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ニトリホールディングス会長・似鳥昭雄「ピンチはチャンス。改革で新事業を創出していく!」

財界オンライン 2023年7月6日 18時0分

創業以来初の経験に…

 ─ コロナ禍の3年間で個人の生き方・働き方が変わり、消費行動も大きく変化したと思います。ニトリホールディングスも2023年3月期は、経常利益ベースで36期連続増収増益を達成したものの、純利益では24年ぶりに減益になったということですが、まずはコロナ禍の3年間をどう総括しますか。

35期連続増収増益の『ニトリ』 好調の理由と今後の課題は?

 似鳥 波乱の3年間でしたよね。2020年に新型コロナウイルス感染症が起こって、緊急事態宣言で百貨店やショッピングセンターが臨時休業を余儀なくされましたけど、当社は生活必需品を取り扱っているので、政府の規制対象から外れました。

 それで一時は既存店が前年比4~5割増になって、いわゆる巣ごもり消費で急激に当社の売上も伸びたんですね。他の店が営業していないから、開店前の店舗入口にお客様が長い列を作ってお待ちいただいたこともありました。感染予防対策の必要もあり、社員が対応しきれなくなったので、初めて入場制限をしたりして、何とか対応したんです。

 コロナ禍は売上の面では、1年目は良かったんですが、2年目には、その反動が出ました。一方、商品の供給面では、ロックダウンや海上輸送の混乱の影響があったわけですが、昨年はロシアによるウクライナ侵攻が加わって、一気に原材料や物流費など、様々なコストが上昇しました。そこに円安になったことも加わり、前期は非常に厳しい決算年度となりました。

 ─ 為替の要因も大きかったんですね。

 似鳥 ええ。2年前は為替が1ドル約110円でしたが、昨年は約132円でした。約22円の円安になったんですが、当社は1円の円安が約20億円の減益要因です。だから、約400億円のコストアップ要因になりました。この他、コンテナ代が2~3倍に上がったので運賃が前年比で約160億円、そして、原材料費が約100億円など、合わせて約700億円のコストアップになりました。

 1年間でこれだけコストアップになるのは、わたしの55年の経験の中で初めてです。

 ─ 創業以来初ですか。

 似鳥 今までもリーマンショックやオイルショック、バブル崩壊など、10年に一度くらいは大きな不景気があったんです。そういうのは割合と難なく乗り切ることができたんですが、今回のようにたった1年でこんな極端に変化するようなことはなかった。100億円、200億円の変化なら対応できますが、700億円の変化にはそう簡単には対応できませんでした。

 ただ、36期連続増収増益(経常利益ベース)がかかっていたので、それを何とか実現しようと、チームをつくって業務改革を行い、徹底したコスト削減とコンテナ船も船を一隻チャーターして物流費を安くしたり、配送料の無料キャンペーンをやったりして、全社一丸で対応しました。そして、最後の40日間で、かなり巻き返すことができたんです。

 ちょうど前期から決算期を3月期に変更しているんですが、社員の頑張りのおかげで何とか増収増益を達成。上場企業の増収増益記録を更新し、単独世界1位になることができました。


ピンチの時にシェアをとってきた

 ─ では、36期増収増益を果たした後の成長戦略について伺います。日本は人口減少で市場縮小が予想されるんですが、日本市場の可能性については、どのように考えていますか。

 似鳥 日本の少子高齢化、人口減少がもっと進み市場規模が縮もうが、変化は少しずつ起きていきます。だから、市場が一気に無くなるわけではないので、寡占化していけばいいんです。

 ─ なるほど。シェアをとっていく。

 似鳥 はい。ピンチはチャンスと言って、当社はこれまでピンチの時にシェアをとってきました。

 ─ 逆境をチャンスに変えるわけですね。

 似鳥 そうです。だから、市場縮小と言っても悲しいことなんて無い。逆にチャンスだと捉えていく。では、どうやってシェアをとっていくかと言ったら、他がやらない強みが1つか2つあるといいですね。

 当社の場合は家具とホームファッションが中心で、家の中の装いを飾るもの全てを扱っています。家具屋と言っても、家具は今、全体の30%しかなくて、ホームファッションがメインなんです。ということは、本業を上回る新しいものをどんどん開発していったということなんですね。

 ─ 新事業を創出し、本業を小さくしていったと。

 似鳥 だから、今はホームセンターと家電を強化していて、ホームセンターの島忠と経営統合したり、家電量販店のエディオンと資本業務提携したりしています。だから、今後は1階にホームセンター、2階に家電、3階にニトリが入るような出店も考えられますよね。

 うちは総合的に住関連を一カ所でやれば、お客様にとって便利じゃないかということで、一つひとつ手を打っています。

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