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トヨタが上期で過去最高を達成するもEV戦略は正念場が続く

財界オンライン 2023年11月21日 11時30分

「世界中のお客様に感謝しなければならない数字」─。2023年4―9月期連結決算の数値について、トヨタ自動車副社長の宮崎洋一氏はこう語る。

トヨタもテスラ充電規格を採用へ EVの今後の主導権は?

 売上高と全利益段階で上期として過去最高を更新したトヨタ。他社に比べて日本、北米、欧州、中国など販売する地域に偏りがなく、地域のニーズに合った新車を投入できたことが大きい。24年3月期の連結業績予想でも営業利益を従来の3兆円から4兆5000億円に引き上げた。

 円安が1兆1800億円押し上げる形となるが、値引きせずに海外で販売できる車種が揃っていることが背景にある。商品力強化と地域に最適な車種、新機能による付加価値向上により、車両価格の引き上げにも顧客が追従。販売や収益が伸びている。

 通期の販売台数を1010万台と見込むため、単純に計算すると1台当たり営業利益は約45万円。中でも同社が得意とするハイブリッド車(HV)の原価は当初の6分の1まで低下。さらに外部から充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)も「HVとほぼ変わらない」(経理本部本部長の山本正裕氏)水準にまで下げている。

 一方で値引き競争が激化して各社が苦戦している中国では「(電動車の)総数をまず確保したい。価格競争に巻き込まれない一つの方策でもある」(宮崎氏)として、電気自動車(EV)だけでなくHVでの台数にも力を入れることを宣言。中国向けが大半を占めるEVの24年3月期の販売台数見通しも、これまで公表していた20万超を下方修正し、12.3万台とした。

 トヨタの稼ぐ力が向上したとしても米テスラはEVだけを販売して1兆円規模の営業利益を予想する。宮崎氏も「(EVの)『bZ4X』を中心に改良の余地がある」と語るなど、今後主戦場となるEVでもテスラと張り合える収益力を上げられるかどうかが勝負所となる。

 また、トヨタが強いタイなどの東南アジアなどでは中国のEVメーカーが輸出を加速して存在感を高めている。足元の業績が好調でも26年までに投入する次世代EVの収益性も求められるだけに、同社の正念場は続くことになる。

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