Infoseek 楽天

遠藤浩彰・貝印社長「挑戦を後押しし、伝統を守りながらも 新たなものを生み出し続ける企業でありたい」

財界オンライン 2024年4月23日 7時0分

コロナ禍を経て働き方が変わる中で

 当社は2023年に創業115年と、東京本社竣工30周年という1つの節目の年でしたが、そこに合わせて、東京本社のリニューアルを行いました。

【写真で見る】貝印・遠藤浩彰社長の経営に密着!

 コロナ禍が始まった20年は、出社もままならない状況でしたが、私が社長に就任した21年からは出社と在宅勤務を組み合わせるなど、働き方が変わっていきました。環境の変化に合わせて、どのような働き方をしていくべきか、そのためにはどんなオフィスが必要なのかを考える契機になったのです。

 そこで21年4月、東京本社の新たな活用法を考えるプロジェクトをスタートさせましたが、その時は執務エリアというよりは、ショールームなど社外の方々が来られるエリアの活用法についての検討から始まりました。

 議論を進める中で、共用スペースだけでなく、社員が働く場所も含めて、ビル全体を考えた方がいいのではないか、という形でプロジェクトが拡大し、社内でコンセプトを固め、外部のパートナーにも加わってもらいました。そうして23年3月から工事を始め、およそ8カ月間をかけてリニューアルが完了したという経緯です。

 リニューアルのコンセプトは「〝KAITEKI〟OFFICE」です。社内の人間が働く場所、訪れたお客さまが1日を過ごす場所として「快適」に過ごすことができるというのを大事にしています。

 もう一つ、KAITEKIには「KAI的」、つまり「貝印的」という意味も込めています。我々は様々なものを生み出している企業ですから、我々が進みたい方向、つくりたいものを体現するオフィスであるべきだろうと考えました。

 当社は開発指針としてDUPS3(Design , Unique , Patent , Safety & Story & Sustainability)を掲げており、これらを常に意識したモノづくりを進めていますが、オフィスも体現したものとしています。例えばデザインに木や土の要素を取り入れ、温かみを持たせるなど、我々の事業にちなんだ要素を、各所に散りばめています。

 また、これまで外部のテナントさんにお貸ししていた4階フロアは、リニューアルによって社員がリフレッシュする場所として生まれ変わりました。

 飲み物を飲んだり、食事をしたりする中で、その場で偶発的な出会いが生まれてコミュニケーションを取ることができるという〝宿り木〟のような位置づけのエリアになっています。

 働き方がハイブリッドになっていることもあり、どうしてもフェイス・トゥ・フェイスの対人コミュニケーションが減りつつある中で、会社に来ることで他部署も含めた人との出会いから新たなアイデアが生まれ、会社としての新たな商品、サービスにつながることを期待しているのです。


部署の垣根を越えてアイデアを生み出す

 当社の個人向け商品は大きく、カミソリなどのビューティケアと、包丁を核とした家庭用品がありますが、コロナ禍では外出が減り、ビューティケアの売り上げが減少した一方、皆さんが台所に立つ機会が増えて家庭用品が伸びるといった形で事業としてのバランスがうまく機能しました。これは歴史的に当社の特長だと思います。

 そして今は社内で「アイデアコンペ」を開催しています。有志が部署の垣根を越えてアイデアを出し合って、経営会議メンバーに対してプレゼンし、優秀なものは具現化しています。挑戦を奨励することで、新たなものを生み出す会社であり続けたいと思っています。

この記事の関連ニュース