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「もはや、ゲームだけの会社ではない」SNS、ゲーム、スポーツ…MIXIの3本柱経営

財界オンライン 2023年9月7日 7時0分

スポーツを介してリアルとネットをつなぐ

 岡山県南部の玉野市に位置する玉野競輪場─。昨年3月にリニューアルされ、初のホテル併設型競輪場が誕生した。部屋の窓からは競輪場越しに瀬戸内海の絶景を堪能でき、レストランでは地元の食材を使った料理を楽しむことができる。

 このようなホテルや競輪場の運営を行うのが、競輪・オートレースの車券や競輪くじのインターネット販売サイトを運営するチャリ・ロト。岡山県玉野市から競輪場の再整備事業を受託したもので、スマホゲームアプリ『モンスターストライク(以下、モンスト)』などを開発するMIXIの完全子会社である。

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「競輪場などの公営競技は老朽化した施設で、来場者もオジサンばかりというイメージがあるかもしれないが、昔のイメージを払拭し、子連れの方や若い人も訪れたくなるような競輪場をつくっていきたい。普段は当社のコンテンツ経由で競輪を楽しみ、時間がある時は現地でリアルな熱狂や選手の息遣いを体感してもらえれば」

 MIXI上級執行役員で投資事業推進本部本部長の奥山翔氏はこう語る。

 MIXIが新規事業開発を急いでいる。すでに2019年度から22年度までの4年間にM&A(合併・買収)やスタートアップ企業への出資など、総額約700億円の投資を実行。

 チャリ・ロトを傘下に入れたのが19年で、ここから公営競技関連事業へ参入。玉野競輪場の他、高松競輪場や広島競輪場の運営などにも着手。この他、バスケットボールのB・LEAGUE『千葉ジェッツふなばし』やサッカー・Jリーグの『FC東京』など、プロ球団の経営にも参画しており、スポーツ事業をモンストに次ぐ第2の柱に育てようとしている。

「当社の参画以来、ジェッツもFC東京も観客動員が増えており、サポーターの反応もポジティブに受け止めている。友人と一緒に熱くなり、興奮を共有することができるのがスポーツの魅力。これまでゲームを通じて、友達と興奮を共有するサービスを提供してきた会社なので、スポーツを介してリアルとネットをつなぎ、ユーザーの興奮や共感の輪を広げたい」(奥山氏)

 また、同社が次なる投資のターゲットに見据えるのがインド。ゲーム会社やオンラインでのコミュニケーションサービスを提供する会社など、インドのスタートアップ企業へ約75億円を投じることを決めた。

 インドは人口が約14億人で、今年中に中国を抜くとも、すでに中国を抜いて世界最多になったとも言われている。現在、日本のスマホゲーム市場は1兆円規模。インドでは2027年までに市場規模が同程度まで拡大すると予想され、ビジネスチャンスも多いと判断したようだ。

「インドはここ数年でスマホの普及が急速に進み、人口だけでなく普及率も世界一。生産年齢人口も2050年あたりまで増加が続くと言われており、エンターテインメントを楽しむ世代が圧倒的に増えていく。マーケットのポテンシャルは非常に高いと考えており、現地の企業と連携することでインド市場の成長力を取り込みたい」(同)



友達や家族が集まるきっかけや場所をつくる

 1999年の創業以来、SNS『mixi』や『モンスト』、子供の写真・動画共有アプリ『家族アルバム みてね』など、友人や家族と一緒に楽しむコミュニケーションサービスを提供してきたMIXI。

 日本発のSNSとして絶対的な地位を築いてきた同社の転機となったのが2013年のこと。06年の上場以来、13年度(14年3月期)に初めて最終赤字へ転落してしまったからだ。

 パソコンやガラケー(従来型の携帯電話)を中心に広がったミクシィだが、時代は徐々にスマートフォン時代へ移行。米フェイスブック(現メタ)やツイッター(現X)、韓国からLINEが続々日本へ上陸した。

 SNSやゲームは流行り廃りが早い上に、巨額の開発費や広告宣伝費が必要。そうした要因が重なり、一時期、ユーザー離れを招いてしまったのだ。

 この時、救世主となったのがスマホゲームのモンスト。苦境期だった2013年10月にリリースされると、瞬く間にヒット。今年6月には世界累計利用者数が6千万人を突破した。

 MIXIの23年3月期の連結業績は売上高1468億円(前年同期比20.4%増)、営業利益248億円(同39.4%増)と増収増益。モンストを含む、デジタルエンターテインメント事業は売上の約7割を占め、同社の屋台骨を支える事業へと成長した。

 SNS、ゲーム、スポーツと、約10年ごとに注力事業を変えながら成長してきたMIXI。

 ゲームはヒットするまでが大変だが、一度人気に火がつくと数年は課金などで安定した収益が確保できる。それでも発売から10年近くが経ち、同社も次の成長の柱が必要。そこで白羽の矢が立ったのがスポーツ事業であり、その先を見据えるのがインドへの投資というわけだ。

「特に10年という区切りを設けているわけではないが、常に新しいチャレンジは続けている。当社はゲームだけの会社ではなく、コミュニケーションをつくる会社。オンラインでも、オフラインでも、友達や家族が集まるきっかけや場所をつくり、皆で一緒に盛り上がれる場を創出したい」と語る奥山氏。

 群雄割拠のスマホゲーム市場。時代の変化に対応しながら、新事業の創出を目指すMIXIである。

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