農林水産省は22年度の食料自給率がカロリーベースで38%だったと発表した。前年度比で横ばいだが、過去最低水準(37%)近辺から大きく改善する気配はない。一方、生産額ベースでは前年度比5ポイント低下の58%となり、過去最低を更新。政府は30年度にカロリーベースで45%、生産額ベースで75%に引き上げたい考えだが、目標達成は遠のいている。
カロリーベースの自給率は、前年度豊作だった小麦が天候不順のため単位面積当たりで平年並みの収穫量になったことや、近年の不漁によりサバ類やカツオなど、魚介類の生産量が落ち込んだことがマイナス要因となった。ただ、原料の多くを輸入に頼る油脂類の消費が減ったことで相殺され、結果として大きな変化はなかった。
生産額ベースの自給率が低下したのは、穀物や肥料・飼料価格の高騰によって輸入価格が上昇したためだ。輸入量は前年度と変わらなかったが、円安の影響もあり、輸入額が大きく膨らんだ。
ロシアによるウクライナ侵攻で食料安全保障が見直され、政府は小麦や大豆など輸入に頼る穀物の生産拡大を後押ししているが、自給率向上に即効性のある対策はないのが実情だ。
自給率向上のカギを握る品目は、小麦や大豆などの穀物のほか、家畜のえさの多くを輸入に依存している畜産物だ。
畜産物の自給率はカロリーベースで17%だが、輸入飼料を国産で賄ったとして計算した場合、牛肉や豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳乳製品の自給率は軒並み大幅に上昇し、畜産物全体で64%に達することになる。政府は22年度に26%だった飼料自給率について、30年度に34%にする目標を掲げている。
野村哲郎農水相は閣議後記者会見で「海外依存の高い小麦、大豆、飼料作物の生産拡大を着実に進めていきたい」と述べたが、残された時間は少ない。
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