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「NTT法」見直し論議進む中、問われる日本の通信インフラ

財界オンライン 2023年10月31日 15時0分

公平性確保と国際競争力向上の両立をどう図っていくか?

「NTT法の役割は、おおむね完遂した。結果として廃止につながる」と語るのは、NTT社長の島田明氏。

 NTT法は、NTTの前身である日本電信電話公社の民営化に伴って1984年に制定された。同法は全国一律の固定電話サービスや研究成果の開示義務などをNTTに課している。だが、NTTが固定電話を主体に事業展開していた40年前とは異なり、現在は多様な事業者が携帯通信を手がける時代になった。IT分野の国際競争も激化するなど、通信業界を取り巻く環境は大きく変化している。

 NTTはこうした状況を踏まえ、固定電話関連の義務を電気通信事業法に統合すべきだと主張。研究開発成果の開示義務については、経済安全保障や国際競争力強化の支障になるため撤廃すべきだとした。従来、機密保持ができるかを懸念して、NTTとの共同研究に二の足を踏む企業や団体もあったという。

 ただ、一連のNTTの主張に競合他社は反発を強める。NTTがNTT東日本、NTT西日本などと合併して肥大化すれば、事業が圧迫されることを懸念しているからだ。

 KDDI社長の高橋誠氏は「廃止を強引に決めるのは世論を無視する形になり、問題だ」とけん制する。同社やソフトバンク、全国のケーブルテレビ事業者など、計180社・団体は、NTT法の廃止に反対する要望書を自民党と総務省に提出。電電公社由来の設備を引き継ぐNTTとの公正な競争環境を整備する観点から、より慎重な政策議論を行うべきだとした。

 NTT法のあり方を検討する自民党のプロジェクトチームは11月中にも政府への提言をまとめる方針だが、NTTと競合他社の対立が激化する中、着地点は見通しにくい。

 NTT法見直しの議論が始まったのは、増加が見込まれる防衛費の財源を確保する観点で政府の持つNTT株を売却する案が浮上したことがきっかけ。

 結論を急ぐことで、通信業界の混乱が増す可能性も否定できない。通信環境が年々進化していく中で、国内の公平性確保とNTTの国際競争力向上の両立に向け、今後も議論が必要だ。

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