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西尾修平・HiOLI(ヒオリ)代表取締役が語る「脱脂粉乳という副産物も新たな付加価値にしたお菓子を」

財界オンライン 2024年7月3日 18時0分

皆さん、思い出してみてください。小学生の頃、近所の駄菓子屋に立ち寄って甘くて美味しいお菓子に舌鼓を打った記憶。どなたにでもあるのではないでしょうか。私もその1人です。

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 大学卒業後、リクルートで働き、東証マザーズ(当時)上場のIT企業の取締役を経て製菓のベンチャー企業で社長を経験しました。もともとお菓子が好きで、もっと素材が持つ味を生かし、手間を惜しまないものづくりを通じて、新しい価値を提供したい。そう考えて18年に起業したのが当社です。

 当社は主にクラフトスイーツ事業を展開しており、クラフトアイスクリーム「HiO ICE CREAM」、クラフトバタースイーツ「Butters」、チーズスイーツ「山ノチーズ」など日本各地で12店舗を運営しています。1キロのバターを作るのに20キロ以上の生乳が必要と言われており、バターの主原料である生クリームにする過程で大量の「脱脂粉乳」が生まれています。

 そこで私が注目したのが、この脱脂粉乳です。脱脂粉乳と聞くと、牛乳の脂肪分を除いたものから水分を除去し、粉末状にした副産物という認識が一般的でしょう。前職でもスイーツを作る過程でお菓子作りには欠かせないバターの使用が増えれば増えるほど、副産物としての脱脂粉乳が増えていきました。

 ところがこの脱脂粉乳という副産物を煮詰めて使うことで、香料を使わなくてもミルクの芳醇な香りを出すことができるといったメリットがあります。更に高たんぱくでカロリーは低い。健康維持の補助的な役割も期待されます。一方で、脱脂粉乳はその消費が追い付いていないことが社会問題になっています。

 もし香料・着色料といった合成添加物を使わず、さらに脱脂粉乳という副産物を使いこなし、アップサイクルしたお菓子を作ることができれば、お客様には安全・安心で健康にも良く、美味しく召し上がっていただきながらも、副産物の消化・消費の支援にもつながります。

 お菓子業界では昨今の原材料の高騰や人件費・物流費の上昇など、コスト面での逆風が続いていることは確かです。その意味では、いかに消費を喚起させていくかが大きなテーマになっていきます。これは単に価格を下げるだけでは勝ち残れません。

 当社では、かねてより「乳の価値をアップデートする」というミッションを掲げていましたが、脱脂粉乳という一見、あまり価値がないように思われていたものでも、見方によっては価値が高まると考えたのです。

 昨今のインフレを契機に、お客様も〝使い分ける〟消費をするようになりました。手作り(クラフト)、素材の美味しさ、環境にやさしいといった付加価値には、それ相応の対価を払うようになっているのです。

 しかも、「HiO ICE CREAM」では大掛かりな機械を使わず、東京の自由が丘にある工房での手作りを基本としています。ラムレーズン1つとっても100以上のレシピを持ち、季節ごとに8種類のフレーバーを提供しています。こういった取り組みが当社のブランド価値の形成につながっているのです。

 また、当社が低価格路線を取らずにお客様の手に取ってもらえる商品づくりをしていけば、自ずと生産者とも適切な価格で取引できます。こういった手間暇のかかる取り組みは決して大手企業ではできないでしょう。

 私たちが幼少期に抱いたお菓子に対するワクワクした気持ち。それを感じてもらいながら安全・安心で付加価値の高い新しいお菓子を提供していくことを目指していきます。

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