「賃上げインフレ」で消費が拡大するか
年初から本連載を含め、講演会などで、2023年の1―3月期は日本株の底値圏、最後の買い場となり、4月以降、新たな株高が始まるのではないかと予想してきました。
この予想の裏付けの1つには「波動論」があります。2020年3月のコロナショックの安値から、ちょうど3年目にあたる23年3月くらいまでに二番底、ダブルボトムを入れて、底入れするのではないかと見てきたのです。二番底を入れれば株が上昇するというのは、相場の波動ですが、その通りの展開になっています。しかも、今の株高は戻り相場ではなく、新たな株高が始まっています。
株価が波動の通り動くためには、それとマッチングする買い材料が出てこなくてはいけません。その材料の1つが4月以降に多くの企業が賃上げしたことで起きた「賃上げインフレ」です。どういう意味かというと、賃上げをすると個人が消費を拡大します。消費によって企業の売り上げが上がり、インフレにつながっていくというもので、4月以降出てきています。
2つめの材料は円安です。昨年10月に32年ぶりという150円台を付け、今なお140円近辺の水準にあります。日本は輸出立国として成り立ってきました。今では多国籍化した大企業も多いわけですが、それでも今なお円安メリットは大きいのではないかと思います。
バブル崩壊の際には円高となって、日本の輸出産業は大打撃を受けたという過去もありました。振り返れば、その間隙を中国や韓国に突かれて、日本の競争力が失われたのです。
今、その逆バージョンとなりつつあります。ゴルフに例えると、非常に厳しいハンデでプレーさせられていた日本が、楽々優勝できそうなハンデになってきているのです。
ですから、日本の景気がよくなり、株が上がるのは、ほぼ間違いありません。ただ、まだ過去の「デフレマインド」に縛られている人が多いのも、また現実です。「日経平均3万円が天井だ」と考えて空売りしていた人たちは「踏み上がる」(損失覚悟の買い戻し)可能性があります。
少し前、円安によって輸入インフレが起こり、物価が上がり始めた際には「悪い円安」という言葉が流行語のようになりましたが、今やそういう状況ではありません。
今の円安によって、日本の製造業、特に半導体関連などが蘇ってきました。それだけでなく、インバウンド(訪日外国人観光客)も急回復しています。中国からの観光客がまだ来ていないことを考えると、さらなる伸びしろがあり得ます。
これらの賃上げインフレと大円安によって、新たな株高が始まっています。21年2月16日に3万714円で一番天井、9月14日に3万795円という二番天井を突破してきているのです。
それ以前、日本株は下は2万5000円、上は3万円というボックス相場が長らく続きましたが、この相場の壁、3万円を突破しましたから、今後の日経平均は、下は3万円、上は3万5000円という水準に入っていきます。
年後半に、日本の株式市場にとっていい材料が出れば、この3万5000円の壁に向かって日本の株は上昇することになります。波動では年内に3万5000円を付ける可能性も十分にあります。
もし、このボックスを突破したら、次は3万5000円買いの4万円売りとなります。この相場が24年にやってくるかもしれないと予想しており、24年末までにバブルの高値、3万8915円に近づく、あるいは奪回する流れとなるのではないでしょうか。ただ、この動きとなるには、24年も賃金インフレが続く必要があります。
日本経済は30年続いたゼロ金利・マイナス金利、デフレの時代、いわば「水風呂」に入っていたのが、これから徐々にインフレという「お湯」が注がれて、湯加減がよくなる、つまり2~3%の適度なインフレという経済に向かおうとしています。そうなれば、人々は消費をし、投資をすることになります。
岡三証券グローバルリサーチセンター特別顧問を務める嶋中雄二さんが提唱する「ゴールデンサイクル」は23年からすでに始まっています。23年から3年連続のゴールデンサイクルというのは、過去に例がありません。
なので、24年末から、25年の年央にかけて、今の資産インフレ相場の一番天井が来るのではないかと見ています。
いよいよ「バイジャパン」、日本買いの時代が始まっています。脱デフレとなれば、世界のマネーが日本の不動産や株に集まり、上昇します。
この「バイジャパン」の流れが続く前提は、日本銀行による金融緩和が続くこと、岸田政権が中途半端なところで増税しないこと、日本の政権が向こう3~5年、デジタル革命を前進させること、すでに計画されている東京など都心の再開発が続くこと、教育や医療など、非常に保守的な分野で改革が進むことなどが挙げられます。
あえて悲観シナリオを予想すると、岸田政権が増税をした時です。消費税を上げたり、「キャピタルゲイン課税」を増税するなどすれば、楽観シナリオは頓挫します。もう1つ、日銀が金融緩和を早めにやめて、引き締め気味の政策に転じた時です。
日本政府、日銀が日本の株価や景気にとってマイナスとなるような政策を打った時には、楽観シナリオは実現しないということになります。
また24年11月は注意が必要です。なぜなら、現在のバイデン大統領は典型的な「バラマキ政策」を取っています。これが続く間は米国の景気、株価の暴落はないでしょう。
ただ、米国の政権が共和党に変わった場合、このバラマキのツケを誰かが、いつか払うことになります。この時に、米国株は暴落することになるでしょう。
また中国は、政府がバブル崩壊をさせないでしょうが、習近平政権が揺らぐようなことがあると大変です。もう1つ、世界は「台湾侵攻」を警戒しています。これらのリスクを念頭に置いておく必要があります。
年初から本連載を含め、講演会などで、2023年の1―3月期は日本株の底値圏、最後の買い場となり、4月以降、新たな株高が始まるのではないかと予想してきました。
この予想の裏付けの1つには「波動論」があります。2020年3月のコロナショックの安値から、ちょうど3年目にあたる23年3月くらいまでに二番底、ダブルボトムを入れて、底入れするのではないかと見てきたのです。二番底を入れれば株が上昇するというのは、相場の波動ですが、その通りの展開になっています。しかも、今の株高は戻り相場ではなく、新たな株高が始まっています。
株価が波動の通り動くためには、それとマッチングする買い材料が出てこなくてはいけません。その材料の1つが4月以降に多くの企業が賃上げしたことで起きた「賃上げインフレ」です。どういう意味かというと、賃上げをすると個人が消費を拡大します。消費によって企業の売り上げが上がり、インフレにつながっていくというもので、4月以降出てきています。
2つめの材料は円安です。昨年10月に32年ぶりという150円台を付け、今なお140円近辺の水準にあります。日本は輸出立国として成り立ってきました。今では多国籍化した大企業も多いわけですが、それでも今なお円安メリットは大きいのではないかと思います。
バブル崩壊の際には円高となって、日本の輸出産業は大打撃を受けたという過去もありました。振り返れば、その間隙を中国や韓国に突かれて、日本の競争力が失われたのです。
今、その逆バージョンとなりつつあります。ゴルフに例えると、非常に厳しいハンデでプレーさせられていた日本が、楽々優勝できそうなハンデになってきているのです。
ですから、日本の景気がよくなり、株が上がるのは、ほぼ間違いありません。ただ、まだ過去の「デフレマインド」に縛られている人が多いのも、また現実です。「日経平均3万円が天井だ」と考えて空売りしていた人たちは「踏み上がる」(損失覚悟の買い戻し)可能性があります。
少し前、円安によって輸入インフレが起こり、物価が上がり始めた際には「悪い円安」という言葉が流行語のようになりましたが、今やそういう状況ではありません。
今の円安によって、日本の製造業、特に半導体関連などが蘇ってきました。それだけでなく、インバウンド(訪日外国人観光客)も急回復しています。中国からの観光客がまだ来ていないことを考えると、さらなる伸びしろがあり得ます。
これらの賃上げインフレと大円安によって、新たな株高が始まっています。21年2月16日に3万714円で一番天井、9月14日に3万795円という二番天井を突破してきているのです。
それ以前、日本株は下は2万5000円、上は3万円というボックス相場が長らく続きましたが、この相場の壁、3万円を突破しましたから、今後の日経平均は、下は3万円、上は3万5000円という水準に入っていきます。
年後半に、日本の株式市場にとっていい材料が出れば、この3万5000円の壁に向かって日本の株は上昇することになります。波動では年内に3万5000円を付ける可能性も十分にあります。
もし、このボックスを突破したら、次は3万5000円買いの4万円売りとなります。この相場が24年にやってくるかもしれないと予想しており、24年末までにバブルの高値、3万8915円に近づく、あるいは奪回する流れとなるのではないでしょうか。ただ、この動きとなるには、24年も賃金インフレが続く必要があります。
日本経済は30年続いたゼロ金利・マイナス金利、デフレの時代、いわば「水風呂」に入っていたのが、これから徐々にインフレという「お湯」が注がれて、湯加減がよくなる、つまり2~3%の適度なインフレという経済に向かおうとしています。そうなれば、人々は消費をし、投資をすることになります。
岡三証券グローバルリサーチセンター特別顧問を務める嶋中雄二さんが提唱する「ゴールデンサイクル」は23年からすでに始まっています。23年から3年連続のゴールデンサイクルというのは、過去に例がありません。
なので、24年末から、25年の年央にかけて、今の資産インフレ相場の一番天井が来るのではないかと見ています。
いよいよ「バイジャパン」、日本買いの時代が始まっています。脱デフレとなれば、世界のマネーが日本の不動産や株に集まり、上昇します。
この「バイジャパン」の流れが続く前提は、日本銀行による金融緩和が続くこと、岸田政権が中途半端なところで増税しないこと、日本の政権が向こう3~5年、デジタル革命を前進させること、すでに計画されている東京など都心の再開発が続くこと、教育や医療など、非常に保守的な分野で改革が進むことなどが挙げられます。
あえて悲観シナリオを予想すると、岸田政権が増税をした時です。消費税を上げたり、「キャピタルゲイン課税」を増税するなどすれば、楽観シナリオは頓挫します。もう1つ、日銀が金融緩和を早めにやめて、引き締め気味の政策に転じた時です。
日本政府、日銀が日本の株価や景気にとってマイナスとなるような政策を打った時には、楽観シナリオは実現しないということになります。
また24年11月は注意が必要です。なぜなら、現在のバイデン大統領は典型的な「バラマキ政策」を取っています。これが続く間は米国の景気、株価の暴落はないでしょう。
ただ、米国の政権が共和党に変わった場合、このバラマキのツケを誰かが、いつか払うことになります。この時に、米国株は暴落することになるでしょう。
また中国は、政府がバブル崩壊をさせないでしょうが、習近平政権が揺らぐようなことがあると大変です。もう1つ、世界は「台湾侵攻」を警戒しています。これらのリスクを念頭に置いておく必要があります。