「知恵と経験が豊富な日本のシニアのスキルをもっと世界に役立てたい」─。そう語るのはHelte社長・後藤学氏。引退後の経験豊富な日本のシニアと海外若者をつなぐ─というプラットフォームを運営。日本のすばらしさを海外の若者に伝えたいという後藤氏の内外交流哲学とは。
海外との交流の中でみつけたビジネスの視点
─ 後藤さんは世界の人々をつなぐ仕事をされていますね、具体的な仕事の中身は?
後藤 日本のことが好きな海外の若者と、日本のアクティブシニア(定年退職後の高齢者)をつなげるプラットフォームを運営しています。
─ なぜその両者をつなげようと?
後藤 幼少期からの経験がきっかけです。母親がフリーランスのカメラマンをしていて、主に海外で活動をしていたことから、海外に自然と興味を持っていました。大学では1年間アメリカのワシントン州立大学に行き、その後そのままインドのゴア大学というところに1年間行きました。
─ インドでの生活は大変ではなかったですか。
後藤 大変でしたね。寮では生活インフラみたいなものも通っていないし、シャワーからは茶色い水が出て、停電やら食が合わないやら毎日何かしら問題が起こります。殺伐とした環境の中で、クーラーもない寮で1年間生きていると、考えがシャープになってきまして。
そういった極限状態だと、何で人は生きているのだろうとか、日本に生まれるということは、すごく幸せなことなのだということを強く感じた1年でした。
─ そういったことを経験して海外の人と日本をつなぐ仕事をしようと思ったのですね。
後藤 ええ。帰国して就活後もお金を貯めて30カ国に貧乏旅行をしていました。
東南アジアを周っている時に、「この橋は日本人が造ったんだよ」「このダムは日本人が造ったんだよ。いつか日本に行きたい。日本語を勉強したい」という若者と交流することができて、わたしも将来日本と海外をつなげるような大人になりたいと感じました。
新卒ではNTTに入社したのですが、1年間で辞め事業にチャレンジすることにしました。
─ そのビジネスモデルの中身は?
後藤 サブスクリプションのモデルで、要は会員制です。会員は海外側が3万3千人で、日本側が1万2千人です。会費は海外の1人当たりのGDPに応じて金額を変えています。ドイツなどの先進国だと14.9ドル。ミャンマーなどの新興国では4.9ドル。新興国の人たちは安価に設定しています。
─ そもそもこの仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
後藤 あるフロリダ州に住むアメリカ人のシニア女性と、スカイプを通じて話したのがきっかけです。彼女の人生経験や、南部白人の女性から見た歴史の動きなど当時の思いや、今どんなことを思っているかを伝えてくださって、わたしにとって大変有意義で心温まる時間でした。
その女性も若者と会話をすることが楽しいと喜んでくれたので、高齢化が進む日本で逆バージョンというのがあっても面白いんじゃないかなと。
─ 両者にとって良いことがあると。この事業で感じるやりがいとは?
後藤 先日、会員さんがいた介護施設から電話があり、ご子息がわたしと話したいと連絡がきたのです。
その亡くなられた方はずっとぜんそくを持っていて、海外旅行はもちろん、日本国内旅行もしたこともありませんでした。でも当社のサービスを通じて最終的に200人以上の人と会話をして、人生最後の期間で外国人とこういった機会を持ててすごく楽しかったと言っていたそうです。本当にいい経験になりましたということを、ご子息の方から言ってもらえました。
─ その方の最後の生き甲斐にも繋がっていたわけですね。
後藤 会員さんの中には日本の有名企業で働いてきたOB、OGの方たちがたくさんいるので、そのスキルのある人たちの経験を伝えることで彼らの役に立てます。
こういったシニアの引退後のスキルを、世界の人たちに役立ててもらいたいと思っています。
交流を通してヘルスケアを
─ 非常に社会的に意義がありますね。
後藤 有難いことにそう言っていただけることが多いです。
例えばトヨタ自動車などの一流会社を引退後、ずっと家でテレビを見ているだけだと認知症が進んでしまいます。そこで誰かと交流をすることで、孤独も減るし、頭を使い話をすることで健康が保てますよね。
日本のシニアが元気になり、経験してきたことが外国人に伝わり、日本に来て働く可能性が増える。それこそ本当の持続可能性であり、循環型だと思っています。
─ これからの超高齢化社会のヘルスケアサービスですね。
後藤 はい。シニアの人からすると、外国人と話をするというエンタメとして参加しますが、裏側でうつやストレス、認知症など全部の情報が出ます。
望めばその情報を提供もできますし、それを保険会社や製薬会社で解析データとして活用もできます。
2025年には認知症患者が700万人にものぼり、5人に1人がなる病気と言われているというのを、日本社会全体で支えていく必要があると考えます。
それに備えて、いま自治体も含めて15団体と提携しています。神奈川県では未病というテーマを掲げている黒岩県知事が積極的に応援してくださったりと、今後企業だけではなく自治体とも連携協定を増やしていきたいと考えています。
海外との交流の中でみつけたビジネスの視点
─ 後藤さんは世界の人々をつなぐ仕事をされていますね、具体的な仕事の中身は?
後藤 日本のことが好きな海外の若者と、日本のアクティブシニア(定年退職後の高齢者)をつなげるプラットフォームを運営しています。
─ なぜその両者をつなげようと?
後藤 幼少期からの経験がきっかけです。母親がフリーランスのカメラマンをしていて、主に海外で活動をしていたことから、海外に自然と興味を持っていました。大学では1年間アメリカのワシントン州立大学に行き、その後そのままインドのゴア大学というところに1年間行きました。
─ インドでの生活は大変ではなかったですか。
後藤 大変でしたね。寮では生活インフラみたいなものも通っていないし、シャワーからは茶色い水が出て、停電やら食が合わないやら毎日何かしら問題が起こります。殺伐とした環境の中で、クーラーもない寮で1年間生きていると、考えがシャープになってきまして。
そういった極限状態だと、何で人は生きているのだろうとか、日本に生まれるということは、すごく幸せなことなのだということを強く感じた1年でした。
─ そういったことを経験して海外の人と日本をつなぐ仕事をしようと思ったのですね。
後藤 ええ。帰国して就活後もお金を貯めて30カ国に貧乏旅行をしていました。
東南アジアを周っている時に、「この橋は日本人が造ったんだよ」「このダムは日本人が造ったんだよ。いつか日本に行きたい。日本語を勉強したい」という若者と交流することができて、わたしも将来日本と海外をつなげるような大人になりたいと感じました。
新卒ではNTTに入社したのですが、1年間で辞め事業にチャレンジすることにしました。
─ そのビジネスモデルの中身は?
後藤 サブスクリプションのモデルで、要は会員制です。会員は海外側が3万3千人で、日本側が1万2千人です。会費は海外の1人当たりのGDPに応じて金額を変えています。ドイツなどの先進国だと14.9ドル。ミャンマーなどの新興国では4.9ドル。新興国の人たちは安価に設定しています。
─ そもそもこの仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
後藤 あるフロリダ州に住むアメリカ人のシニア女性と、スカイプを通じて話したのがきっかけです。彼女の人生経験や、南部白人の女性から見た歴史の動きなど当時の思いや、今どんなことを思っているかを伝えてくださって、わたしにとって大変有意義で心温まる時間でした。
その女性も若者と会話をすることが楽しいと喜んでくれたので、高齢化が進む日本で逆バージョンというのがあっても面白いんじゃないかなと。
─ 両者にとって良いことがあると。この事業で感じるやりがいとは?
後藤 先日、会員さんがいた介護施設から電話があり、ご子息がわたしと話したいと連絡がきたのです。
その亡くなられた方はずっとぜんそくを持っていて、海外旅行はもちろん、日本国内旅行もしたこともありませんでした。でも当社のサービスを通じて最終的に200人以上の人と会話をして、人生最後の期間で外国人とこういった機会を持ててすごく楽しかったと言っていたそうです。本当にいい経験になりましたということを、ご子息の方から言ってもらえました。
─ その方の最後の生き甲斐にも繋がっていたわけですね。
後藤 会員さんの中には日本の有名企業で働いてきたOB、OGの方たちがたくさんいるので、そのスキルのある人たちの経験を伝えることで彼らの役に立てます。
こういったシニアの引退後のスキルを、世界の人たちに役立ててもらいたいと思っています。
交流を通してヘルスケアを
─ 非常に社会的に意義がありますね。
後藤 有難いことにそう言っていただけることが多いです。
例えばトヨタ自動車などの一流会社を引退後、ずっと家でテレビを見ているだけだと認知症が進んでしまいます。そこで誰かと交流をすることで、孤独も減るし、頭を使い話をすることで健康が保てますよね。
日本のシニアが元気になり、経験してきたことが外国人に伝わり、日本に来て働く可能性が増える。それこそ本当の持続可能性であり、循環型だと思っています。
─ これからの超高齢化社会のヘルスケアサービスですね。
後藤 はい。シニアの人からすると、外国人と話をするというエンタメとして参加しますが、裏側でうつやストレス、認知症など全部の情報が出ます。
望めばその情報を提供もできますし、それを保険会社や製薬会社で解析データとして活用もできます。
2025年には認知症患者が700万人にものぼり、5人に1人がなる病気と言われているというのを、日本社会全体で支えていく必要があると考えます。
それに備えて、いま自治体も含めて15団体と提携しています。神奈川県では未病というテーマを掲げている黒岩県知事が積極的に応援してくださったりと、今後企業だけではなく自治体とも連携協定を増やしていきたいと考えています。