農林水産省は、2023年の農林水産物・食品の輸出額が1兆4547億円になったと公表した。
東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出に絡み、中国が8月に日本産水産物を全面禁輸した影響で前年割れが懸念されていたが、前年比2.9%のプラスを確保。最大の輸出先である中国の減速で、前年のフタ桁の伸び率から大幅に鈍化したものの、11年連続で過去最高を更新した。
ただ、前年比プラスを維持できたのは、好調だった上半期(1~6月)の「貯金」で何とか持ちこたえたにすぎず、下半期(7~12月)だけでみると、前年同期比2.9%減だった。前年割れの回避に、省内からは「ほっとした」(幹部)と安堵の声が漏れる。
中国への輸出額は、通年で前年比14.6%減の2376億円、このうち水産物は29.9%減の610億円に落ち込んだ。さらに品目別では、冷凍ホタテが44.6%減の259億円と打撃が深刻だ。農林水産物・食品の輸出額を25年に2兆円、30年に5兆円に拡大する政府目標の達成に向けて、24年は正念場を迎える。
一方で明るい兆しもある。対中輸出依存度が高かったホタテだが、米国への輸出は9~12月に前年同期比で倍増した。中国の加工施設で殻むきしてから米国に輸出されていたホタテの一部が米国に直接向かったとみられる。中国に代わる加工中継地として期待されているベトナムへの輸出も大幅に増加しているという。
日本貿易振興機構(ジェトロ)などは1月、まずベトナムに米国への輸出が可能な加工施設との商談に向けた調査団を派遣した。メキシコでも米国への販売網とセットで代替加工施設の開拓に乗り出す。
中国による禁輸措置の解除は見通せない中、農林水産物・食品の輸出が再び拡大軌道に戻ることができるかは「中国依存からの脱却がカギ」(別の農水省幹部)と言えそうだ。
BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎が直言「個人消費低迷の真犯人」
東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出に絡み、中国が8月に日本産水産物を全面禁輸した影響で前年割れが懸念されていたが、前年比2.9%のプラスを確保。最大の輸出先である中国の減速で、前年のフタ桁の伸び率から大幅に鈍化したものの、11年連続で過去最高を更新した。
ただ、前年比プラスを維持できたのは、好調だった上半期(1~6月)の「貯金」で何とか持ちこたえたにすぎず、下半期(7~12月)だけでみると、前年同期比2.9%減だった。前年割れの回避に、省内からは「ほっとした」(幹部)と安堵の声が漏れる。
中国への輸出額は、通年で前年比14.6%減の2376億円、このうち水産物は29.9%減の610億円に落ち込んだ。さらに品目別では、冷凍ホタテが44.6%減の259億円と打撃が深刻だ。農林水産物・食品の輸出額を25年に2兆円、30年に5兆円に拡大する政府目標の達成に向けて、24年は正念場を迎える。
一方で明るい兆しもある。対中輸出依存度が高かったホタテだが、米国への輸出は9~12月に前年同期比で倍増した。中国の加工施設で殻むきしてから米国に輸出されていたホタテの一部が米国に直接向かったとみられる。中国に代わる加工中継地として期待されているベトナムへの輸出も大幅に増加しているという。
日本貿易振興機構(ジェトロ)などは1月、まずベトナムに米国への輸出が可能な加工施設との商談に向けた調査団を派遣した。メキシコでも米国への販売網とセットで代替加工施設の開拓に乗り出す。
中国による禁輸措置の解除は見通せない中、農林水産物・食品の輸出が再び拡大軌道に戻ることができるかは「中国依存からの脱却がカギ」(別の農水省幹部)と言えそうだ。
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