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【新しい法制下での不動産ビジネス】共有者が行方不明の建物の賃貸の場合は?

財界オンライン 2023年7月17日 7時0分

(不動産会社開発事業部長Q氏) 弊社は、都内のある空き家のビルを自社の店舗用に賃借したいと考えております。ビルはA、B、C、D各4分の1の共有持分とする共有登記がなされており、AとBに連絡したところビルを賃貸してよいとの意向ですが、他の共有者CとDは所在不明で一切連絡がとれないとのことです。当社は、A、Bとの協議で、ビルのワンフロアを、(1)期間3年で更新が可能な普通借家契約、または(2)より安い賃料にて期間3年で更新なしの定期借家契約のいずれかの方法で賃借する予定ですが、共有者C、Dが所在不明で一切連絡がとれない中でも賃借はできますか。

(弁護士A氏) 従前の民法では、共有建物の賃貸は、3年の期間内の場合であれば、共有者のうち共有持分の過半数を有する共有者が同意すれば可能。期間3年を超える賃貸の場合は、共有物の「変更」と解釈され共有者全員の同意を要し、期間3年でも更新アリの場合も、期間3年を超える賃貸借と同様に共有者全員の同意を要すると解されました。そこで、貴社のケースでは、(1)期間3年で更新が可能な普通借家契約は、共有者4人全員の同意がない限り締結できず、(2)期間3年の定期借家契約は、共有者AとBでは共有持分の過半数とならず、これも締結できないこととなります。

 しかし、令和5年4月から施行された民法改正法により、共有者の氏名や所在が不明である場合でも、既に本誌のQAで解説しました通り、その共有持分の売却が裁判所の決定を得れば可能となった他、共有不動産の賃貸借も裁判所の決定で法的に可能となりました。

 まず、(1)期間3年で更新が可能な普通借家契約は、民法改正法によると、共有者は、所在不明共有者以外の共有者全員の同意があることをもって、裁判所の決定を得て、期間3年を超える賃貸(更新可能な期間3年の賃貸も同様)をすることが可能です。貴社の場合は、共有者AとBは、CとDが行方不明であることを郵便物が届かないことなどの事実をもって立証し、裁判所の決定を得て、貴社に対し期間3年で更新可能な建物の賃貸をすることができます。また、(2)期間3年の定期借家契約については、民法改正法では、所在不明共有者以外の共有者の共有持分の過半数をもって、裁判所の決定を得て、賃貸が可能となりますので、共有者AとBは、両者の共有持分(計2分の1)の過半数、つまりはAとBにて賃貸が可能となります。

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