資本の効率性と責任を明確にする
─ ENEOSグループは2025年度までの「第3次中期経営計画」を発表しました。〝エネルギートランジション(移行)〟が一つのキーワードかと思うんですが、改めて、計画の骨子を聞かせてください。
齊藤 計画を策定するにあたり、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)社会の実現」との両立に向けて挑戦することを、新たな長期ビジョンとして定めました。
【2023新春インタビュー】齊藤猛・ENEOSホールディングス社長を直撃!
この長期ビジョン実現に向け、第3次中期経営計画の基本方針として3つの柱、すなわち、「確かな収益の礎の確立」、「エネルギートランジションの実現に向けた取り組みの加速」、「経営基盤の強化」を掲げました。
まずは基盤事業の収益を確立させます。われわれは1950年頃に製油所を稼働させて以降、エネルギーの安定供給を担っていますが、ここで果たしてきた役割は今も変わりません。
エネルギー・素材の安定供給という責任を果たしつつ、石油精製販売業プラス電気プラス素材事業の収益性向上を図ります。そして、ここで得たキャッシュを原資として、エネルギートランジションを加速していきます。
─ 足元の安定供給と将来的な脱炭素への移行を果たしていくと。
齊藤 はい。この前提となる社会シナリオとして、2040年にはガソリンの需要が半減し、社会全体のカーボンニュートラルへの動きが加速すると想定しています。この社会シナリオに基づき、ロードマップを作成しました。
石油の需要は減退するものの安定供給の責任を果たし、将来へ向けてはエネルギートランジション実現への取り組みを加速させます。具体的には、再生可能エネルギーやSAF(持続可能な航空燃料)、合成燃料、水素など、当社が強みを有する事業領域に取り組んでいきます。
ただ、大事なのはトランジションの時間軸が、われわれの予想より進んでいるのか? 遅れているのか? ということ。例えば、水素への期待が高まっているとはいえ、経済合理性を考えると、化石エネルギーの需要はまだあることから、水素の普及がどの時点で、どの程度進むのかの判断は難しいところです。
また、石油需要のピークアウトはいつ頃なのか? 次はどのエネルギーが求められるのか? そして、それは電気なのか? 水素なのか? 合成燃料なのか? また、日本と海外でも事情は変わってきます。ですから、今後6年間ほどは、トランジションに向けた踊り場であり、仕込みの時期であると考えています。
─ 2030年頃を見据えて?
齊藤 はい。その頃には将来の一次エネルギーの主役は何かの分岐が見えてくると考えています。ENEOSグループとしましては、この6年間で用意周到に準備し、中期経営計画に基づいた戦略展開を行い、2030年頃にどれだけアドバンテージを確保することができるのかにかかっています。そういう意味で、われわれがファーストムーバーになると言っています。
そして、三つ目の柱が「経営基盤の強化」です。エネルギー事業会社のENEOSのうち、機能材事業、電気事業、再エネ事業を分社化します。
ENEOSは基盤事業である石油精製販売のキャッシュを最大化し、エネルギートランジションに向けた次世代エネルギービジネスを構築します。JX金属の将来的なIPO(新規株式公開)を見据えた、株式上場の準備も開始します。
さらには、資本効率を重視し、ROIC(投下資本利益率)を指標としたポートフォリオ経営を行います。低効率の事業については、抜本的な経営改善策に着手する考えです。
─ 責任を明確にし、時には厳しい判断も辞さないということですね。
齊藤 そうです。今回、ROICという経営指標を持ち込んだのは、事業ごとに、どれだけ投資をして、リターンがどれだけあり、投資に見合う利益があるのかどうかという資本の効率性と責任を明確にするのが目的です。
それを明確化するという意味で、2024年から分社体制を進めていくことを決めました。
─ 改めて、JX金属の上場を考えた理由は何だったのですか。
齊藤 JX金属、ENEOSホールディングスの両社にとって、付加価値を上げるものだと確信したので判断しました。
現在、JX金属が手掛けている事業は、スマートフォンや半導体などの需要が旺盛で、どの事業も高い成長性があります。従って、技術力もあるし、会社としてのポテンシャルも非常に高いと思っていますが、今の評価は低すぎるのではないかと感じています。IPOすることによって、きちんとした市場評価を明らかにしていく。これでJX金属という会社の価値が向上すると考えています。
もう一つは、先ほどお話したように、得られたキャッシュでエネルギートランジションを進めていきます。加えて、株主の皆様へ、配当を中心として適切な還元をしていく。JX金属、ENEOSホールディングス、両社の付加価値を上げることができると考えています。
ガソリンスタンドを配送拠点に ENEOSと三菱商事が新会社
─ ENEOSグループは2025年度までの「第3次中期経営計画」を発表しました。〝エネルギートランジション(移行)〟が一つのキーワードかと思うんですが、改めて、計画の骨子を聞かせてください。
齊藤 計画を策定するにあたり、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)社会の実現」との両立に向けて挑戦することを、新たな長期ビジョンとして定めました。
【2023新春インタビュー】齊藤猛・ENEOSホールディングス社長を直撃!
この長期ビジョン実現に向け、第3次中期経営計画の基本方針として3つの柱、すなわち、「確かな収益の礎の確立」、「エネルギートランジションの実現に向けた取り組みの加速」、「経営基盤の強化」を掲げました。
まずは基盤事業の収益を確立させます。われわれは1950年頃に製油所を稼働させて以降、エネルギーの安定供給を担っていますが、ここで果たしてきた役割は今も変わりません。
エネルギー・素材の安定供給という責任を果たしつつ、石油精製販売業プラス電気プラス素材事業の収益性向上を図ります。そして、ここで得たキャッシュを原資として、エネルギートランジションを加速していきます。
─ 足元の安定供給と将来的な脱炭素への移行を果たしていくと。
齊藤 はい。この前提となる社会シナリオとして、2040年にはガソリンの需要が半減し、社会全体のカーボンニュートラルへの動きが加速すると想定しています。この社会シナリオに基づき、ロードマップを作成しました。
石油の需要は減退するものの安定供給の責任を果たし、将来へ向けてはエネルギートランジション実現への取り組みを加速させます。具体的には、再生可能エネルギーやSAF(持続可能な航空燃料)、合成燃料、水素など、当社が強みを有する事業領域に取り組んでいきます。
ただ、大事なのはトランジションの時間軸が、われわれの予想より進んでいるのか? 遅れているのか? ということ。例えば、水素への期待が高まっているとはいえ、経済合理性を考えると、化石エネルギーの需要はまだあることから、水素の普及がどの時点で、どの程度進むのかの判断は難しいところです。
また、石油需要のピークアウトはいつ頃なのか? 次はどのエネルギーが求められるのか? そして、それは電気なのか? 水素なのか? 合成燃料なのか? また、日本と海外でも事情は変わってきます。ですから、今後6年間ほどは、トランジションに向けた踊り場であり、仕込みの時期であると考えています。
─ 2030年頃を見据えて?
齊藤 はい。その頃には将来の一次エネルギーの主役は何かの分岐が見えてくると考えています。ENEOSグループとしましては、この6年間で用意周到に準備し、中期経営計画に基づいた戦略展開を行い、2030年頃にどれだけアドバンテージを確保することができるのかにかかっています。そういう意味で、われわれがファーストムーバーになると言っています。
そして、三つ目の柱が「経営基盤の強化」です。エネルギー事業会社のENEOSのうち、機能材事業、電気事業、再エネ事業を分社化します。
ENEOSは基盤事業である石油精製販売のキャッシュを最大化し、エネルギートランジションに向けた次世代エネルギービジネスを構築します。JX金属の将来的なIPO(新規株式公開)を見据えた、株式上場の準備も開始します。
さらには、資本効率を重視し、ROIC(投下資本利益率)を指標としたポートフォリオ経営を行います。低効率の事業については、抜本的な経営改善策に着手する考えです。
─ 責任を明確にし、時には厳しい判断も辞さないということですね。
齊藤 そうです。今回、ROICという経営指標を持ち込んだのは、事業ごとに、どれだけ投資をして、リターンがどれだけあり、投資に見合う利益があるのかどうかという資本の効率性と責任を明確にするのが目的です。
それを明確化するという意味で、2024年から分社体制を進めていくことを決めました。
─ 改めて、JX金属の上場を考えた理由は何だったのですか。
齊藤 JX金属、ENEOSホールディングスの両社にとって、付加価値を上げるものだと確信したので判断しました。
現在、JX金属が手掛けている事業は、スマートフォンや半導体などの需要が旺盛で、どの事業も高い成長性があります。従って、技術力もあるし、会社としてのポテンシャルも非常に高いと思っていますが、今の評価は低すぎるのではないかと感じています。IPOすることによって、きちんとした市場評価を明らかにしていく。これでJX金属という会社の価値が向上すると考えています。
もう一つは、先ほどお話したように、得られたキャッシュでエネルギートランジションを進めていきます。加えて、株主の皆様へ、配当を中心として適切な還元をしていく。JX金属、ENEOSホールディングス、両社の付加価値を上げることができると考えています。
ガソリンスタンドを配送拠点に ENEOSと三菱商事が新会社