ。チャットでの質問に対して即座に対応することができるため、購入希望者の不安も解消することができる。
しかもアフリカはパソコンよりもスマートフォンの方が普及が早い。アフリカの人々はスマホ1つで日本の中古車を購入できるようになっているのだ。そのため、アフリカの人々の間で同社の名前は口コミで広がった。今では月間6000万プレビューを超え、売上高も800億円を超えるまでになった。
「10年ぐらい前にグーグル本社のナンバー2が訪ねてきて、『なぜ日本のサイトにアフリカからこんなにアクセスがあるのか。何をやっているのか教えてくれ』と聞かれた」(同)ほどだ。
山川氏がビィ・フォアードを設立したのは04年。東京・調布の中古車買取店が前身だ。「中古車を扱ったのはたまたま」と話した上で、「我々が目指したのはインターネットによる物流。その中で勝てる要素が中古車の輸出にあっただけ。今ではアフリカだけでなく、新興国を中心に世界207の国や地域に輸出することができる。世界の自動車流通のプラットフォーマーを目指す」と力を込める。
ビィ・フォアードが扱う商材は中古車だけではない。世界中の独自の物流網を活用し、ミッション、エンジン、足回り、灯火類といった自動車パーツも手がける。
もちろん、政変や感染症などアフリカを巡る独特のリスクがあるのも事実だ。それでも走行距離が10万キロを超えていてもアフリカでは「ニュー・カー(新車)」と捉えられるだけに、潜在力の高さは誰もが感じるところだろう。
アジアの次に成長する有望市場と捉えられるアフリカ。ECのシステムとリアルな物流という〝両立て経営〟で、その成長を取り込む足掛かりをビィ・フォアードは構築しようとしている。