日本企業の設備投資は、足元で強い動きになっているのか。それとも、不確実性の高さゆえに伸びが限定的なのか。関連統計はまちまちで、明確な結論が出にくいテーマである。
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政府の6月の月例経済報告で、設備投資の基調判断は「持ち直している」である。一方、日銀の4月「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)は「緩やかに増加している」とした。
そうした中、景気循環とは直接の関連がない、独立したテーマの設備投資が、近年重みを増している。日銀の展望レポートは独立的な性格が濃い投資の類型として、「人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靭化に向けた投資」を例示した。
民間企業による設備投資のベクトルは、足元では上向きになっている。1-3月期のGDP(国内総生産)2次速報で、民間企業設備(設備投資)は名目で前期比+1.5%、実質で同+1.4%に上方修正された。
エコノミストが注視する指標の一つに「設備投資比率」がある。GDP全体に占める設備投資の割合を計算して、その水準や推移を見るものである。
企業が強気に傾いた結果、過剰な設備投資が実行されると、その反動で資本ストック調整が発生して、景気全体が落ち込みやすくなる。筆者は18年3月に、18%台に設備投資比率が上昇した動きを取り上げて、景気は後退局面に陥りやすくなると警鐘を鳴らした。その後実際に、景気は同年10月に山をつけて、翌月から後退局面に入った。
では、足元で設備投資比率はどのようになっているだろうか。
今年1-3月期の設備投資比率は、名目で17.21%になった。昨年7-9月期に記録した17.45%から2四半期続けて低下したものの、なお17%台の高い水準である。
一方、実質ベースで見た設備投資比率は、今年1-3月期に16.49%になった。前期からは0.1%ポイントほど上昇したものの、時系列で見ると20年4-6月期の16.86%がピークであり、そこからは水準を切り下げて推移している。
最近になって、設備投資比率でこのような名目と実質のかい離が発生している原因は、言うまでもなく「物価高」である。購入する機械や建設する店舗設備など、企業が設備投資を行う際のコストが上昇しているわけである。
この「物価高」は、設備投資関連のデータを見る際に、あるいは設備投資の行方を予測する際に、判断を迷わせる要因になり得る。日銀短観の設備投資計画などは名目ベースの統計である。表面上は強く見えても、実質ベースではそうでもないケースも考え得る。
「物価高」というのは、企業に設備投資の前倒しを促すのか、それとも先送りを促すのかという点も含めて、トリッキーな要素と言える。
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そうした中、景気循環とは直接の関連がない、独立したテーマの設備投資が、近年重みを増している。日銀の展望レポートは独立的な性格が濃い投資の類型として、「人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靭化に向けた投資」を例示した。
民間企業による設備投資のベクトルは、足元では上向きになっている。1-3月期のGDP(国内総生産)2次速報で、民間企業設備(設備投資)は名目で前期比+1.5%、実質で同+1.4%に上方修正された。
エコノミストが注視する指標の一つに「設備投資比率」がある。GDP全体に占める設備投資の割合を計算して、その水準や推移を見るものである。
企業が強気に傾いた結果、過剰な設備投資が実行されると、その反動で資本ストック調整が発生して、景気全体が落ち込みやすくなる。筆者は18年3月に、18%台に設備投資比率が上昇した動きを取り上げて、景気は後退局面に陥りやすくなると警鐘を鳴らした。その後実際に、景気は同年10月に山をつけて、翌月から後退局面に入った。
では、足元で設備投資比率はどのようになっているだろうか。
今年1-3月期の設備投資比率は、名目で17.21%になった。昨年7-9月期に記録した17.45%から2四半期続けて低下したものの、なお17%台の高い水準である。
一方、実質ベースで見た設備投資比率は、今年1-3月期に16.49%になった。前期からは0.1%ポイントほど上昇したものの、時系列で見ると20年4-6月期の16.86%がピークであり、そこからは水準を切り下げて推移している。
最近になって、設備投資比率でこのような名目と実質のかい離が発生している原因は、言うまでもなく「物価高」である。購入する機械や建設する店舗設備など、企業が設備投資を行う際のコストが上昇しているわけである。
この「物価高」は、設備投資関連のデータを見る際に、あるいは設備投資の行方を予測する際に、判断を迷わせる要因になり得る。日銀短観の設備投資計画などは名目ベースの統計である。表面上は強く見えても、実質ベースではそうでもないケースも考え得る。
「物価高」というのは、企業に設備投資の前倒しを促すのか、それとも先送りを促すのかという点も含めて、トリッキーな要素と言える。