「日本の食産業は海外にマーケットが大変大きく広がります」とZEROCOの楠本修二郎社長。ZEROCOで保管すると食材や加工品の鮮度が伸び、これにより食品ロスの削減に貢献することができるという。さらには配送を急がなくて良くなるため2024年物流問題の解決にも貢献できる。農業・物流・販売、全ての領域の革命にもなりうる楠本氏の構想とは─。
海外で日本の企業が活躍できるようなゆりかごをつくる
─ ZEROCOを活用して、海外で日本の食産業がビジネスしやすくなる仕組みをいま作っているところですね。
楠本 はい。今、ロンドンで教会や印刷工場をリノベーションし、「サステナブル」と「SDGs」に徹底的にこだわったフードコートでの日本食の展開をしています。このフードコートはロンドン以外にも欧米各地に3年間で10拠点ほどの出店の計画があります。
日本でも展開予定で、そのあとアジア進出を考えています。
ここに日本のコンテンツをたくさん入れていって、日本人が海外でも出店しやすいゆりかごをつくろうという作戦です。
─ これは食のマーケットみたいなことですか。
楠本 そうですね。平たくいうとフードコートですけれども、SDGsの時代をコンセプトにしたサステイナブル・フードコートという言い方をしています。
ここに弊社事業の寿司を輸出していこうかなと。
─ 世界規模でこれをやろうということですね。
楠本 やはり、輸出に貢献できるというのがZEROCOですから、この話をします。
世界は2050年に今と比べて人口1.3倍の100億人になるのですが、おそらく食料需要は1.8倍になるといわれています。要は今まで豊かではなかった新興国などでの食料需要が増えてしまうんですね。
ただ一方で、数年前に出たレポートによると、食産業全体の売り上げが1000兆円だそうです。それに対して、地球環境負荷も含めて、人類が食に払っているコストは1200兆円という数字が出ました。
つまり毎年赤字決算をしている。このデータが出たあとぐらいから、COP20あたりの議論が、エネルギーから食料問題に急激にシフトしてきているという背景があります。日本はこういう問題が取り上げられないのが不思議ですが。
ですから、ここに日本と海外のギャップが出てきていることをわたしは危惧しています。
─ 日本の食というものは良いものをもっているけど活かしきれていないと。
楠本 ええ。日本の食の特徴は、おいしい、健康的、サステナブルが圧倒的な強みです。この強みをどう維持発展させるかということが非常に大事です。
慶應義塾大学医学部の宮田裕章先生の言葉を借りれば、「日本の食は、ルネサンス以来の人類の文化的な功績である」という言い方をするわけですね。
海外からもリスペクトを受け続けられることができる唯一のストラテジーだとわたしは思うんです。ですから、これから日本の食産業は海外にものすごくマーケットが広がります。今後、日本国内のパイは狭くなる中で、生産高やそのクオリティを維持できたら世界にものすごく貢献できます。
─ 具体的に貢献できることは例えばどんなことですか。
楠本 川上、川中、川下、全部貢献できます。弊社だけでやるのではなくて、オープンプラットフォームで、全員共創型、参加型で、日本全体でやろうと呼び掛けています。
─ 話は飛びますが、このことを進めると現在の日本の食糧自給率38%は伸びますか。
楠本 伸びます。まず、政府が目標としている生産額ベースでの75%、カロリーベースで45%は必達で守らねばならないと。
─ ZEROCOを各分野で使えばいわゆる在庫機能が持てる。そしてその間に味も進化する。フードロスもなくなる、とこういうことですね。
楠本 はい。毎年気候変動で真夏を迎える前に、レタスが壊滅的に大雨でやられてしまったとか、そういうニュースが続いていますが、ZEROCOに一回逃がせばいいんです。最適なスケジュールで出荷調整して出せば、金額的にはちゃんと儲かる産業になります。
巻き寿司もつくった状態でZEROCOで予備冷却すれば冷凍し解凍できます。通常ならお米がポロポロと堅くなり、海苔はグダグダになってしまうと思いますが、全くそうならないのです。史上初、本当に美味しい寿司が輸出産品になるということです。コールド物流で、全世界に寿司を冷凍食品として売ることが可能になります。例えば超一流店がお店で出すそのままのレシピの寿司も輸出が可能になるのです。
この技術で日本の食をよくしよう、世界に貢献しようという商品をどんどんつくっていきたいと思います。
─ これはある意味で食の革命というか、流通革命、物流革命、販売店革命、チェーンストア革命になりますね。
楠本 はい。ですから、勘のいい経営者の方々は、おしなべて皆さん、革命だとおっしゃる。流通系の方は流通の革命だとおっしゃるし、シェフはおいしさの革命だとおっしゃいますし、調理師専門学校のトップは、教科書を書き換えないといけないとおっしゃいます(笑)。
素材のおいしさが保たれていることで調味料が普通のレシピより少なくて済むということも起きてきています。おいしさを保ちながら病院食などにも活用しておいしくいただけます。
─ 災害でも水や食をどう確保するかが最大の課題ですが、ZEROCOはやはりエネルギーは多く要するのですか。
楠本 いえ、普通の冷蔵庫よりもややエネルギーを必要とする程度です。
例えば全国の漁協に冷凍庫はたくさんあって、いま漁獲高が減っているので、貯蔵スペースが余っていると想像します。ですから震災などにも十分対応できると思っています。
今までの有名店の味の冷凍食品は、レシピを預かって、それに似たものをつくっていたんですね。細胞が壊れることが前提だからです。だから、イミテーションをつくらないと味が似てこないので、シェフのレシピを一回預かって、この味に近いものを企業がつくるというのがこれまでの常識でした。でも、ZEROCOに入れれば細胞が壊れづらいので、シェフの味そのままをお出しできるんです。
日本にある地方の名店の味、おばあちゃんの味を全部ZEROCOで保管して、冷凍して、海外で売ることができるようになるという、これがものすごいパラダイムシフトを起こすのです。
─ これは2024年物流問題にも貢献できますよね。
楠本 もちろん解決の一助になります。これまでトラック物流は納期が大変重要でした。流通の世界でデイワン、デイツー延びるだけで大変なことになりました。でも、ZEROCO箱車ができれば、ZEROCOに入れている間おいしくなるので、トラックの運転手さんは急いで運ばなくてもよくなります。
─ これを全国にどう配置するかですね。
楠本 まずファーストフェーズは、47都道府県、それぞれの地域の名産など「何を売りたいか」と物流を一緒に考えてZEROCOを設置していくことを検討しています。
あとは、グローバルマーケット向けに、各地域の卸売市場、空港などにZEROCOを設置してグローバルに持っていくと、こういう流れを考えています。
海外で日本の企業が活躍できるようなゆりかごをつくる
─ ZEROCOを活用して、海外で日本の食産業がビジネスしやすくなる仕組みをいま作っているところですね。
楠本 はい。今、ロンドンで教会や印刷工場をリノベーションし、「サステナブル」と「SDGs」に徹底的にこだわったフードコートでの日本食の展開をしています。このフードコートはロンドン以外にも欧米各地に3年間で10拠点ほどの出店の計画があります。
日本でも展開予定で、そのあとアジア進出を考えています。
ここに日本のコンテンツをたくさん入れていって、日本人が海外でも出店しやすいゆりかごをつくろうという作戦です。
─ これは食のマーケットみたいなことですか。
楠本 そうですね。平たくいうとフードコートですけれども、SDGsの時代をコンセプトにしたサステイナブル・フードコートという言い方をしています。
ここに弊社事業の寿司を輸出していこうかなと。
─ 世界規模でこれをやろうということですね。
楠本 やはり、輸出に貢献できるというのがZEROCOですから、この話をします。
世界は2050年に今と比べて人口1.3倍の100億人になるのですが、おそらく食料需要は1.8倍になるといわれています。要は今まで豊かではなかった新興国などでの食料需要が増えてしまうんですね。
ただ一方で、数年前に出たレポートによると、食産業全体の売り上げが1000兆円だそうです。それに対して、地球環境負荷も含めて、人類が食に払っているコストは1200兆円という数字が出ました。
つまり毎年赤字決算をしている。このデータが出たあとぐらいから、COP20あたりの議論が、エネルギーから食料問題に急激にシフトしてきているという背景があります。日本はこういう問題が取り上げられないのが不思議ですが。
ですから、ここに日本と海外のギャップが出てきていることをわたしは危惧しています。
─ 日本の食というものは良いものをもっているけど活かしきれていないと。
楠本 ええ。日本の食の特徴は、おいしい、健康的、サステナブルが圧倒的な強みです。この強みをどう維持発展させるかということが非常に大事です。
慶應義塾大学医学部の宮田裕章先生の言葉を借りれば、「日本の食は、ルネサンス以来の人類の文化的な功績である」という言い方をするわけですね。
海外からもリスペクトを受け続けられることができる唯一のストラテジーだとわたしは思うんです。ですから、これから日本の食産業は海外にものすごくマーケットが広がります。今後、日本国内のパイは狭くなる中で、生産高やそのクオリティを維持できたら世界にものすごく貢献できます。
─ 具体的に貢献できることは例えばどんなことですか。
楠本 川上、川中、川下、全部貢献できます。弊社だけでやるのではなくて、オープンプラットフォームで、全員共創型、参加型で、日本全体でやろうと呼び掛けています。
─ 話は飛びますが、このことを進めると現在の日本の食糧自給率38%は伸びますか。
楠本 伸びます。まず、政府が目標としている生産額ベースでの75%、カロリーベースで45%は必達で守らねばならないと。
─ ZEROCOを各分野で使えばいわゆる在庫機能が持てる。そしてその間に味も進化する。フードロスもなくなる、とこういうことですね。
楠本 はい。毎年気候変動で真夏を迎える前に、レタスが壊滅的に大雨でやられてしまったとか、そういうニュースが続いていますが、ZEROCOに一回逃がせばいいんです。最適なスケジュールで出荷調整して出せば、金額的にはちゃんと儲かる産業になります。
巻き寿司もつくった状態でZEROCOで予備冷却すれば冷凍し解凍できます。通常ならお米がポロポロと堅くなり、海苔はグダグダになってしまうと思いますが、全くそうならないのです。史上初、本当に美味しい寿司が輸出産品になるということです。コールド物流で、全世界に寿司を冷凍食品として売ることが可能になります。例えば超一流店がお店で出すそのままのレシピの寿司も輸出が可能になるのです。
この技術で日本の食をよくしよう、世界に貢献しようという商品をどんどんつくっていきたいと思います。
─ これはある意味で食の革命というか、流通革命、物流革命、販売店革命、チェーンストア革命になりますね。
楠本 はい。ですから、勘のいい経営者の方々は、おしなべて皆さん、革命だとおっしゃる。流通系の方は流通の革命だとおっしゃるし、シェフはおいしさの革命だとおっしゃいますし、調理師専門学校のトップは、教科書を書き換えないといけないとおっしゃいます(笑)。
素材のおいしさが保たれていることで調味料が普通のレシピより少なくて済むということも起きてきています。おいしさを保ちながら病院食などにも活用しておいしくいただけます。
─ 災害でも水や食をどう確保するかが最大の課題ですが、ZEROCOはやはりエネルギーは多く要するのですか。
楠本 いえ、普通の冷蔵庫よりもややエネルギーを必要とする程度です。
例えば全国の漁協に冷凍庫はたくさんあって、いま漁獲高が減っているので、貯蔵スペースが余っていると想像します。ですから震災などにも十分対応できると思っています。
今までの有名店の味の冷凍食品は、レシピを預かって、それに似たものをつくっていたんですね。細胞が壊れることが前提だからです。だから、イミテーションをつくらないと味が似てこないので、シェフのレシピを一回預かって、この味に近いものを企業がつくるというのがこれまでの常識でした。でも、ZEROCOに入れれば細胞が壊れづらいので、シェフの味そのままをお出しできるんです。
日本にある地方の名店の味、おばあちゃんの味を全部ZEROCOで保管して、冷凍して、海外で売ることができるようになるという、これがものすごいパラダイムシフトを起こすのです。
─ これは2024年物流問題にも貢献できますよね。
楠本 もちろん解決の一助になります。これまでトラック物流は納期が大変重要でした。流通の世界でデイワン、デイツー延びるだけで大変なことになりました。でも、ZEROCO箱車ができれば、ZEROCOに入れている間おいしくなるので、トラックの運転手さんは急いで運ばなくてもよくなります。
─ これを全国にどう配置するかですね。
楠本 まずファーストフェーズは、47都道府県、それぞれの地域の名産など「何を売りたいか」と物流を一緒に考えてZEROCOを設置していくことを検討しています。
あとは、グローバルマーケット向けに、各地域の卸売市場、空港などにZEROCOを設置してグローバルに持っていくと、こういう流れを考えています。