長期金利安定と円安リスクの軽減も背負い…
日本銀行(植田和男総裁)は10月末の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を再び修正した。1.0%を「メド」として運用を柔軟化し、それを超える金利水準も一定程度は容認する方針。
米長期金利の高まりを背景に債券市場で10年物日本国債の流通利回りが約10年ぶりの高水準である0.9%台半ばまで上昇。一方で為替の円安進行が止まらず、金融政策の修正を催促する市場の圧力に抗い切れなかった形だ。
今回政策を見直さなければ、日銀は1.0%の上限を死守するため、毎営業日に「連続指し値オペ」などで大量の10年物国債を買い入れる必要があった。そうなれば、日銀のバランスシートは一段と膨らみ、財務リスクが高まるほか、債券市場の機能を一層歪める懸念があった。
さらに、外国為替市場で1ドル=150円台を付けていた円安の進行に歯止めがかからなくなる恐れもあった。一段の円安はエネルギーや食料品などの輸入コスト増により物価高を助長し、岸田文雄政権が策定中の物価高対策の効果を損ねるリスクがある。
YCCの再修正は窮余の策だが、それでも日銀が長期金利の安定と円安リスクの軽減というアンビバレンツな要請に板挟みとなる状況は変わらない。
ともかく、市場関係者は、日銀の今回の動きを「金融政策の正常化に向けた大きな一歩」と見なしつつある。
現状の日銀の見通しでも、22年度の実績(3%)を含め24年度まで3年連続で2%の物価目標を上回る環境にある中、市場で早期のマイナス金利解除観測が高まるのは確実だ。
ただ、日銀幹部は「マイナス金利の解除自体はそれほど難しくない。問題はその後だ」と打ち明ける。プラス金利への転換を焦れば、変動型が多い住宅ローンや企業の運転資金調達の金利にも波及し、景気を冷え込ませるリスクがあるからだ。
YCCの形骸化が進む中、今後はマイナス金利がいつ解除されるかに市場の注目が集まるのは必至。金融政策運営の先行きは一層険しくなっている。
日本銀行(植田和男総裁)は10月末の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を再び修正した。1.0%を「メド」として運用を柔軟化し、それを超える金利水準も一定程度は容認する方針。
米長期金利の高まりを背景に債券市場で10年物日本国債の流通利回りが約10年ぶりの高水準である0.9%台半ばまで上昇。一方で為替の円安進行が止まらず、金融政策の修正を催促する市場の圧力に抗い切れなかった形だ。
今回政策を見直さなければ、日銀は1.0%の上限を死守するため、毎営業日に「連続指し値オペ」などで大量の10年物国債を買い入れる必要があった。そうなれば、日銀のバランスシートは一段と膨らみ、財務リスクが高まるほか、債券市場の機能を一層歪める懸念があった。
さらに、外国為替市場で1ドル=150円台を付けていた円安の進行に歯止めがかからなくなる恐れもあった。一段の円安はエネルギーや食料品などの輸入コスト増により物価高を助長し、岸田文雄政権が策定中の物価高対策の効果を損ねるリスクがある。
YCCの再修正は窮余の策だが、それでも日銀が長期金利の安定と円安リスクの軽減というアンビバレンツな要請に板挟みとなる状況は変わらない。
ともかく、市場関係者は、日銀の今回の動きを「金融政策の正常化に向けた大きな一歩」と見なしつつある。
現状の日銀の見通しでも、22年度の実績(3%)を含め24年度まで3年連続で2%の物価目標を上回る環境にある中、市場で早期のマイナス金利解除観測が高まるのは確実だ。
ただ、日銀幹部は「マイナス金利の解除自体はそれほど難しくない。問題はその後だ」と打ち明ける。プラス金利への転換を焦れば、変動型が多い住宅ローンや企業の運転資金調達の金利にも波及し、景気を冷え込ませるリスクがあるからだ。
YCCの形骸化が進む中、今後はマイナス金利がいつ解除されるかに市場の注目が集まるのは必至。金融政策運営の先行きは一層険しくなっている。