証券取引等監視委員会は、リスクが高いとされる金融商品「仕組み債」の販売を巡り、千葉銀行と武蔵野銀行、千葉銀傘下のちばぎん証券の3社を行政処分するよう金融庁に勧告した。3社は投資経験のない人に販売したり、「定期預金より有利」などと勧誘したりしていたという。
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背景には日銀の超低金利政策などで融資で利益を出しにくくなった銀行が「高い手数料を目当てにリスク性商品の販売競争に走った」(金融庁幹部)ことがあり、広く地銀界に共通する歪みを反映している。
問題となったのは他社株転換債(EB)と呼ばれる仕組み債で、元々プロ投資家向けの金融商品。デリバティブ(金融派生商品)を組み込み、株価や為替相場があらかじめ決められた水準(ノックイン価格)に抵触すると、償還時に大幅に元本割れしたり、利益を享受できないまま早期償還されることもある。
この商品で、米利上げを契機とする世界的な相場の急変をきっかけに、ノックイン条項に抵触して損失を抱える顧客が急増。金融庁は昨夏公表した金融行政方針で監視強化を打ち出し、これを受けて千葉銀や武蔵野銀を含む多くの地銀が相次いで仕組み債の販売停止を決めたが、顧客の損失が広がっていた。
この問題は、苦境が続く地銀の経営に更なる逆風となりそうだ。地銀99行の2023年3月期決算では、3分の1を上回る38行が純損益が減益か赤字に沈んだ。近年、地銀各行は投資商品シフトを経営戦略の大きな柱としてきただけに販売が落ち込めば業績への打撃は大きい。また、今回の一件は緩和が進められてきた「ファイアーウォール規制」の行方にも影響するのは必至。
金融庁は勧告を受けて業務改善命令などを発動する見通しだが、共に有力地銀である千葉銀と武蔵野銀が行政処分を受けるのは業界にとって衝撃的で、6月まで地方銀行協会会長も務めた千葉銀行頭取の米本努氏の経営責任問題に波及するかも注目されている。
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