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【ずいひつ】カケハシ・中川貴史代表取締役CEOが語る「薬局DXの推進で患者と医療の〝架け橋〟に」

財界オンライン 2024年1月7日 11時30分

コロナ禍を経て、薬局経営も変革を求められています。全国で薬局は6万店舗あり、コンビニエンスストアよりも多いと言われています。しかも、そのうちの半分近くが1~2店舗を展開する家族経営の個店といったイメージです。

 国は薬局の役割を対物から対人へと変えていこうとしています。薬剤師の価値の源泉は、今までは薬を渡す、薬を正しく提供することにありましたが、今後は患者さんが正しく薬学的な専門の治療を受けられるように治療を支援することに置かれているのです。そのため、今後ますます薬局のデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められるようになりました。

 そんな中で当社の薬局体験アシスタント「Musubi(ムスビ)」が大きな役割を果たしています。ムスビは患者さんに画面を見せながら話をすると、裏で自動的に薬歴の下書きを作成します。同時に、ムスビには、服用している薬や生活習慣などを基に、患者さんに個別最適化された健康アドバイスを提示する機能も兼ね備えており、患者さんとのコミュニケーションツールとしても使えます。

 ムスビでは服薬指導にイラストを使ったり、患者さんが薬の内容を理解したかどうかをチェックする画面があるのですが、面白い事例では、イラスト付きで服薬の指導をした場合と、口頭だけで指導した場合とでは、継続的に患者さんが薬を服用する割合が20%近く変わってくるのです。大きな成果です。

 例えば、生活習慣病と言われている高脂血症や糖尿病、高血圧は日常生活に支障を来すような症状が出ません。痛みや発熱などがあると薬を飲みますが、症状が出ないと薬を飲むこと自体が面倒くさくなってしまうのです。結果、患者さんが自己判断で治療を中断してしまう。治療を開始してから半年以内に60~80%が治療を中断してしまうと言われています。

 治療を中断して、そのまま放っておけば重症化し、透析になったり、最悪の場合は足を切断しなければならなくなったりします。治療費ももっとかかりますし、家族にとっても不幸です。やはり軽度な段階から治療を継続することが何よりも重要になります。そこで当社は来局しなくなった患者さんを可視化し、薬剤師がフォローできる仕組みも提供しています。

 こう考えると、薬局や薬剤師は今後の日本の医療を改善させていくために、大きな潜在力を持っていると言えます。ところがこれまでの薬局のビジネスモデルは立地に依存するケースが多く、病院やクリニックの近くにある〝門前薬局〟として、患者さんが持ってきた処方箋に対応することに重点が置かれていました。しかし、今後は、一度来た患者さんに、いかに治療を継続してもらい、ロイヤルカスタマーになってもらうかという経営の視点が求められます。

 患者さんと医療をつなげる、医療と医療をつなげる─。このミッションは「架け橋」という当社の社名にもつながるものです。国がオンライン資格確認や電子処方箋を進めていますが、全てを国がカバーできるわけではありません。国ではカバーしきれない要素や医療機関同士の連携だったり、医療従事者同士の連携を我々のような民間プレイヤーが加速させていくことが重要だと思っています。

 当社には「医療を良くしたい」「社会を良くしたい」というパッションを持った人材がたくさんいます。そんな力を少しでも医療の課題解決に向けて活用していくことができればと努力しているところです。

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