「30年続いたデフレの時代は資産を持つ会社の評価が低かった。しかしインフレに向かうならば資産を持つ会社の株価が上がる」─菅下氏はこう指摘する。2024年は年初から日経平均が上昇を続けている。この要因は様々指摘されるが、菅下氏は賃上げと円安の影響が大きいと見る。そして、今の相場は日経平均4万円、さらに長期を見ると8万円を目指していると予想。今後の相場の見方は─。
戦後6回目の「大相場」が到来?
─ 2024年に入り日経平均株価が急騰しています。この動きをどう見ていますか。
菅下 戦後、日本で5回の大相場がありましたが、うち4回は日経平均が出発点から5倍以上になっています。4回目だけが2.39倍でしたが、石油ショックの影響によるものでした。
今回の相場は09年の7054円という、前年のリーマンショックの影響を受けた底値から始まっています。私は「マネーバブル相場」と呼んでいます。
日本の史上最高値は1989年12月末の3万8915円ですが、不動産バブルの天井近辺でした。20年後の09年に株価が底入れし今、上昇しているのです。
─ 今、戦後6回目の波が来ていると。
菅下 09年以降、日本株の長期上昇波動が始まりました。出発点から5倍となると3万5000円ですが、すでに、その水準を上回ってきていますので、そこは天井ではないだろうと。
今の株高の要因は、第1に23年4月以降の「賃上げインフレ」です。これにより個人消費が拡大しています。第2に22年10月に32年ぶりに1ドル=150円を付けた円安です。賃上げ、円安が脱デフレにつながっているのです。さらにコロナが明けてインバウンド(訪日外国人観光客)が来ていることが、さらに消費を押し上げています。
─ 長年低迷してきた大企業の株価が上がっていますね。
菅下 私は23年4月から新たな株価上昇が始まると言ってきました。30年続いたデフレの時代は資産を持つ会社の評価が低かった。しかし、デフレが終わりインフレに向かうならば、今度は資産を持つ会社の株価が上がるだろうと。
日本の大企業で最も円安、インフレで恩恵のある業種を見てみると、第1に海運、第2に鉄鋼、第3に総合商社だと見ました。そして国際情勢を見ると、22年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、世界経済は戦争状態に入ってきています。
フランスの人口歴史学者・エマニュエル・トッドは著書で、ウクライナ戦争や中東の戦禍の状況は第1次世界大戦の様相と似通っていると指摘しています。それを受けるのであれば、第1次大戦後、最も景気がよくなったのは日本とアメリカです。
第1次大戦時は特需がありました。日本では時の大臣が「神風が吹いた」といい、「成金」という言葉が生まれたのです。利益を上げたのは海運と造船で、鉄鋼や商社も恩恵を受けました。
─ 今、これらの業種の株価は高いですね。
菅下 23年4月から海運、鉄鋼、総合商社がリードする「資産インフレ相場」が始まっています。30年間業績、株価が停滞していたバリュー株の底上げが24年も続いています。
さらに、東京証券取引所の要請で上場企業がPBR(株価純資産倍率)1倍割れを意識した経営を始めていることに加え、24年1月に新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、眠れる個人の現金・預金1100兆円が株式市場に入っています。
この資金は国内ではまずインデックスファンド、日経平均に連動した指数に投資するファンドに向かいます。そして次に自分達がよく知る大企業で、配当のいい会社を買う。これが株価全体の底上げになります。
─ 米国株に向かう傾向も強いようですが。
菅下 6~7割は海外ファンドを買っていますが、逆に言えば3~4割は日本に向かっています。このまま、日経平均が4万円に向かい、大企業株の底上げが続くと、個人金融資産がさらに日本株に入ってきます。
加えて、23年は設備投資が100兆円を超えましたが、バブル以来です。24年も続くという予想が出ていますが過去、日本で企業の設備投資100兆円超えが2年続いた例はありません。設備投資は「景気の4番バッター」と言われ、好景気に向かう可能性が高まっています。
─ 日本の景気は力強くなってきていると。
菅下 ええ。そして相場の波動から見ると、23年1月4日に安値を付けた後、6月19日に一番天井、3万3772円を付けたのですが、8111円上げています。これが第1波です。
第2波は23年10月に付けた安値から始まっていますが、8000円上げると3万9000円になります。今の相場は4万円を目指しているということです。
そして、これは短中期サイクルの話ですが、中長期サイクルでは20年3月19日のコロナショックの安値、1万6358円が出発点になっています。大相場の中で5倍上昇すると8万円ということになり、相場は4万円で終わらず8万円を目指す可能性があります。この日経平均8万円をもし付けるとしたらいつかというと2029年です。
─ なぜ29年だと?
菅下 バブルの高値が89年で、20年下がりました。大底が09年でしたから、ここから20年上げる可能性があります。これで合計40年ですが、「コンドラチェフの波」(旧ソ連の経済学者が提唱した景気循環)の40年から60年周期とも符合します。
─ 日本でも「金利の付く時代」が到来すると見られています。これをどう見ますか。
菅下 市場では4月にもマイナス金利やYCC(長短金利操作)を解除するのではないかと見られています。この時、利上げと取られて為替が円高になり、日本の株価は急落するかもしれません。しかし、そこは絶好の押し目買いチャンスになるのではないかと見ています。
戦後6回目の「大相場」が到来?
─ 2024年に入り日経平均株価が急騰しています。この動きをどう見ていますか。
菅下 戦後、日本で5回の大相場がありましたが、うち4回は日経平均が出発点から5倍以上になっています。4回目だけが2.39倍でしたが、石油ショックの影響によるものでした。
今回の相場は09年の7054円という、前年のリーマンショックの影響を受けた底値から始まっています。私は「マネーバブル相場」と呼んでいます。
日本の史上最高値は1989年12月末の3万8915円ですが、不動産バブルの天井近辺でした。20年後の09年に株価が底入れし今、上昇しているのです。
─ 今、戦後6回目の波が来ていると。
菅下 09年以降、日本株の長期上昇波動が始まりました。出発点から5倍となると3万5000円ですが、すでに、その水準を上回ってきていますので、そこは天井ではないだろうと。
今の株高の要因は、第1に23年4月以降の「賃上げインフレ」です。これにより個人消費が拡大しています。第2に22年10月に32年ぶりに1ドル=150円を付けた円安です。賃上げ、円安が脱デフレにつながっているのです。さらにコロナが明けてインバウンド(訪日外国人観光客)が来ていることが、さらに消費を押し上げています。
─ 長年低迷してきた大企業の株価が上がっていますね。
菅下 私は23年4月から新たな株価上昇が始まると言ってきました。30年続いたデフレの時代は資産を持つ会社の評価が低かった。しかし、デフレが終わりインフレに向かうならば、今度は資産を持つ会社の株価が上がるだろうと。
日本の大企業で最も円安、インフレで恩恵のある業種を見てみると、第1に海運、第2に鉄鋼、第3に総合商社だと見ました。そして国際情勢を見ると、22年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、世界経済は戦争状態に入ってきています。
フランスの人口歴史学者・エマニュエル・トッドは著書で、ウクライナ戦争や中東の戦禍の状況は第1次世界大戦の様相と似通っていると指摘しています。それを受けるのであれば、第1次大戦後、最も景気がよくなったのは日本とアメリカです。
第1次大戦時は特需がありました。日本では時の大臣が「神風が吹いた」といい、「成金」という言葉が生まれたのです。利益を上げたのは海運と造船で、鉄鋼や商社も恩恵を受けました。
─ 今、これらの業種の株価は高いですね。
菅下 23年4月から海運、鉄鋼、総合商社がリードする「資産インフレ相場」が始まっています。30年間業績、株価が停滞していたバリュー株の底上げが24年も続いています。
さらに、東京証券取引所の要請で上場企業がPBR(株価純資産倍率)1倍割れを意識した経営を始めていることに加え、24年1月に新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、眠れる個人の現金・預金1100兆円が株式市場に入っています。
この資金は国内ではまずインデックスファンド、日経平均に連動した指数に投資するファンドに向かいます。そして次に自分達がよく知る大企業で、配当のいい会社を買う。これが株価全体の底上げになります。
─ 米国株に向かう傾向も強いようですが。
菅下 6~7割は海外ファンドを買っていますが、逆に言えば3~4割は日本に向かっています。このまま、日経平均が4万円に向かい、大企業株の底上げが続くと、個人金融資産がさらに日本株に入ってきます。
加えて、23年は設備投資が100兆円を超えましたが、バブル以来です。24年も続くという予想が出ていますが過去、日本で企業の設備投資100兆円超えが2年続いた例はありません。設備投資は「景気の4番バッター」と言われ、好景気に向かう可能性が高まっています。
─ 日本の景気は力強くなってきていると。
菅下 ええ。そして相場の波動から見ると、23年1月4日に安値を付けた後、6月19日に一番天井、3万3772円を付けたのですが、8111円上げています。これが第1波です。
第2波は23年10月に付けた安値から始まっていますが、8000円上げると3万9000円になります。今の相場は4万円を目指しているということです。
そして、これは短中期サイクルの話ですが、中長期サイクルでは20年3月19日のコロナショックの安値、1万6358円が出発点になっています。大相場の中で5倍上昇すると8万円ということになり、相場は4万円で終わらず8万円を目指す可能性があります。この日経平均8万円をもし付けるとしたらいつかというと2029年です。
─ なぜ29年だと?
菅下 バブルの高値が89年で、20年下がりました。大底が09年でしたから、ここから20年上げる可能性があります。これで合計40年ですが、「コンドラチェフの波」(旧ソ連の経済学者が提唱した景気循環)の40年から60年周期とも符合します。
─ 日本でも「金利の付く時代」が到来すると見られています。これをどう見ますか。
菅下 市場では4月にもマイナス金利やYCC(長短金利操作)を解除するのではないかと見られています。この時、利上げと取られて為替が円高になり、日本の株価は急落するかもしれません。しかし、そこは絶好の押し目買いチャンスになるのではないかと見ています。