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独自商品開発で新市場開拓 理研ビタミン社長・山木一彦の高付加価値化戦略

財界オンライン 2024年1月26日 11時30分

「とにかく新しいことをしなければ─」。そう話すのは理研ビタミン山木社長。物価高に賃金アップが追いつかず、消費者の間では安価なPB(小売業者発のプライベートブランド)が人気。NB(ナショナルブランド)が押されがちの中、「選ばれるNBを作り続けたい」と山木氏。同社の利益は8割が食品改良剤を占めるが、それ以外の分野でもヒット商品を開発する、同社独自の発想とは─。


人口減での競争下ふりかけにみる差別化

 帝国データバンクによると、2024年1月~4月までの食品値上げ予定品目数は11月末時点で1596品目となり、22年同月時点と比べて8割減のペースで推移。値上げラッシュは24年春に収束傾向との見通しがでた。値上げ疲れの消費者の心を掴むため、現在食品業界各社は値上げに見合うリニューアル等を行い、商品力を高める努力の最中である。

 そんな中、価格戦争には巻き込まれず、市場価格の3倍でも売れている理研ビタミンの『ふりかけるザクザクわかめ』に注目したい。2022年9月に発売した同商品は、発売から1年で300万袋を突破し、幅広い世代に支持を受けている。

 100円前後で売られているものが多いふりかけ売場で、同商品は300円ほどの高単価。それでも、同シリーズの韓国風ごま油風味も、発売後2カ月で年間売上目標を達成。値上げは現時点ではしていない。

「一般的にふりかけ購入者は子育て世代の40代女性が多いが、この商品は50代以降の男女の購入率が高いことから、大人が自分のために購入しているのでは」と同社は分析。

 同商品の特徴は、一般的なふりかけとは異なり、独自製法による乾燥わかめを使用したザクザクした食感。ここに理研ビタミンの技術力が眠る。わかめを一枚一枚バラバラにしながら極限まで乾燥させ、硬すぎずもろすぎない食感を出すため100回以上試作を行った。

 ご飯のお供だけでなく、サラダや豆腐など、他の食材と組み合わせて使用することができる。ジャンルはふりかけだが、ご飯にかけるふりかけ以外にも使用できるという付加価値が、消費者支持の理由である。理研ビタミン社長の山木一彦氏は「人口減での競争の中、商品を売っていくには差別化しか生き残る術はない」と語った。


独自の新市場開拓手法

「市場カテゴリーから少しずらした商品を開発し、それを自分の土俵とするのがわれわれの戦略」と山木氏は話す。

 1989年に発売した『青じそドレッシング』も、この「市場カテゴリーからずらす」という戦略で成功した事例。

 ドレッシング市場に、ノンオイルという市場を新たに創出したのがこの商品である。現在売場には他社参入によりノンオイルドレッシングは数多く並ぶが、発売以来、同商品は領域内トップシェアを維持。価格は当時約150円が相場の中、50円高い200円であったが、発売初年から爆発的に売れた。

 当時、ドレッシングは油と酢を使用するのが常識であったが、食材によっては油がないほうが美味しく食べられるものがあることを発見し、その後ノンオイルジャンルでの開発を進めた。

 2023年8月発売の『インドカレー屋さんの謎ドレッシング』も他社との明らかな差別化によってヒットした成功例。インド料理屋では誰しも口にしたことのあるオレンジのドレッシングは一般名称がなく、まだドレッシングメーカーが誰も手をつけていない味の商品であった。

 当たり前を疑う─。安いから売れる、高いから売れないという概念から脱し、既存の市場の掘り起こしに注力する同社。社員には科学と化学の研究者が多く、他が思いつかない開発力に、過去には他社から〝危険ビタミン〟と言われていたことも。山木氏は「とにかく新しいことをしなければ。忖度なしの野性味を取り戻そう」と社員に投げかけている。


本業は食品改良剤

 同社の母体は理化学研究所であり、1949年魚の内臓からビタミンAを抽出するベンチャー企業として出発。売上高は2023年3月期で887億円、食品改良剤販売をメインとしたBtoB(企業対企業)事業が売上8割を占める。

 先述したふりかけやドレッシングなどの家庭向食品は全体の14%ほどしかないが、商品力が高く消費者の認知度は高い。

 食品改良剤とはいわゆる食品添加物。例えば、コンビニで販売されている調理麺をいつ食べてもほぐれるようにすることや、パンのふわふわ感を保ったり、バイキングに並ぶ春巻きを揚げたての食感を保つためにも、この改良剤が欠かせない。

 縁の下の力持ち─。現在多くの食品メーカーの商品には、同社の改良剤が含まれている。「われわれの商品は地味だが、恐らくすべての日本人が、必ず毎日うちの食品改良剤を口にしている。今後は海外の改良剤市場開拓を行っていくため、人材採用を進めているところです」と山木氏は海外展開強化に意欲を燃やす。高付加価値の改良・改革が今日も進む。

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