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「都心では二度と出てこない価格」 高倍率での競争が相次ぐ「晴海フラッグ」への期待と課題

財界オンライン 2024年4月4日 7時0分

都心のマンション価格が今後どうなるのかという観点で注目されている場所がある。それが東京・中央区晴海に新たに誕生した街「晴海フラッグ」。マンション約5600戸、約1万2000人が住むことになる街で、2024年1月から入居が始まった。だが都心では類を見ない安さの価格から、購入希望が殺到し、申し込みに制限がかかるほどに。今後、この街はどのような発展を見せるのか、そして「金利が付く時代」が到来する中、マンション市況の行方は─。

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最高倍率226倍という人気の部屋も登場

「新しい街が動き出している中で、にぎわいの拠点として、交流に貢献していく」と話すのは三井不動産常務執行役員商業施設本部長の若林瑞穂氏。

 2024年3月1日、三井不動産は「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」で開発を推進している大規模マンション「晴海フラッグ」エリア内に商業施設「ららテラスHARUMI FLAG」を開業した。

 食品スーパーやクリニックモール、100円ショップのダイソーなど、晴海フラッグから2キロ圏内に居住する人々の買い物ニーズに応える施設。

 近隣には、やはり三井不動産が手掛ける商業施設「ららぽーと豊洲」や観光需要を捉える複合施設「ダイバーシティ東京プラザ」があり、この3つの施設を連携させていく。「例えば、ハレの買い物やエンターテインメントは豊洲で楽しんでもらう。ポイントカードを相乗りするなどして、3つ一体で営業していく」(若林氏)

 この晴海フラッグは約13ヘクタールの土地に、約5600戸の住宅を整備、約1万2000人が住む新しい街として誕生した。環境先進都市としても期待されており、国内で初めて、専用パイプラインで街に水素を供給する仕組みを導入。マンションや、ららテラスに燃料電池を置き、供給された水素で電気を起こして共用部分の照明などの電力を賄う。

 都心で手に入りにくい70~90平方メートルの部屋があることも魅力。そのため、このマンションにはファミリー層が多く移住してくることから、晴海西小学校・中学校を新設し、24年4月に開校予定。しかも、当初想定よりもファミリー層の入居が多く、整備した小・中学校では収容し切れないことが明らかになり、近隣に小学1~3年生のみが通う分校を2030年に開校する予定にしている。

 1月から一部で入居が開始されているが、価格の観点でも注目度は高い。板状マンションの「SUN VILLAGE」では最高倍率226倍になる部屋が出るなど人気に。その理由は東京都中央区の平均坪単価を大きく下回る安さ。

 不動産を専門にする、ニッセイ基礎研究所主任研究員の佐久間誠氏は、晴海フラッグについて「何よりも安い。今の市況からすると、中央区アドレスで坪単価300万円ちょっとで買えるマンションはない。そのため倍率が高くなっていて、普通には買えない状況になっている。まさに超人気物件」と話す。

 その市況を見てみると、不動産経済研究所が発表した23年の東京都区部のマンション平均価格は、前年比39.4%上昇して1億1483万円。初めて1億円の大台を超えた。

 また、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンション平均価格も、前年比28.8%上昇の8101万円。3年連続で最高値を更新した。

 晴海フラッグは1戸当たりの面積が大きいため、坪単価は安くとも総額は決して安くはない。しかし「家族持ちで、同じような面積のマンションが、同じようなグロスで買えるかというと難しい状況になっている」(佐久間氏)こともあり、購入の障害にはなっていないようだ。

 ただ、価格の安さが一般のファミリー世帯の購入の妨げになっている面があった。23年5月までに販売した17棟では、転売を目的とした投資家が複数戸に申し込むなどしたこともあり競争がさらに激化。前述の倍率はその反映となっている。

 そこで、23年6月以降販売のタワー棟2棟は1名義で2戸までの申し込みに制限。それでも平均倍率は15倍、最高倍率は142倍という人気ぶり。

 唯一のウィークポイントとも言えるのは交通利便性。鉄道の最寄り駅が大江戸線勝どき駅で、最も近い棟でも徒歩16分表記。主要な交通インフラは「東京BRT(Bus Rapid Transit=バス高速輸送システム)」となる。順調ならばJR新橋駅まで15分程度で結ぶ。入居が始まったばかりの今はスムーズな乗車が可能だが、今後本格的な入居が始まってからは増便など、様々な調整が必要になる。

 ちなみに2040年頃開業を目指した臨海地下鉄新線構想もある。東京から銀座、築地、晴海、有明を結ぶ路線で、これが開業すれば交通アクセスは一気に向上する。

 ただ、今後のマンション市況を考えた時には様々な懸念材料がある。1つは建設費の上昇。今は資材の高止り、人手不足、さらには労働時間の上限規制を伴う「2024年問題」も控え、下がる見通しにはない。

 もう1つは日本銀行のマイナス金利解除などの政策変更で金利が上昇、住宅ローン金利に影響が及ぶリスク。全国銀行協会会長(みずほ銀行頭取)の加藤勝彦氏は「ただちに金利負担が重くなることはないのではないか」との見通しを示すが、金利は外部要因で動き得るだけに読み切れない。

 前述の通り、東京都内のマンション価格の平均は1億円を超えている。特に山手線の内側のファミリー向けマンションは1億5000万円程度でないと出物がなく「共働きのパワーカップルをもってしても買えるマンションがなくなっている」(佐久間氏)。しかも郊外部でも知名度のある駅の近くでは坪300万円から500万円という価格帯が付くなど高騰している。

 その意味で、今は賃上げの機運が高まっているが、様々な物価上昇に追いついていないという声は強い。この流れを継続させ、マンション価格の上昇にある程度追いつく状況をつくることができるかが、今後の需要動向を左右する可能性がある。

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