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【オンライン医療相談】YOKUMIRU・原翔平氏に直撃!「海外に住む日本人の悩みの解決を」

財界オンライン 2023年7月17日 18時0分

海外で病気になった時、まずは現地の医療機関での受診を考えるわけだが、自らの症状を正確に伝えられるか自信がなかったり、そもそも今の症状がどういったものなのかを日本語で知りたいというニーズがある。それに応えるサービスが「YOKUMIRU」。海外在住、あるいは在住経験のある日本人医師がオンラインで相談に応じるサービス。事業を展開する原翔平氏は「お客様の課題に寄り添ったアドバイスで、高い満足度を得ていただいている」と手応えを感じているようだ。

現地をよく知る医師によるアドバイス

 ―― 御社が展開しているサービス「YOKUMIRU」のサービス概要について聞かせて下さい。

 原 当社が展開している「YOKUMIRU」は、海外にいる日本人のための、日本人医師による「オンライン医療相談サービス」です。現在約200名の日本人医師のご協力を得ていますが、その半数ほどが日本在住、もう半数が海外に在住しています。

 これによって何が解決できるかというと、どの国からご利用いただいても、時差の関係で24時間、相談枠をつくることができる環境となっています。また、現地のことをよく知っている日本人医師に相談ができることで、お客様の課題解決につながっていると考えています。

 ―― 「YOKUMIRU」の利用者からはどんな反応が出ていますか。

 原 一番は日本語で、日本人医師に相談ができるということを、非常に喜んでいただいています。

 例えば、海外で病院にかかった際、現地の医師が示した方針が、日本の医師が診断した場合と比べてどういう判断になっているのか、さらには手術を勧められたけれども、本当に手術をしなければならない症状なのか?ということが気になる方は多いんです。

 今までは、海外に在住している方々が聞ける相手はいませんでした。それに対して、当社のサービスをご利用いただくことで、課題解決につながる可能性があります。医師は、現地で撮影されたレントゲン写真やエコーの画像、診断書などをお客様にご了承を得た上で共有していただきながらアドバイスしているんです。

 ―― あくまでも「診療」ではなく「医療相談」だというのは大事な点ですね。

 原 ええ。このサービスでは「診断」をすることはありません。あくまでも、可能性についてアドバイスをするという形になります。先程のレントゲン写真なども、個人のお客様が持たれているものに基づいてアドバイスをするという範疇です。

 ―― このサービスに参加している医師に対しては、相談の範囲内だということを徹底しているわけですね。

 原 そうです。YOKUMIRUに参加していただく前に、私と野田一郎先生(YOKUMIRU顧問医師・野田耳鼻咽喉科院長)とで面談をさせていただいて、細かくお話をさせていただいています。

 その後、採用となっても、いきなりお客様からの相談を受けていただくわけではなく、当社のスタッフとのデモ相談を経験していただきます。相談記録の書き方、アドバイスの伝え方などのマニュアルを用意していますから、それに則って進めていただくことになります。

 また、サービスをご利用されるお客様に対しても、利用規約の中で医師のアドバイスを受けて、どう判断し、行動するかについての責任はお客様にあることを明確に謳っています。ですから、サービス参加の医師の方々に対しては「アドバイスの範囲を逸脱しないこと」を強くお願いしています。

 ―― 利用者の側で、診療と医療相談を混同するようなことはありませんでしたか。

 原 ほとんどなかったと言っていいと思います。なぜなら、我々のサービスをご利用される方は、本当に困っておられますから、日本人の医師に、日本語で相談ができるということだけでも、かなりの満足を得て下さいます。

 相談いただく内容も、細かいことというよりは、主に日本だったら、どう判断される可能性があるかという内容が多い。なおかつ、お客様が話したい内容は本当に多く、それに対して医師が寄り添って話をすることで解決したり、満足を得ていただけるということが多いのです。

 海外の病院は、診察時間が細かく制限されて、質問回数まで決まっているというビジネスライクな面があります。それに対してYOKUMIRU では寄り添って対応することで、安心感を持っていただいています。

 サービス開始から2年半ほど経ちますが、例えば「言った、言わない」といったクレームは1件も発生していません。それはお客様が求めているサービスをご提供できている表れではないかと考えています。ご利用された方々の満足度が高いということには自信を持っていますから、今の我々の課題は、認知度をどれだけ高めていけるかです。

 YOKUMIRUに参加している医師の方々も、海外で生活する中でお客様と同じような体験をしています。例えば、ある医師に同行して海外に住んでいるご家族が病院に行った時、医療通訳がついたそうですが、その医師は横で聞いていて、訳され方が違うことがあり最初、症状が伝わらないということがあったそうです。

 医師の方々はお客様の困り事を、よく理解した上でアドバイスしてくれていますから、それも高い満足度につながっているのではないかと思います。

医師にとっても新たな副業の選択肢に

 ―― YOKUMIRUに参加して働いている医師は、普段の診察とはまた違う働き方になりますね。

 原 大前提として、サービスに参加されている医師の方々は、我々の取り組みに共感してくれています。

 その上で、我々の考え方は、日本の先行きを考えた時には、人口減少で市場が縮小していく。その中では大企業のみならず、中小企業も含めて海外進出をしていく流れがあります。ですから今後、海外で活躍する日本人が日本の未来をつくっていくと言っても過言ではないと思います。

 その海外で活躍するために必要な要素は様々ありますが、そもそも健康でなければいけないということが根底にあると思います。この健康を誰が支えるのか?という部分を担うのが我々のサービスであり、サービスに参加している医師の方々です。いわば日本の未来を支える仕事だということに共感してもらっていますから、皆さんモチベーション高く働いてくれています。

 ―― 医師の方々は、病院やクリニックに所属した上で副業としてYOKUMIRUに参加しているわけですね?

 原 そうです。医師の副業で多いのは外来などですが、外来は時間と場所が拘束されます。それに対して我々のサービスは場所が拘束されませんし、時間も自分が空けたスケジュールにしか予約が入らない仕組みになっていますから、時間を選ぶこともできます。その柔軟性の高さから副業として選んでいただいているという側面もあるのだと思います。

企業の「安全配慮義務」が問われる中で

 ―― 法人契約もありますが、どういったニーズがありますか。

 原 法人に関しても、個人の方とご利用のされ方や課題感は変わらないと思います。そうした中で、我々が法人に対してどのようなアプローチでお話をしているかというと、まず従業員が健康でなければ、生産性が上がらないということが1つあります。

 もう1つ、法人から海外に赴任される方は海外旅行保険や現地ローカルの保険に加入することが多いのですが、「持病」や「メンタル面のケア」など、保険だけで対応できないケースもあります。その補完として我々のサービスを使っていただくということもあります。

 さらに、「法令遵守」という面におけるニーズも高いんです。具体的に申し上げると労働契約法の中で「安全配慮義務」が定められています。その中で企業は、労働者が安全・健康に労働できるよう配慮する義務があるとされているんです。つまり、従業員の体、心に問題が起きないように、会社としてしっかりケアする必要があるということです。

 そうした中で、海外に赴任されている方の割合が少ない企業では、その方々に対するケアにコストが掛け切れておらず、保険だけ掛けて終わりになってしまっていることが多いのです。

 もちろん、保険を掛けるのはいいことですが、先程の安全配慮義務が「問題が起きないように」ケアすることを求めているのに対し、保険は「問題が起きた時」にしか使うことができません。

 こうなると法令遵守の取り組みとしては、非常に弱いものになってしまう。ですから、その取り組みとしてYOKUMIRUをご利用いただいて従業員の方々の体、心のケアに役立てていただいているのです。

 保険とYOKUMIRU を組み合わせることで、安全配慮義務への取り組みとして謳うことができ、リスク軽減につながります。近年の流れで言えば「健康経営」、「人的資本経営」という文脈でもご活用いただいています。

 ―― コロナ禍によってオンラインでのコミュニケーションが急激に普及しましたが、これは事業を進める上で大きかったと言えますね。

 原 そう感じます。我々のサービスは診療ではありませんが、この間、日本として「オンライン診療」に関して法律面での整備などが進んだことも大きかったですね。

 また、どの国でもインターネット環境が整備され、パソコンやスマートフォンが普及して、手軽にアクセスできるようになりました。これによって老若男女問わず、オンラインのビデオ通話に慣れ親しむ方が増えました。こうした環境は、我々のサービスを利用する上でのハードルを下げてくれていると思います。

 ただ、まだ医療に関しては、リアルで行うものという意識が強かったり、医師に相談するのを躊躇してしまうといった心理的ハードルもあるようです。その意味で、我々のサービスを使って何ができるのかといった事例を多くお見せしていくことが、ますます重要だと考えています。

 ―― 将来において、どのような存在になっていたいと考えていますか。

 原 現状、在留邦人が約140 万人、海外渡航者が2019年のデータでは年間約2000万人でしたが、コロナが明けて徐々にこの数字に戻っていくと見ています。こうした方々の中で「海外に行くならYOKUMIRUだよね」という形になるように、ブランドを浸透させていきたいと思っています。

 さらに、現在のサービスで海外にいる日本人の方々がどんなことに困っているかというデータが蓄積できています。医療や健康以外の困り事の解決も手掛けられればと考えています。それによって「日本発の『安心』で世界を満たす。」というビジョンを実現していきたいと思っています。

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