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何事も諦めず、考え続ければソリューションがひらめく【私の雑記帳】

財界オンライン 2023年5月22日 20時0分

危機はチャンス

 危機は、わたしたちにいろいろな気づき、発想を与えてくれる。

 何事にも諦めず、活路を見出そうと考え続けていると、ソリューション(解決策)がひらめく。

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 そうした観点で注目されるのが、アイリスオーヤマ会長・大山健太郎さん(1945年=昭和20年生まれ)の経営者としての生き方。

 大山さんは家業のプラスチック加工のブロー工業所を、父親の急逝に伴い、19歳で引き継いだ。

 以来59年間、その業態を常に時代の変化に対応、変革させてきた。LED(発光ダイオード)照明の商品化など、生活家電分野で魅力ある商品を次々と開発。

 アイリスオーヤマへの社名変更は1991年(平成3年)。世の中はバブル経済がはじけて、金融不安も出始めた頃。もっと言えば、日本の成長が止まり、〝失われた30年〟に突入し始めた時である。

 コロナ禍にあって、2022年12月期のグループの売上高は前の期に比べて、2.5%減の7900億円になったが、23年12月期は増収を見込む。来年(24年12月期)は1兆円達成を目指す。


『水』と『米』で勝負

 危機と呼ばれる社会全体の環境激変時に、いかに消費者のニーズに応えていくか─。

 2011年の東日本大震災時には、アイリスオーヤマの本拠地・宮城県内の工場も大きな打撃を受けた。

 そういう中にあっても、新製品開発を急いだ。LED照明などは、大震災を機に電力不足になった状況下で、お客の心をつかんだ。

 今回のコロナ禍では、空気清浄機、布団乾燥機、マスクなどが特需で大ヒット。

 昨年は前述のとおり反動が出たが、大山さんは次々と手を打つ。今、同社の回復を押しているのは『水』と『米』だ。

 天然水の生産は2022年にボトルで2億本であったが、2024年には7億本を見込む。また、〝パックご飯〟は1億個(2022年)だったのを、2億個(2023年)という販売計画を立てる。

『水』は富士山の麓、静岡県小山町と裾野市に採取工場があり、現在さらに投資を拡大中。

 また、『米』は東日本大震災時、「東北の米販売に力を入れる」として、宮城、福島産を中心に需要の掘り起こしに動いてきた。

 共働き家庭が増えた中、手軽に食事が摂れると、〝パックご飯〟は若い世代はもちろん、高齢者の間でもニーズが高い。生き方・働き方改革とも連動した商品開発である。

 米中対立やウクライナ危機などで、経済安全保障が重くのしかかる今日、「海外から輸入しなくて済む。水と米なら国内で調達できます」と大山さんの答えは明快にして簡潔だ。


訪日観光客の多さに…

「日本は楽しい」─。訪日観光客はこのところ、日に日に増えて、都内の電車の中でも、旅行カバンを抱えた外国人の姿が目に付く。家族連れも多い。

 日本政府観光局(JNTO)によると、今年3月の訪日客数は181.7万人と、前年同月比で27.5倍に急増。コロナ前の2019年3月期の66%と、7割近い水準にまで回復した。

「日本の食事は安いし、おいしい」という声が聞かれる。東京・築地の玉子焼き店に長蛇の列ができるとか、渋谷駅前広場にあるハチ公の銅像に多くの観光客が押し寄せ、一緒に写真に納まる光景が見られる。

 コロナ対策も5月から、マスク着用が自己判断に任せられるなど、いろいろ変わってくる。コロナ禍が収まり、お隣・中国からの観光客の流入が始まると、一層の〝過密〟が進みそうだ。それにしても、外国人観光客にとって、なぜ今、日本なのか?

「外国人はみんな、日本は素晴らしいと言うんですよ。なぜかと言うと、政治的に安定し、犯罪が比較的少ない。公園にも安心して行ける。東南アジアのような暑さもないし、みんな日本大好きです」と経済学者の白井さゆりさん(慶應義塾大学総合政策学部教授)。


抜き差しならぬ対立の中

 今、世界中が荒れている。

 米中対立も加わって、中国、ロシアの専制主義と米、英、仏の自由主義・民主主義陣営の対立という要素も絡み、先行き不透明だ。

 そして、各国とも国内にそれぞれの事情を抱え、米国には共和党と民主党の異常な対立がある。

「ええ、抜き差しならない対立ですね」と白井さんが語る。

「例えば民主党は常に格差とか人種差別とか環境問題などをオバマ前大統領時代からやっている。ところが、共和党は割と短期思考というか、環境関連でも規制緩和のほうですよ。これは単なる意見の違いではない。今、何が起きているかというと、共和党の地盤の強いテキサス、フロリダでは地方公務員の年金基金を運用するところが、ESG(環境、社会、ガバナンス)問題に熱心に取り組む資産運用会社を排除する。法律までつくって、そうした取り組みをやらせないようにとかね。度を超えています。行動が過激化し、抜き差しならない対立になっている」

 そうした、世界中の対立の渦の中で、外国の人たちも、日本という住みやすい国で癒されようとしているのだろうか。


日本の課題は『成長』

 しかし、その日本も人口減、少子化、高齢化という構造問題に加え、賃上げ、製品値上げなど、それこそ課題は山積。

 例えば人手不足。観光業界にとっても、頭の痛い問題だ。

「東京五輪が2013年に決まった時から、右肩上がりで観光客が毎年増えていきましたが、成長はそんなにしなかった。ホテルの収容人数は限られているし、生産性の高い分野ではないので」と白井さん。

 観光をどう成長性の高い産業に持っていくかという課題だ。


赤坂のハナミズキ

 春は花粉症や黄砂の襲来に悩まされる季節だが、桜をはじめ芽吹きの時でもあり、清新の気が漂う。

『財界』誌のオフィスは東京・赤坂見附にある。住所は昨年8月末、千代田区永田町から港区赤坂に変わったが、外堀通りを挟んで50㍍ちょっと離れた所への引っ越しなので、別の所に移ったという感じはしない。

 地下鉄丸ノ内線、銀座線に加え、有楽町線、半蔵門線が利用でき、取材活動の拠点として、赤坂見附は本当に便利な場所。対面での取材では、大抵の場所に10分ほどで駆けつけられるのは大変重宝だ。

 外堀通りを歩いていると、今、ハナミズキの白い花が目に映る。爽やかで楚々とした風情に心が洗われる。花弁のように見えるのは〝総苞〟で、葉が変形したものとのことだが、それはともかく、見ていて清々しさ、爽やかさを感じる。

 元々は100年ほど前、日本が米国に桜を贈ったことに対する返礼として日本に贈られたものだという。人の心を感動させられるものは、どんな状況下でも生き続ける。

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