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大原啓一・日本資産運用基盤社長の訴え「資産運用は成長産業、問われるのは業界のリテラシー」

財界オンライン 2023年10月31日 11時30分

当社は、資産運用サービスを手がける金融機関に対するコンサルティングや業務代行による支援を行っている会社です。

 私は大学卒業後に野村資本市場研究所に入社したのですが、その最初の研究テーマとして接したのが欧米の資産運用業界の調査研究でした。この時、成熟国である日本にとって必要になる産業であり、生活者である我々自身にとっても重要であろうと考えて、この世界に飛び込んだというのが私の原点です。

 それから20年ほどが経ちますが、今まさに私が当時感じた通り、重要な産業となっていることを痛切に感じています。

 個人の観点で言えば長寿高齢化で生きる期間が長くなっていますし、核家族化によって親は子供に面倒を見てもらえるかわからず、自分で自分の身を守らなければいけない時代です。

 さらに今後、日本もインフレに向かうとすれば、ますます資産運用、資産活用が重要になってきますから資産運用業は成長産業になっていくものと考えています。その意味で資産運用の仕事に携わっていてよかったなと実感していますし、やればやるほど好きになる仕事です。

 一方で感じるのは、欧米に比べて「リテラシー」が高くないということです。ここで私が言いたいのは一般の方々ではなく、業界人のリテラシーが高くないのではないかということです。

 最近も、地域金融機関による「仕組み債」の不適切販売や、資産運用会社による商品の乱造といった問題が起きていますが、業界の側で「資産運用」と「投資」の区別がついていないことによって起きていることだと考えています。

 主要な金融機能として、大きくは「資金移転」(決済)、「資金供与」(融資)、「リスク移転」(保険)、「資産運用」という4つが挙げられます。共通しているのは、人の経済活動を補助する役割があることです。

 その中で「資産運用」は、将来いつかの時点で使うお金を確保するために、現在の資金やキャッシュフローをマネージしていくものです。

 それに対して「投資」は経済活動に紐づかず、何がしかのリターンを求めて資金を投じるものです。金融機能の派生であり、資産運用に包含される面はあるものの、似て非なるものです。

 投資だけを重視すると、利回りの高い商品の販売につながってしまいますが、そうではなく将来に備えるために何をすればいいか、その方法、プランを提供する資産運用が求められているのです。

 例えば、東京から大阪まで行くためには陸路、空路も含め様々な方法があります。その人が望む時間に到着できるようにサポートする、さらには交通状況によっては他のルートを案内する、それが資産運用サービスだと思うのです。まさに、このサポートこそが資産運用サービスですが、今の日本では残念ながら商品ありきになってしまっています。

 今後、金融業界がきちんとした資産運用サービスを提供していくならば、お客様が将来達成したい人生のゴールに合わせた資産管理の方法を提案する「ゴールベースアプローチ」を行うために、現在の資産運用会社、銀行、証券会社それぞれの役割分担を見直す必要があります。

 当社は「ゴールベースアプローチ」に必要なシステム、事務のインフラを金融機関に提供しています。この役割を果たし続けることで、日本に真の意味での資産運用サービスが根付くためのお手伝いをしていきたいと考えています。

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