日本の存在感の向上へ
「日本の存在感が薄い。キャンパス内を見ても、当の米国人のほかには中国系、韓国系の関係者の姿が目立ちましたね」─。
これは、最近、米スタンフォード大学に数カ月滞在した国際関係論を専門とする有力学者の感想。
「世界のどこに行っても、日本人の姿を見ることが少なくなった」とその学者は嘆く。
米国への留学熱もひと頃と比べて、すっかり冷めている。米国留学には金がかかり、それを負担できる人が少なくなっているのも背景にはある。
先のスタンフォード大学でいえば、「年間2000万円ほどの費用がかかります。今、それだけの金を工面できる日本人は少ない」という。
中国は今、経済が低迷し、特に不動産バブル崩壊で、地方自治体の財政が困窮しているといわれる。それでも、米国への留学生が目立つという。
韓国出身の学生に、なぜ米国に留学しに来たのか? とその学者は質問した。
「自分の子どもの頭を鍛えるのが大事だと。親は、たとえ、家を売ってでも、金を工面して留学費用に充てるんだと言っていました。日本の親とはまるっきり子どもの教育に対しての考えが違う。そこには一種の覚悟がありますよ」
件の学者はそう言って、日本と中国、韓国の違いについて語る。
GDP4位転落に思うこと
日本はGDP(国内総生産)世界3位の座から4位へとダウン。日本の2023年の名目GDPは591兆4820億円。これをドル換算すると、日本は4兆2160億ドル。ドイツは4兆4561億ドルで、ドイツに逆転された。
日本は、2010年に中国に抜かれて、2位から3位となり、その13年後にドイツに抜かれて4位に転落という足取り。
〝失われた30年〟で成長力を失った日本の再生をどう図るかという課題である。
日本が敗戦から立ち上がり、1968年(昭和43年)、当時の西ドイツを抜いて、米国に次ぐ自由世界第2位の経済大国になった時、筆者は大学3年であった。
当時は、ベトナム反戦などで学園は荒れぎみであったが、経済面では活気があふれ、トヨタやソニーが海外市場に打って出ようとしていた時であった。
同じ敗戦国である、日本とドイツは2位と3位を占めており、両国民にも高揚感があった。
しかし今回、ドイツは3位になったのに、ドイツ国民の間には高揚感がないという。それはなぜか?
日、独は共に課題が…
ドイツはドイツで悩みを抱えている。ドイツはエネルギー面でLNG(液化天然ガス)依存が高く、しかもその大半をロシアからの輸入に依存している。
ロシアのウクライナ侵攻(2022年初め)以降、NATO(北大西洋条約機構)のリーダー国として、ドイツはウクライナ支援のため、ロシアと対峙。ロシアは嫌がらせでLNG供給を絞り、ドイツは電力供給などで困窮することになった。
電力費、エネルギー価格をはじめ、モノの値段が上がり、インフレにドイツ国民の悩みも深い。そこへきて、GDPで世界第3位に浮上といわれても、「生活は厳しいし、実感がない」というのがドイツ国民の大方の反応である。
日本も、2024年(令和6年)を迎え、官民挙げて、「日本再生へ向け、賃金を上げ、所得向上を図り、経済の好循環をつくろう」という声があがる。
その日本再生には何が必要か?
日本を魅力ある国に!
国と企業、そして国民(個人)が三位一体となって、国の基本軸というか、国のビジョンをしっかり構築する時ではないだろうか?
本誌前号(2月28日号)では、三菱商事社長・中西勝也さんが〝グローバル経営と日本再生の両立〟について語っておられた。
本誌では、『新産業創出で日本の未来創造を』というタイトルでレポートしたが、中西さんは『新産業創出×地域創生』を標語にして、ソリューションを提案していきたいと語っておられる。
企業はバブル崩壊(1990年代初め)後、生き抜くために海外進出を推し進めてきた。いわゆる経営のグローバル化である。
海外で投資を進め、それで成長してきたのだが、海外であげた利益はまた海外での再投資に振り向けられ、なかなか日本に還流してこなかった。
日本は人口減、少子化・高齢化で、経済は停滞。企業は次の成長機会を狙って、グローバル投資に向かう。これは理にかなった行為。
しかし、国全体で見れば、成長がストップしたまま、国民の賃金は上がらず、消費も低迷し、日本国内では〝安値原理主義〟が蔓延し、付加価値の低い企業活動となっていった。
これを改め、いかに生産性を上げ、日本を魅力ある投資先にするかは、日本のこれからのまさに国家的課題。
共存共栄の理念
三菱商事・中西さんは、「三菱商事はグローバル企業ですが、日本に本社を置く企業として、日本が再び成長し、活力のある国になることに貢献していきたい」という心情を吐露されている。
Global is local, Local is global.─。グローバル視点で生き抜き、行動するが、常にその地域社会との共存共栄を図っていくということ。
こうした考えや理念を持つ企業に人は参集する。
日本の生産年齢人口(15歳―64歳)は現在、7479万人強(2023年1月時点)。これが2065年には約4500万人と3000万人近く減少する見通し。
このマイナス環境の中で、生産性を上げるには、何のために生き、何のために働くのかという基本に立ち返ることが不可欠。そういった意味でもリーダーには使命感と覚悟が必要になってくる。
池田弘さんの志
新潟市を国際都市に─。
新潟を拠点に各種専門学校、大学院大学、専門職大学、高校、学習塾などの教育機関や病院などの医療・福祉機関、さらにはホテル、給食、ソフトウェア、アパレルなど100以上の法人を束ねるNSGグループ会長の池田弘(ひろむ)さん(1949年=昭和24年生まれ)は、故郷・新潟を強く愛し、地元で新事業を次々と起こしておられる。
「わたしどもの理念は、地方新潟を活性化すると。東京集中が進み、若者がほとんど東京に行った。若者がいなくなった街は衰退すると。その若者を地方に残し、若者が未来を夢見るような仕事を起こすようにしていきたい」と池田さん。
日本がアジアのリーディングになる業態に関する大学(院)づくりを進める池田さん。留学生も新潟に集まる。リーダーの志から何事も始まる。新潟に、日本再生のお手本がある。
「日本の存在感が薄い。キャンパス内を見ても、当の米国人のほかには中国系、韓国系の関係者の姿が目立ちましたね」─。
これは、最近、米スタンフォード大学に数カ月滞在した国際関係論を専門とする有力学者の感想。
「世界のどこに行っても、日本人の姿を見ることが少なくなった」とその学者は嘆く。
米国への留学熱もひと頃と比べて、すっかり冷めている。米国留学には金がかかり、それを負担できる人が少なくなっているのも背景にはある。
先のスタンフォード大学でいえば、「年間2000万円ほどの費用がかかります。今、それだけの金を工面できる日本人は少ない」という。
中国は今、経済が低迷し、特に不動産バブル崩壊で、地方自治体の財政が困窮しているといわれる。それでも、米国への留学生が目立つという。
韓国出身の学生に、なぜ米国に留学しに来たのか? とその学者は質問した。
「自分の子どもの頭を鍛えるのが大事だと。親は、たとえ、家を売ってでも、金を工面して留学費用に充てるんだと言っていました。日本の親とはまるっきり子どもの教育に対しての考えが違う。そこには一種の覚悟がありますよ」
件の学者はそう言って、日本と中国、韓国の違いについて語る。
GDP4位転落に思うこと
日本はGDP(国内総生産)世界3位の座から4位へとダウン。日本の2023年の名目GDPは591兆4820億円。これをドル換算すると、日本は4兆2160億ドル。ドイツは4兆4561億ドルで、ドイツに逆転された。
日本は、2010年に中国に抜かれて、2位から3位となり、その13年後にドイツに抜かれて4位に転落という足取り。
〝失われた30年〟で成長力を失った日本の再生をどう図るかという課題である。
日本が敗戦から立ち上がり、1968年(昭和43年)、当時の西ドイツを抜いて、米国に次ぐ自由世界第2位の経済大国になった時、筆者は大学3年であった。
当時は、ベトナム反戦などで学園は荒れぎみであったが、経済面では活気があふれ、トヨタやソニーが海外市場に打って出ようとしていた時であった。
同じ敗戦国である、日本とドイツは2位と3位を占めており、両国民にも高揚感があった。
しかし今回、ドイツは3位になったのに、ドイツ国民の間には高揚感がないという。それはなぜか?
日、独は共に課題が…
ドイツはドイツで悩みを抱えている。ドイツはエネルギー面でLNG(液化天然ガス)依存が高く、しかもその大半をロシアからの輸入に依存している。
ロシアのウクライナ侵攻(2022年初め)以降、NATO(北大西洋条約機構)のリーダー国として、ドイツはウクライナ支援のため、ロシアと対峙。ロシアは嫌がらせでLNG供給を絞り、ドイツは電力供給などで困窮することになった。
電力費、エネルギー価格をはじめ、モノの値段が上がり、インフレにドイツ国民の悩みも深い。そこへきて、GDPで世界第3位に浮上といわれても、「生活は厳しいし、実感がない」というのがドイツ国民の大方の反応である。
日本も、2024年(令和6年)を迎え、官民挙げて、「日本再生へ向け、賃金を上げ、所得向上を図り、経済の好循環をつくろう」という声があがる。
その日本再生には何が必要か?
日本を魅力ある国に!
国と企業、そして国民(個人)が三位一体となって、国の基本軸というか、国のビジョンをしっかり構築する時ではないだろうか?
本誌前号(2月28日号)では、三菱商事社長・中西勝也さんが〝グローバル経営と日本再生の両立〟について語っておられた。
本誌では、『新産業創出で日本の未来創造を』というタイトルでレポートしたが、中西さんは『新産業創出×地域創生』を標語にして、ソリューションを提案していきたいと語っておられる。
企業はバブル崩壊(1990年代初め)後、生き抜くために海外進出を推し進めてきた。いわゆる経営のグローバル化である。
海外で投資を進め、それで成長してきたのだが、海外であげた利益はまた海外での再投資に振り向けられ、なかなか日本に還流してこなかった。
日本は人口減、少子化・高齢化で、経済は停滞。企業は次の成長機会を狙って、グローバル投資に向かう。これは理にかなった行為。
しかし、国全体で見れば、成長がストップしたまま、国民の賃金は上がらず、消費も低迷し、日本国内では〝安値原理主義〟が蔓延し、付加価値の低い企業活動となっていった。
これを改め、いかに生産性を上げ、日本を魅力ある投資先にするかは、日本のこれからのまさに国家的課題。
共存共栄の理念
三菱商事・中西さんは、「三菱商事はグローバル企業ですが、日本に本社を置く企業として、日本が再び成長し、活力のある国になることに貢献していきたい」という心情を吐露されている。
Global is local, Local is global.─。グローバル視点で生き抜き、行動するが、常にその地域社会との共存共栄を図っていくということ。
こうした考えや理念を持つ企業に人は参集する。
日本の生産年齢人口(15歳―64歳)は現在、7479万人強(2023年1月時点)。これが2065年には約4500万人と3000万人近く減少する見通し。
このマイナス環境の中で、生産性を上げるには、何のために生き、何のために働くのかという基本に立ち返ることが不可欠。そういった意味でもリーダーには使命感と覚悟が必要になってくる。
池田弘さんの志
新潟市を国際都市に─。
新潟を拠点に各種専門学校、大学院大学、専門職大学、高校、学習塾などの教育機関や病院などの医療・福祉機関、さらにはホテル、給食、ソフトウェア、アパレルなど100以上の法人を束ねるNSGグループ会長の池田弘(ひろむ)さん(1949年=昭和24年生まれ)は、故郷・新潟を強く愛し、地元で新事業を次々と起こしておられる。
「わたしどもの理念は、地方新潟を活性化すると。東京集中が進み、若者がほとんど東京に行った。若者がいなくなった街は衰退すると。その若者を地方に残し、若者が未来を夢見るような仕事を起こすようにしていきたい」と池田さん。
日本がアジアのリーディングになる業態に関する大学(院)づくりを進める池田さん。留学生も新潟に集まる。リーダーの志から何事も始まる。新潟に、日本再生のお手本がある。