ニッチトップ製品が多いことが同社の強み
「半導体はエレクトロニクスや自動車など、あらゆる産業に不可欠。当社は半導体製造装置関連や電子デバイスなど、いろいろな材料やトップシェア製品を幅広く取り扱っており、これからも成長が期待できる」
こう語るのは、フェローテックホールディングス(HD)社長グループCEO(最高経営責任者)の賀 賢漢(が・けんかん)氏。
半導体関連を中核とし、様々な電子デバイスや産業機器を手掛けるフェローテックHD。主に半導体製造装置関連と電子デバイスの2つの事業で構成され、売上の6割以上を占めるのが半導体製造装置関連事業。
中でも主力製品となっているのが、世界シェア65%で不純物の無い密閉空間を確保するための真空シール。この他、世界シェア80%の磁性流体(磁力に反応する液体)や同36%のサーモモジュール(半導体冷熱素子)など、市場規模は小さくとも高いシェアを誇るニッチトップ製品が多いことが同社の強みになっている。
「半導体業界は採用されるまでが難しいが、一度認められると、お客さんはそんなに取引先を変えることはない。他社より先に市場に参入し、よく市場を分析して、お客さんと共に開発の用途を考えながら、ここまで来た。こうした強みは一朝一夕にできるものではない」(賀氏)
「日米欧の国際連携で最先端の半導体を」ラピダス・小池淳義の決意
2023年3月期の連結業績は、売上高2108億円(前年同期比57.5%増)、営業利益350億円(同55.1%増)、純利益297億円(同11.4%増)。売上高、営業利益は過去最高を更新した。
コロナ禍の巣ごもり需要で、パソコンの買い替えやデータサーバー・「5G通信」基地局への投資が進み、中国、韓国、台湾を中心に半導体関連企業の設備投資が拡大。半導体製造装置向けの治具・消耗材として使用されるマテリアル製品(石英製品・セラミックス製品・シリコンパーツ等)、部品洗浄、パワー半導体基板などの事業が好調だった。
同社は1980年に米フェローフルイディクス社の子会社として日本に設立されたのが始まり。真空シールや磁性流体の輸入販売を手掛けていたが、87年に米国親会社から独立。国内に工場を建て、92年に中国へ進出した。ここから世界展開を加速し、現在は中国に11拠点、米国、ドイツ、台湾、マレーシアなど合計25の海外拠点がある。
「この30年、マーケティングやR&D(研究開発)は米国、生産技術が得意な日本、量産展開の中国と、製造と販売のバランスを考えながら、世界中に拠点をつくってきた」(賀氏)
米中摩擦はむしろ追い風
1957年に中国・上海で生まれた賀氏は、もともと上海で教師をしていた人物。その後、日本の早稲田大学や日本大学大学院へ留学。93年に同社へ就職し、20年から社長に就任した。
その間、同社は96年に店頭登録(現在は東証スタンダード)、99年には元親会社の米社を傘下に収めた。現在は売上の約8割が米国を中心とした海外、製造も約8割が中国を中心とする海外で行っている。
それだけに、同社につきまとうのが中国リスクだ。
特に近年は米中対立が激化し、経済安全保障上のリスクがあるとされる半導体の先端技術を巡っては、米国が対中輸出規制を強化。アプライドマテリアルズやラムリサーチなどの米国企業が主要顧客で、中国を中心とした生産体制を構築してきた同社にとっては、逆風が押し寄せているのではないか。
それでも賀氏は、中国政府が経済政策『中国製造2025』で半導体の国産化強化を打ち出していることから、逆風ではないと断言。今後も中国での生産能力増強に取り組む考えだ。
「米中摩擦はむしろ追い風。半導体製造装置の分野では、中国はまだまだ日本と比べて競争力が追い付いていない。しかし、マーケットはすでに中国が世界一。特に昨今の米中摩擦もあって、さらに国産化に向けた投資が加速している。米国企業からの調達を他社に置き換える動きが加速する中で、30年前から中国で主要拠点を構築してきた当社への引き合いが増加しており、中国に根付いている当社にとってはチャンス」(賀氏)
もっとも、同社も近年はリスクヘッジの観点から、マレーシアに新たな生産拠点を建設中の他、国内回帰を掲げて日本でも新工場を建設。昨秋から石川県白山市の第2工場を稼働させた他、来年中には新たに同・川北町に第3工場を竣工予定。更に、TSMC(台湾積体電路製造)が建設中の熊本工場から車で10分程度の場所(大津町)に新工場を建設する方針。中国で培ってきた量産技術を日本に逆輸入しようとしている。
また、23年には東証グロース上場で温度センサを主力とする大泉製作所と機械刃物メーカーの東洋刃物を子会社化。コア事業の更なる強化に向け、M&A(合併・買収)も駆使して周辺事業を強化。2030年度に売上高5千億円、当期純利益500億円を目指す予定だ。
「日本には優れた技術を持った半導体製造装置や部材のメーカーが多い。各国がサプライチェーン(供給網)の見直しを図る中で、どの国にとっても顧客に望まれているのは地産地消。当社は米国発の日本企業であり、中国で製造技術を磨いてきた強みがあるので、中国のお客さんには中国、日本のお客さんには日本、米国のお客さんには米国や日本、マレーシアから製品を提供していく」と語る賀氏。
各国とも半導体サプライチェーンの再構築が求められる中で、同社も今後の生産・販売体制をどう構築していくか。賀氏の挑戦が続く。
【経済産業省】半導体など税制・予算支援へ「世界に遜色ない水準」明記
「半導体はエレクトロニクスや自動車など、あらゆる産業に不可欠。当社は半導体製造装置関連や電子デバイスなど、いろいろな材料やトップシェア製品を幅広く取り扱っており、これからも成長が期待できる」
こう語るのは、フェローテックホールディングス(HD)社長グループCEO(最高経営責任者)の賀 賢漢(が・けんかん)氏。
半導体関連を中核とし、様々な電子デバイスや産業機器を手掛けるフェローテックHD。主に半導体製造装置関連と電子デバイスの2つの事業で構成され、売上の6割以上を占めるのが半導体製造装置関連事業。
中でも主力製品となっているのが、世界シェア65%で不純物の無い密閉空間を確保するための真空シール。この他、世界シェア80%の磁性流体(磁力に反応する液体)や同36%のサーモモジュール(半導体冷熱素子)など、市場規模は小さくとも高いシェアを誇るニッチトップ製品が多いことが同社の強みになっている。
「半導体業界は採用されるまでが難しいが、一度認められると、お客さんはそんなに取引先を変えることはない。他社より先に市場に参入し、よく市場を分析して、お客さんと共に開発の用途を考えながら、ここまで来た。こうした強みは一朝一夕にできるものではない」(賀氏)
「日米欧の国際連携で最先端の半導体を」ラピダス・小池淳義の決意
2023年3月期の連結業績は、売上高2108億円(前年同期比57.5%増)、営業利益350億円(同55.1%増)、純利益297億円(同11.4%増)。売上高、営業利益は過去最高を更新した。
コロナ禍の巣ごもり需要で、パソコンの買い替えやデータサーバー・「5G通信」基地局への投資が進み、中国、韓国、台湾を中心に半導体関連企業の設備投資が拡大。半導体製造装置向けの治具・消耗材として使用されるマテリアル製品(石英製品・セラミックス製品・シリコンパーツ等)、部品洗浄、パワー半導体基板などの事業が好調だった。
同社は1980年に米フェローフルイディクス社の子会社として日本に設立されたのが始まり。真空シールや磁性流体の輸入販売を手掛けていたが、87年に米国親会社から独立。国内に工場を建て、92年に中国へ進出した。ここから世界展開を加速し、現在は中国に11拠点、米国、ドイツ、台湾、マレーシアなど合計25の海外拠点がある。
「この30年、マーケティングやR&D(研究開発)は米国、生産技術が得意な日本、量産展開の中国と、製造と販売のバランスを考えながら、世界中に拠点をつくってきた」(賀氏)
米中摩擦はむしろ追い風
1957年に中国・上海で生まれた賀氏は、もともと上海で教師をしていた人物。その後、日本の早稲田大学や日本大学大学院へ留学。93年に同社へ就職し、20年から社長に就任した。
その間、同社は96年に店頭登録(現在は東証スタンダード)、99年には元親会社の米社を傘下に収めた。現在は売上の約8割が米国を中心とした海外、製造も約8割が中国を中心とする海外で行っている。
それだけに、同社につきまとうのが中国リスクだ。
特に近年は米中対立が激化し、経済安全保障上のリスクがあるとされる半導体の先端技術を巡っては、米国が対中輸出規制を強化。アプライドマテリアルズやラムリサーチなどの米国企業が主要顧客で、中国を中心とした生産体制を構築してきた同社にとっては、逆風が押し寄せているのではないか。
それでも賀氏は、中国政府が経済政策『中国製造2025』で半導体の国産化強化を打ち出していることから、逆風ではないと断言。今後も中国での生産能力増強に取り組む考えだ。
「米中摩擦はむしろ追い風。半導体製造装置の分野では、中国はまだまだ日本と比べて競争力が追い付いていない。しかし、マーケットはすでに中国が世界一。特に昨今の米中摩擦もあって、さらに国産化に向けた投資が加速している。米国企業からの調達を他社に置き換える動きが加速する中で、30年前から中国で主要拠点を構築してきた当社への引き合いが増加しており、中国に根付いている当社にとってはチャンス」(賀氏)
もっとも、同社も近年はリスクヘッジの観点から、マレーシアに新たな生産拠点を建設中の他、国内回帰を掲げて日本でも新工場を建設。昨秋から石川県白山市の第2工場を稼働させた他、来年中には新たに同・川北町に第3工場を竣工予定。更に、TSMC(台湾積体電路製造)が建設中の熊本工場から車で10分程度の場所(大津町)に新工場を建設する方針。中国で培ってきた量産技術を日本に逆輸入しようとしている。
また、23年には東証グロース上場で温度センサを主力とする大泉製作所と機械刃物メーカーの東洋刃物を子会社化。コア事業の更なる強化に向け、M&A(合併・買収)も駆使して周辺事業を強化。2030年度に売上高5千億円、当期純利益500億円を目指す予定だ。
「日本には優れた技術を持った半導体製造装置や部材のメーカーが多い。各国がサプライチェーン(供給網)の見直しを図る中で、どの国にとっても顧客に望まれているのは地産地消。当社は米国発の日本企業であり、中国で製造技術を磨いてきた強みがあるので、中国のお客さんには中国、日本のお客さんには日本、米国のお客さんには米国や日本、マレーシアから製品を提供していく」と語る賀氏。
各国とも半導体サプライチェーンの再構築が求められる中で、同社も今後の生産・販売体制をどう構築していくか。賀氏の挑戦が続く。
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