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【ニーリー】レッドオーシャンをブルーオーシャンにする佐藤養太の〝月極駐車場〟改革論

財界オンライン 2023年9月12日 15時0分

トヨタ自動車からも声がかかる─。そんなベンチャー企業がある。2013年設立のニーリーだ。同社は月極駐車場の「探す」から「借りる」までの手続き全てをオンラインで完結できるオンライン契約サービスを開発・運営。代表取締役の佐藤養太氏は「駐車場は金の卵だ」と強調する。大手からベンチャーがこぞって参入している駐車場。その中で同社はどこに目をつけたのか。

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賃貸物件より手間暇がかかる

「月極駐車場を借りたい人がどこからでも見つけることができる上に契約もオンラインで完結できる。一方で、駐車場を管理する不動産会社の手間も減らせる。可処分時間を増やすことにつながっている」─。

 月極駐車場の検索から申込み、契約、支払いまでをオンラインで完結するサービス「Park Direct(パークダイレクト)」を運営するニーリー代表取締役の佐藤養太氏は語る。

 デジタル化の進展で様々なマッチングサービスが花盛りになっている中、駐車場業界でも駐車場運営大手やベンチャーがコインパーキングや自宅の駐車スペースを時間貸しするためのマッチングサービスを数多く実用化している。

 そんな〝レッドオーシャン〟とも言える駐車場業界。だが、ニーリーは同じ駐車場でも月極駐車場という〝ブルーオーシャン〟で存在感を高めている。実は時間貸し駐車場にITを組み合わせるビジネスは数多く出て来ていたものの、月極駐車場を巡っては優先度が低かった。

 一般的に駐車場を借りるときは、実際の駐車場にまで出向き、そこにある不動産会社の看板を見て電話をする。電話がつながるまでは賃料も分からず、空いているかどうかも分からない。さらに駐車場を借りることができると分かっても、今度は不動産会社に出向き、書類を用意して契約しなければならない。それだけアナログなのだ。

 しかしパークダイレクトを使えば、紙と印鑑が不要になる上に、全ての手続きがオンラインで完結する。個人情報保護の安全性を担保するため、電子契約のシステムは独自で開発。駐車場を「探す」から「借りる」までのオンライン化を実現した。

 佐藤氏は「地方への転勤が決まったサラリーマンが現地に行かなくても便利な場所にある月極駐車場を選び、一度も現地に行かずに契約するケースもある」と話す。さらにコロナも追い風となった。不動産業における非対面のニーズが顕在化されたほか、法整備も進んだからだ。

 一方で不動産管理会社にとってもメリットがある。家を借りる契約も駐車場法下の駐車場の契約も、違いは宅建業法上の重要説明事項があるかないかだけ。基本的に業務負荷は同じだ。そこでパークダイレクトが介在することによって、駐車場管理業務の約92%を削減することができる上に、駐車場の稼働率を上げて収益貢献を導くことができる。

 全国の月極駐車場は約3000万台。そのうちパークダイレクト掲載台数は約30万台。導入社数やオンライン契約数でトップだが、「まだまだ伸びしろがある」(同)というわけだ。



データビジネスとEV化にも手を打ち始める

 そもそも月極駐車場をどう見つけてきたのか。パークダイレクトを始めた2019年当初は、ニーリーの社員が不動産管理会社を訪問し、1件ずつ契約を取り付ける泥臭い作業が続いた。次第に導入数が増えていくと、口コミで評判が広がった。

「不動産管理会社からすれば、しっかり稼働させなければオーナーから信頼を失いかねない。決して疎かにはできない部分だったが、賃貸物件に比べると売り上げも低く、効率も悪い。それがパークダイレクトの導入で稼働率が上がったことにより今では自然と問い合わせがくる」

 パークダイレクト上の借主による決済金額も22年は前年比470%を記録。SBIインベストメントや三菱UFJキャピタルなどから資金調達を実施し、様々な企業からも声がかかる。その代表格がトヨタ自動車だ。

 法人車両をリースするトヨタからすれば、法人車両を必要とする顧客に車両の調達のみならず、駐車場の手配・管理までをセットにしてワンストップで提供することができるからだ。トヨタにとっては駐車場もセットで提供できるため付加価値がつく。「トヨタさんから声がかかった」(同)ほどだ。

 そして佐藤氏が今後見据えるのが駐車場に関するデータを活用したビジネスだ。「駐車場を入口とした自動車の情報を活用することで、例えば自動車に関連する広告を自動車の保有者に届けることができる」(同)。

 既に全国でフィットネスクラブを運営する業界大手の「コナミスポーツクラブ」とタイアップ企画を実施。パークダイレクトの利用者・導入済み不動産会社の従業員限定で、同施設を無料で体験することができる。コナミからすれば新規顧客の獲得が期待されるわけだ。


佐藤養太・ニーリー代表取締役

 もう1つが電気自動車(EV)だ。EVは充電に時間がかかることが弱点として挙げられる。また、充電場所も少ない。「駐車場のEV用充電スタンドの設置やサブスクリプションで利用できる仕組みなどを整えていきたい」と佐藤氏。新明和工業が管理する千葉県千葉市の駐車場にEV充電器を設置し、利用状況などを検証する実験を実施中だ。

 そんな佐藤氏は大学卒業後、金融機関向けシステム開発会社のシンプレクス・テクノロジー(当時、現シンプレクス)、GMOクラウド(同、現GMOグローバルサイン・ホールディングス)などを経て13年にニーリーを設立。「大手企業の新規事業創出やDX戦略などの開発を手掛けてきた」(同)。その過程で月極駐車場にまつわる課題を見つけた。

 選択肢の数と幅を増やしていくことを「社会の解像度を上げる」と語る佐藤氏は駐車場を「金の卵」と表現する。その卵をふ化させることができるかどうか。ニーリーの腕が試される。

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