「日本には森林から取れるバイオマスという大変な財産がある」─。『ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済』を公表した一般社団法人プラチナ構想ネットワーク。日本の森林資源を最大限活用することで、脱炭素社会の実現を目指そうという提言だ。日本は化石燃料への依存からどう脱却し、森林資源をどう活用していくのか。元東京大学総長の小宮山氏と山形を本拠に木造建築の可能性を追求する木村氏との特別対談─。
化石燃料が再エネに金属資源は都市鉱山に代わる
─ 小宮山さんが会長をつとめるプラチナ構想ネットワークは、5月に『ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済』を公表しました。まずはこうした提言を公表した狙いから聞かせてください。
小宮山 『ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済』は「石油化学からバイオマス化学への転換」、「木造都市(まちの木質化・木造化)の展開」、「森林・林業の革新」の三つの戦略を柱として、今後の森林産業のあるべき姿を取りまとめたものです。
【三菱総合研究所・小宮山宏理事長に直撃!】「チャットGPT」と人の関係はどうあるべきですか?
わたしは森林がこれから日本の大変な資源になると思っています。今の資源というのは、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料と鉄鉱石や銅などの金属資源、そして、食料のような生物資源に分類されますが、これが2050年までにガラリと変わります。
それは化石燃料が再生可能エネルギーに代わり、金属資源は都市鉱山に代わる。これから、そういうエネルギーの大転換が起こると思います。
─ 再エネと都市鉱山にエネルギーの主役が変わっていくと。
小宮山 はい。今の世の中にあふれているモノは、プラスチックをはじめ、石油化学からつくられているモノが多い。これからは脱炭素ということで、石油や石炭が使えなくなりますから、それをどう代替して、つくっていくかが非常に重要な問題になるわけですよ。
そこで日本の国土を見渡して見ると、森林資源が豊富な国であると。日本は小さな国ですが、国土の3分の2が森林に覆われていて、木の生えにくいところがないんです。要するに、国土の大きい国を考えたら、熱くて砂漠地帯が多いとか、ツンドラ地帯で寒すぎて木が成長しない場所が多い。
その意味で、国土の3分の2が森林に覆われ、しかも、温暖湿潤で木の成長速度が非常に速い日本という国は、大変な資源を持っている。その森林を活用したバイオマスが今後、大変な財産になるということです。
─ 日本が資源国というのは新しい視点ですね。
小宮山 これは十数年かけて議論をしてきて、森林をもっと活用しようという声は今までにもありました。しかし、実行に移している人が少ない。そこに木村さんのような実践者が出てきたというのは、われわれにとっても非常に心強いです。
100年住むことができる住宅をつくりたい
─ 山形を本拠に、木造建築の可能性を一貫して追い求めてきたのが木村さんです。今の小宮山さんの話を受けて、改めて、木造建築にかける木村さんの思いを聞かせてください。
木村 わたしも小宮山先生の影響があるのか、木造建築こそが地方創生と日本の経済再生につながると考えています。
木は環境にやさしい素材で、地球温暖化対策になりますし、何より住んでいて人の心を温かくさせる。われわれは人々が心身ともに豊かに暮らすことができる環境をつくるため、木造建築によって「都市(まち)に森をつくる」事業を推進しており、新たな木造都市の実現に向けて取り組んでいるところです。
【「財界賞経営者賞」贈呈式】経営者賞受賞コメント・シェルター・木村一義会長
─ 木造の住宅づくりは創業以来ずっとですね。
木村 ええ。わたしは1974年、24歳でシェルターホーム(現シェルター)を設立しました。それから約半世紀、耐久性があって、100年住むことができる住宅をつくりたいという思いを抱いて、木造住宅づくりを進めてきました。
というのも、海外では二代、三代にわたって住み続ける家が一般的ですが、日本ではマイホームを建てたら、その家は一世代で終わり。たった30年でお終いではなく、せっかく建てた家なのだから、二代、三代にわたって100年は住めるような家をつくりたいと考えたのです。
─ 木の可能性に懸けたということですね。
木村 はい。木はやはり美しいですよね。年輪があって、どの木も一つひとつ表情が違うのも、またいいんです。鉄やアルミは表情が皆同じじゃないですか。しかし、木は違う。それは木が生きものだからです。
だから、わたしは木が好きなんですが、そもそも、自分の名前がウッドヴィレッジ(木村)なんだから、木というのは切っても切れない関係ですよね。
─ いい名前をもらいましたね(笑)。
木村 実は子供の頃は嫌いだったんです(笑)。父は工務店を経営していて、周りにいる大人たちは皆、大工ばかり。だから、あまり好きではなかったんだけど、歳をとってくると木の良さに気づくようになりました。
そういうことで、わたしは会社設立以来、鉄骨やコンクリートの建物には一切手を付けなかった。木造だけでやりたかったんです。それが良かったと思います。
続きは本誌で
化石燃料が再エネに金属資源は都市鉱山に代わる
─ 小宮山さんが会長をつとめるプラチナ構想ネットワークは、5月に『ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済』を公表しました。まずはこうした提言を公表した狙いから聞かせてください。
小宮山 『ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済』は「石油化学からバイオマス化学への転換」、「木造都市(まちの木質化・木造化)の展開」、「森林・林業の革新」の三つの戦略を柱として、今後の森林産業のあるべき姿を取りまとめたものです。
【三菱総合研究所・小宮山宏理事長に直撃!】「チャットGPT」と人の関係はどうあるべきですか?
わたしは森林がこれから日本の大変な資源になると思っています。今の資源というのは、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料と鉄鉱石や銅などの金属資源、そして、食料のような生物資源に分類されますが、これが2050年までにガラリと変わります。
それは化石燃料が再生可能エネルギーに代わり、金属資源は都市鉱山に代わる。これから、そういうエネルギーの大転換が起こると思います。
─ 再エネと都市鉱山にエネルギーの主役が変わっていくと。
小宮山 はい。今の世の中にあふれているモノは、プラスチックをはじめ、石油化学からつくられているモノが多い。これからは脱炭素ということで、石油や石炭が使えなくなりますから、それをどう代替して、つくっていくかが非常に重要な問題になるわけですよ。
そこで日本の国土を見渡して見ると、森林資源が豊富な国であると。日本は小さな国ですが、国土の3分の2が森林に覆われていて、木の生えにくいところがないんです。要するに、国土の大きい国を考えたら、熱くて砂漠地帯が多いとか、ツンドラ地帯で寒すぎて木が成長しない場所が多い。
その意味で、国土の3分の2が森林に覆われ、しかも、温暖湿潤で木の成長速度が非常に速い日本という国は、大変な資源を持っている。その森林を活用したバイオマスが今後、大変な財産になるということです。
─ 日本が資源国というのは新しい視点ですね。
小宮山 これは十数年かけて議論をしてきて、森林をもっと活用しようという声は今までにもありました。しかし、実行に移している人が少ない。そこに木村さんのような実践者が出てきたというのは、われわれにとっても非常に心強いです。
100年住むことができる住宅をつくりたい
─ 山形を本拠に、木造建築の可能性を一貫して追い求めてきたのが木村さんです。今の小宮山さんの話を受けて、改めて、木造建築にかける木村さんの思いを聞かせてください。
木村 わたしも小宮山先生の影響があるのか、木造建築こそが地方創生と日本の経済再生につながると考えています。
木は環境にやさしい素材で、地球温暖化対策になりますし、何より住んでいて人の心を温かくさせる。われわれは人々が心身ともに豊かに暮らすことができる環境をつくるため、木造建築によって「都市(まち)に森をつくる」事業を推進しており、新たな木造都市の実現に向けて取り組んでいるところです。
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─ 木造の住宅づくりは創業以来ずっとですね。
木村 ええ。わたしは1974年、24歳でシェルターホーム(現シェルター)を設立しました。それから約半世紀、耐久性があって、100年住むことができる住宅をつくりたいという思いを抱いて、木造住宅づくりを進めてきました。
というのも、海外では二代、三代にわたって住み続ける家が一般的ですが、日本ではマイホームを建てたら、その家は一世代で終わり。たった30年でお終いではなく、せっかく建てた家なのだから、二代、三代にわたって100年は住めるような家をつくりたいと考えたのです。
─ 木の可能性に懸けたということですね。
木村 はい。木はやはり美しいですよね。年輪があって、どの木も一つひとつ表情が違うのも、またいいんです。鉄やアルミは表情が皆同じじゃないですか。しかし、木は違う。それは木が生きものだからです。
だから、わたしは木が好きなんですが、そもそも、自分の名前がウッドヴィレッジ(木村)なんだから、木というのは切っても切れない関係ですよね。
─ いい名前をもらいましたね(笑)。
木村 実は子供の頃は嫌いだったんです(笑)。父は工務店を経営していて、周りにいる大人たちは皆、大工ばかり。だから、あまり好きではなかったんだけど、歳をとってくると木の良さに気づくようになりました。
そういうことで、わたしは会社設立以来、鉄骨やコンクリートの建物には一切手を付けなかった。木造だけでやりたかったんです。それが良かったと思います。
続きは本誌で