無配転落も株価はストップ高
5期連続で最終赤字となり、無配転落─―。
楽天グループの2023年12月連結決算(国際会計基準)は、最終損益が3394億円の赤字(前期は3772億円の赤字)だった。インターネット通販事業や金融事業は堅調な一方、モバイル事業が足を引っ張る状況が続いている。
赤字幅がやや改善したのはコストカットの効果。KDDIの通信回線網を活用する地域を拡大したことで設備投資費を抑制。販管費の削減も奏功し、会長兼社長の三木谷浩史氏は「22年までは歴史的な投資を行い、23年はとにかく〝ダイエット活動〟を行ってきた」と振り返る。
モバイルの契約件数は増加傾向にある。23年12月末時点で596万件と、同年9月末に比べて80万件ほど増えた。一時は8%を超えた解約率も23年末時点では1%台に低下し、単月黒字化に必要となる契約数800万~1千万件の24年内の達成も視野に入っているとした。
赤字幅の縮小を受けてか、決算発表翌日の2月15日には、株価が一時ストップ高となる731円(前日比16%=100円高)まで上昇する局面もあった。
ただ、モバイル事業の収益性改善には客単価向上が必須。
1契約当たりの月間平均収入(ARPU)は、23年12月末時点で1986円で、前四半期比60円下がった。個人向けより単価が安い法人契約が増えたためだという。個人向けでも家族で加入すると基本料金を月額110円(税込み)割り引く施策を2月21日に開始しており、ARPUの下押し圧力になる可能性がある。契約数の拡大後に客単価をどう向上させるかの戦略は見えにくい。
財務面での懸念も残る。24年は約3200億円、25年は約4700億円の社債償還が迫っている。このうち24年については既発債の買い入れと新たな発行の組み合わせなどで償還の時期を分散するが、25年の対策の詳細はこれからだ。
三木谷氏は「資金繰りは基本的に心配ない」とするものの、綱渡りの印象は否めない。株式市場では、子会社株のさらなる売却や、KDDIによる救済合併などの観測がくすぶる。楽天の苦境は当面続きそうだ。
BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏が直言「個人消費低迷の真犯人」
5期連続で最終赤字となり、無配転落─―。
楽天グループの2023年12月連結決算(国際会計基準)は、最終損益が3394億円の赤字(前期は3772億円の赤字)だった。インターネット通販事業や金融事業は堅調な一方、モバイル事業が足を引っ張る状況が続いている。
赤字幅がやや改善したのはコストカットの効果。KDDIの通信回線網を活用する地域を拡大したことで設備投資費を抑制。販管費の削減も奏功し、会長兼社長の三木谷浩史氏は「22年までは歴史的な投資を行い、23年はとにかく〝ダイエット活動〟を行ってきた」と振り返る。
モバイルの契約件数は増加傾向にある。23年12月末時点で596万件と、同年9月末に比べて80万件ほど増えた。一時は8%を超えた解約率も23年末時点では1%台に低下し、単月黒字化に必要となる契約数800万~1千万件の24年内の達成も視野に入っているとした。
赤字幅の縮小を受けてか、決算発表翌日の2月15日には、株価が一時ストップ高となる731円(前日比16%=100円高)まで上昇する局面もあった。
ただ、モバイル事業の収益性改善には客単価向上が必須。
1契約当たりの月間平均収入(ARPU)は、23年12月末時点で1986円で、前四半期比60円下がった。個人向けより単価が安い法人契約が増えたためだという。個人向けでも家族で加入すると基本料金を月額110円(税込み)割り引く施策を2月21日に開始しており、ARPUの下押し圧力になる可能性がある。契約数の拡大後に客単価をどう向上させるかの戦略は見えにくい。
財務面での懸念も残る。24年は約3200億円、25年は約4700億円の社債償還が迫っている。このうち24年については既発債の買い入れと新たな発行の組み合わせなどで償還の時期を分散するが、25年の対策の詳細はこれからだ。
三木谷氏は「資金繰りは基本的に心配ない」とするものの、綱渡りの印象は否めない。株式市場では、子会社株のさらなる売却や、KDDIによる救済合併などの観測がくすぶる。楽天の苦境は当面続きそうだ。
BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏が直言「個人消費低迷の真犯人」