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「政府は『デフレ脱却宣言』に慎重姿勢崩さず」みずほ証券・上野泰也氏の見方

財界オンライン 2023年10月5日 7時0分

岸田文雄首相は1月27日の参院本会議で「デフレではない状況が継続している」と述べて、政府の公式見解を確認した。だが、デフレ脱却宣言はまだ出せない。「逆戻りする見込みがないと判断できる段階ではない」からである。

 政府がデフレ脱却宣言をなかなか出さないことについては、朝日新聞が8月15日朝刊で詳しく報じていた。判断基準である4つの指標の直近データを、この記事より後に発表されたGDP(国内総生産)1次速報を含めて確認すると、以下のようになる。

(1)消費者物価指数 ~ 総合 前年同月比+3.3%(6月)

(2)GDPデフレーター ~ 前年同期比+3.4%(4︱6月期)

(3)単位労働コスト ~ 前年同期比+0.7%(4︱6月期)

(4)GDPギャップ ~ ▲0.7%(1︱3月期)

 内閣府推計の1︱3月期のGDPギャップは、金額で実質年率換算4兆円程度の需要不足とされている。4︱6月期の実質GDPが1次速報で強い結果になったことに鑑みると、GDPギャップが19年7︱9月期以来のプラスに転じた可能性がある。

 だが、判断基準となる4つの指標が仮に、4︱6月期にすべてプラスになったとしても、その状況に持続性は伴っているのかという点が問題になってくる。なぜなら、政府(内閣府)は2006年3月、デフレ脱却を「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」と定義したからである。

 上記の記事には、「デフレに後戻りしない」ことを見きわめなければならないのが「相当にハードルが高い」との内閣府幹部のコメントがあった。賃金の高い伸びが続くのかを見きわめなければ「デフレ脱却を統計的に裏付けできない」(内閣府の担当者)という。

「脱却宣言したらマーケットに影響を与えるし、かといって、いつまでも出さなければ必要な政策の判断が遅れてしまう。出すのはとても勇気がいる」との政府幹部コメントもあった。

 政府が「デフレ脱却宣言」に踏み切れば、日銀は金融政策の正常化に動きやすくなる。だが、日銀が「物価安定の目標」2%実現は「持続的・安定的」でなければならないとして、クリアすべきハードルを自ら高めに設定しているのと同様、政府もデフレ脱却宣言を出すための条件を厳しくしている。

 また、政治の視点からは、物価高によって国民の暮らし向きが悪化して大きな問題になっている状況で、政府がデフレ脱却を宣言することが、そう遠くないとみられる衆院選に向けて与党への追い風になるのだろうかという点も、よく考える必要がある。SNSで「物価高で苦しんでいるのに場違いだ」といった厳しい反発が、おそらく挙がるだろう。

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