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ヴァンガードスミス代表取締役 (元北海道警察官)・田中慶太が語る「トラブルを事件にしない社会へ」

財界オンライン 2023年5月23日 11時30分

落ち着きつつある新型コロナ。実はコロナ禍を経て今まで気付かなかった近隣トラブルが顕在化しています。それを表すのが、2020年に全国の地方自治体が受理した騒音苦情件数です。この環境省調査では、騒音苦情が前年度比で約3割も増加していました。

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 ただでさえ、ご近所付き合いの機会が減り、集合住宅では隣人の顔も分からない。加えて昨今のデジタル化でコミュニケーションは希薄化。近隣トラブルが原因で殺傷事件が発生したという出来事は、しばしば耳にするのではないでしょうか。

 これまで、騒音のような近隣間の「事件未満」のトラブルに対処する機関はありませんでした。というのも、かつては近隣同士の付き合いが深く、何かあっても近所の誰かが仲裁してくれる図式が成り立っていたからです。ところが核家族化が進み、近隣の付き合いが減るとともに、それもなくなります。

 そのため相手の事情も分からぬまま、些細なことでトラブルが起こり、それが事件にまで発展してしまう。そういったケースが増えているのです。

 当社はこういったトラブルの解決支援サービス「Pサポ」「マモロッカ」を提供しています。私を含め、当社の相談員は元警察官。片一方だけに与することがないよう、聴取に長けたスタッフが感情的になっている人物にも、徹底して事実確認を積み重ねてトラブル解決への糸口を見極めていきます。そして言うべきことは遠慮せずに伝え、過剰要求には毅然とした対応を。お陰様で創業7年目で全国の会員数は80万人を突破しました。

 これまでの取り組みを通じて感じるのは、近隣トラブルは「感情公害」でもあるということです。例えば集合住宅で上階の騒音に悩まれている場合です。相手のことを何も知らなければ、階下の家庭は「こちらのことを配慮していない」という一方的な感情が膨らみ、ストレスを感じてしまいます。

 ところが我々が間に入り、上階のご家庭事情をヒアリングすると、解決への糸口が見つかるのです。よくあるのが小さなお子さんを抱えるご家族のケースです。階下に迷惑を掛けないように日々気を付けていても、子どもの制御というのは中々できないものです。

 実は大半のトラブルは、相手の事情をもう一方へ説明すると解消されます。「相手の人も、きちんと考えてくれているのか。そうであるならば仕方ない」。騒音は相手方も悪意がないケースがほとんどで、重要なのは互いに配慮していることが伝わるかどうかなのです。

 このように近隣トラブルの多くは、すれ違いから生まれます。双方の感情のバランスを取りながら的確に対処するためには、当社の相談員のような第三者が介入する方がスムーズに事が運びます。そして早期介入であるほど、トラブルの重篤化を避けることもできるのです。

 近隣トラブルに起因する殺傷事件は全国で年間2000件ほど。統計に上らない数を含めれば、潜在的にはその100倍以上とも言われます。我々の出番が増えているということは、現代社会に近隣トラブルを解決する力がないということの表れでもあるでしょう。また、権利ばかり主張する今の社会風潮も関係しているかもしれません。

 トラブルを事件化させない仕組み─。これを構築することが、誰もが安心して暮らせる社会を実現することにもつながるのです。多種多様な企業と連携しながら、この仕組みを全国に広げていき、日本のインフラとしていきたいと思っています。

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