「ハンモックでくつろげるような快適なシステムを組織で働くすべての人々に提供したい」─これがハンモックの社名の由来。2024年4月に東証グロース市場に上場した。デジタル時代に重視されるIT資産管理と、顧客の営業を支援する「セールスDX」に強みを持つ。競合他社はあるが「多層防御」のセキュリティが差別化のカギを握っている。今後は製品開発に加え、M&Aも手掛けたいという若山氏の経営に対する考え方とは─。
全員参加型の成長戦略を作り上げる
─ 2024年4月に東証グロース市場に上場しましたね。振り返って、会社にとってどういう出来事だと感じますか。
若山 皆さん同じだと思いますが、初めて尽くしでした。私自身としてはロードショー(上場承認を受けた後、株式公開の前に、機関投資家に向けて行う会社説明会)がとにかく大変でしたね。
ロードショーにあたっては、中長期の成長戦略や当社の強み・特徴に関するIR(投資家向け広報)資料をつくるのですが、当初はコンサルタントに作成を依頼しようという話も出ていました。
ただ、経営者や幹部とコンサルの人達だけでつくると、社員の生きた考え、感じ方が反映されず、社内に全く浸透しないものになるのではないかと考えました。そこで、コンサルに頼らず、社員のみんなを巻き込んでIR資料を作り上げたのです。
─ 全員参加型の成長戦略を作り上げたと。ハンモックという社名は「ハンモックでくつろげるような快適なシステムを組織で働くすべの人々に提供したい」という思いが込められているそうですね。
若山 そうです。社名は創業者である前会長(若山正美氏)が考えたものです。日本IBMの出身だったのですが、当時は仕事が本当に大変だったそうです。起業してからは、そのような大変な思いはしたくないと考え、ハンモックに揺られるような形で仕事がしたいと、この社名にしたそうです。
前会長はIBM時代に中堅・中小企業を顧客にコンピュータの小型機を販売する仕事に従事しており、数字に追われていました。その後、自らの事業戦略を制約など受けることなく実現したいという思いから起業したという経緯です。
最初はコンピュータなどの仕入・販売を行っていたのですが、当社から買う意義が薄かったので、最初は売れませんでした。そこで名刺代わりにネットワークに関する本を出しました。その出版社の社長から、ユニークなアメリカのソフトを紹介してもらい、ソフトウェアの販売会社として改めてスタートしました。
顧客のニーズ実現へ
自社製品を開発
─ 早くから事業は軌道に乗ったのですか。
若山 売れたのが、当社の最初の事業の柱となった「OCR」(光学文字認識)のシステムです。システムを輸入して、当社でローカライズして販売していました。
その後、当時の顧客であった大手航空会社の情報システム部門が社内のパソコンにソフトを配布するためのシステムをつくっており、それを当社が外部に紹介したところ「面白い」という反応があり、仕入れて販売するようになりました。これが1996年頃のことです。
ただ、商品は売れ始めたものの、営業の人手が足りませんでした。そこで私が出てくるのですが、当時私は別の企業でIT関連機器の営業をしていましたが、同業他社からヘッドハンティングを受けたことを機に、それを前会長に相談したところ、「営業が足りないから手伝って欲しい」と言われて2000年に入社しました。
─ その時には、会社としての方向性は決まっていた?
若山 前会長はソフトを仕入れて販売する販売商社に徹したいと常に言っていました。自分達で製品をつくるのはリスクが高いという考えがあったのです。
しかし、先ほどの航空会社が開発したシステムを販売する中で、お客様から新たな要望が出てきていました。私は、その要望を受けて、航空会社に「つくって欲しい」と提案したのですが、「なぜ、あなた方が考えている商品を我々がつくらなければいけないのか」と言われたこともあり、当社でプログラムをつくって、ユーザーニーズを少しでも実現できる商品にしようという取り組みを始めました。そこで初めて、自分達でモノづくりを始めたのです。
─ ただ、それは前会長の方針とは違いますね。
若山 そうです。ですから最初は「社内にモノづくりができる人材がいないじゃないか」とすごく反対されました。しかし、営業を通じて、お客様のニーズを肌で感じていましたから、「これは売れる」と。そこで反対を押し切って、どんどんつくっていった形です。
─ 開発の人材はどう確保しましたか。
若山 最初は協力してくれる会社があり、依頼をしてつくっていましたが、その会社の有能なエンジニアが「あなたと仕事がしたい」と言ってくれました。ただ、そのエンジニアは会社で重要な役割を担っていたこともあり、数年の時間をかけて、当社に入社してもらいました。
その人と一緒に仕事をしたことで、お客様のニーズとテクノロジーが噛み合い、さらにいい商品ができ始めました。
そうして開発して主力になったのがIT資産管理ソフトの「AssetView」です。市場ニーズを汲み取って改良を進めたことで、年々業界シェアも高まっています。
IT資産管理、「セールスDX」を強みに
─ 今、デジタル化に伴って、企業は情報管理などセキュリティに課題を抱えていますね。
若山 ええ。当社の「AssetView」は情報漏洩対策に長けたセキュリティ機能を持っています。PCの操作ログを取ることで、社内からの情報漏洩を防ぎます。例えば社員が顧客名簿をUSBメモリにコピーして持ち出して売ってしまうという事例がありますが、こうしたものも防止します。
情報漏洩によって企業の信頼性に疑義が生じ、業績が悪化するケースがあるということを企業はわかっていますから、大企業、中堅企業問わず、皆さん積極的に対策を取られています。
─ セキュリティを提供している企業は多くあると思いますが、その中でハンモックのシステムの強みは?
若山 重要視しているのは「多層防御」です。1つの防御策だけでなく、二の矢、三の矢と、様々な視点で対策を取ることが本当の意味でセキュリティを強化することになるという考え方です。これが当社の「AssetView」の他社にない特長だと思っています。
例えば、先程のPCの操作ログにしても、単に情報を取るだけでなく、暗号化しています。また、ウイルス対策ソフトも自社製品として提供しています。
競合他社は、PCのログを取る、暗号化する、ウイルス対策をするといった機能を協力会社と一緒に提案していますが、我々は1つの商品として多面的な対策を提案できることが強みになっています。大企業だけでなく、対策にそこまで資金をかけられないという中堅企業も含めて導入していただいており、強い競争力につながっています。
それ以外にも、私が取締役の時代から様々な新規事業を立ち上げてきました。もちろん、うまくいかずにやめた事業もありましたが、その中で今、当社で最も伸びている事業を生み出すことができました。
それが「セールスDX」事業です。営業を強くし売上をアップするための名刺管理・営業支援ツール「ホットプロファイル」がヒットし、今最も成長しています。この事業によって、我々は上場することができたと言っても過言ではありません。
─ 失敗にめげずにチャレンジしたことで、成長する新規事業を生み出すことができたと。
若山 そうです。失敗もありましたが、とにかくチャレンジをし続けてきました。その意味で社内にはチャレンジすることの重要性を訴えています。
多くの場合、みんな「失敗すると怒られる」、「評価が下がる」といって失敗を恐れるんです。そうではなく、失敗することで経験ができるのだと思うんです。楽な道を選ばす、ガムシャラにチャレンジして欲しいということを常に言っています。
─ 社内で伸びている社員はどういうタイプですか。
若山 通常の考え方ではなく、「こうやったらどうなるだろう?」と常に考えている人です。そう考えていると、自ずと行動に移っていくわけです。言われたことだけをやっているのではなく、考えて行動できる人が伸びていますね。
─ そうした積極的にチャレンジする、行動する人材を報酬含め、どう評価していますか。
若山 高く評価しており、当社の評価制度に則った上で、非常に速いスピードで昇格をしています。例えば入社5年目で次長になっている社員もいます。当社では中途採用者でも一兵卒からスタートしていますが、チャレンジ精神と業績次第で活躍ができます。
今回、上場をしたのも、上場によって会社の認知度を上げて、多くのチャレンジしたい人達に入ってきてもらいたいという思いがあったからです。
─ 社長として、強みのある製品を生み出すために意識していることは?
若山 当社の強みは、先程お話した製品に表れているように、お客様のニーズをいち早くキャッチして、それをいち早く製品に転換していくスピードです。私自身も、常にその感覚を持っていたいので、営業担当者と一緒に現場に出ているんです。
お客様の他、協力会社にも訪問するなど、重要なお取引先には常に行くようにしています。その機会に、お客様のニーズを感じ取るんです。そうして私自身が得たニーズを現場と共有して、担当者達と議論をしています。
そして当然、私だけでなく、そうしたお客様のニーズをキャッチするという文化は現場にも根付いています。営業担当者が集めてくるニーズを、商品企画担当者がしっかりまとめて製品開発をし、すぐにプロトタイプを出す。そのサイクルのスピードが速いことが、当社の強みになっています。
製品開発とM&Aを軸にさらなる成長を
─ 今後、どのように会社を成長させていきたいと考えていますか。
若山 今回、上場したからには、さらに成長する会社にしていきたいと考えています。これまで売り上げは、年10%程度の成長でしたが、これを将来的には15%、20%に高めていきたいというのが目標です。
そのために今、経営メンバーを集めて中期経営計画を策定しており、3年後、5年後にどれくらい成長しているかという、具体的なロードマップを作成しています。
ロードマップでは、製品開発に投資する部分と、その方向性の中で協力し合えそうな企業に対するM&A(企業の合併・買収)という2つの軸で、成長をさらに加速させたいと思います。
M&Aは、単に買って売り上げだけ伸ばそうという会社も中にはありますが、我々は全くそういうことをしようとは思っていません。
我々の事業の発展の方向性の中で、本当にシナジーを生むことができる企業を絞り込んで、両社でWIN・WINの関係を実現する、しかもお客様に喜んでいただけるという本質をずらさずに進めていきます。
改めて製品開発とM&Aを軸としながら、事業の方向性をぶらさないような成長戦略を描いていきます。
─ 無借金経営を続けるなど、財務体質がいいですね。
若山 ええ。現預金も豊富で26億円程度あります。その資金をどう使っていくかも、我々の重要な課題です。
─ コロナ禍の影響は受けなかったんですか。
若山 当社はコロナの影響をあまり受けない業態のため、ほぼ横ばいか、少し落ちたかなという程度でした。資金繰りが大変な企業さんが多い中では、堅調だったと思います。
─ この健全な財務体質の構築は前会長の方針だった?
若山 そうです。非常に慎重な人でしたから。私が突っ走るタイプで、前会長はそれを抑える役でもありました。今は、私が走るところを、役員陣が抑えるという体制です。
アクセルを踏み続けるだけでは方向性を失ってしまいますから、会社としてのアクセルとブレーキのバランスを取りながら、今後も経営のカジ取りをしていきたいと考えています。
全員参加型の成長戦略を作り上げる
─ 2024年4月に東証グロース市場に上場しましたね。振り返って、会社にとってどういう出来事だと感じますか。
若山 皆さん同じだと思いますが、初めて尽くしでした。私自身としてはロードショー(上場承認を受けた後、株式公開の前に、機関投資家に向けて行う会社説明会)がとにかく大変でしたね。
ロードショーにあたっては、中長期の成長戦略や当社の強み・特徴に関するIR(投資家向け広報)資料をつくるのですが、当初はコンサルタントに作成を依頼しようという話も出ていました。
ただ、経営者や幹部とコンサルの人達だけでつくると、社員の生きた考え、感じ方が反映されず、社内に全く浸透しないものになるのではないかと考えました。そこで、コンサルに頼らず、社員のみんなを巻き込んでIR資料を作り上げたのです。
─ 全員参加型の成長戦略を作り上げたと。ハンモックという社名は「ハンモックでくつろげるような快適なシステムを組織で働くすべの人々に提供したい」という思いが込められているそうですね。
若山 そうです。社名は創業者である前会長(若山正美氏)が考えたものです。日本IBMの出身だったのですが、当時は仕事が本当に大変だったそうです。起業してからは、そのような大変な思いはしたくないと考え、ハンモックに揺られるような形で仕事がしたいと、この社名にしたそうです。
前会長はIBM時代に中堅・中小企業を顧客にコンピュータの小型機を販売する仕事に従事しており、数字に追われていました。その後、自らの事業戦略を制約など受けることなく実現したいという思いから起業したという経緯です。
最初はコンピュータなどの仕入・販売を行っていたのですが、当社から買う意義が薄かったので、最初は売れませんでした。そこで名刺代わりにネットワークに関する本を出しました。その出版社の社長から、ユニークなアメリカのソフトを紹介してもらい、ソフトウェアの販売会社として改めてスタートしました。
顧客のニーズ実現へ
自社製品を開発
─ 早くから事業は軌道に乗ったのですか。
若山 売れたのが、当社の最初の事業の柱となった「OCR」(光学文字認識)のシステムです。システムを輸入して、当社でローカライズして販売していました。
その後、当時の顧客であった大手航空会社の情報システム部門が社内のパソコンにソフトを配布するためのシステムをつくっており、それを当社が外部に紹介したところ「面白い」という反応があり、仕入れて販売するようになりました。これが1996年頃のことです。
ただ、商品は売れ始めたものの、営業の人手が足りませんでした。そこで私が出てくるのですが、当時私は別の企業でIT関連機器の営業をしていましたが、同業他社からヘッドハンティングを受けたことを機に、それを前会長に相談したところ、「営業が足りないから手伝って欲しい」と言われて2000年に入社しました。
─ その時には、会社としての方向性は決まっていた?
若山 前会長はソフトを仕入れて販売する販売商社に徹したいと常に言っていました。自分達で製品をつくるのはリスクが高いという考えがあったのです。
しかし、先ほどの航空会社が開発したシステムを販売する中で、お客様から新たな要望が出てきていました。私は、その要望を受けて、航空会社に「つくって欲しい」と提案したのですが、「なぜ、あなた方が考えている商品を我々がつくらなければいけないのか」と言われたこともあり、当社でプログラムをつくって、ユーザーニーズを少しでも実現できる商品にしようという取り組みを始めました。そこで初めて、自分達でモノづくりを始めたのです。
─ ただ、それは前会長の方針とは違いますね。
若山 そうです。ですから最初は「社内にモノづくりができる人材がいないじゃないか」とすごく反対されました。しかし、営業を通じて、お客様のニーズを肌で感じていましたから、「これは売れる」と。そこで反対を押し切って、どんどんつくっていった形です。
─ 開発の人材はどう確保しましたか。
若山 最初は協力してくれる会社があり、依頼をしてつくっていましたが、その会社の有能なエンジニアが「あなたと仕事がしたい」と言ってくれました。ただ、そのエンジニアは会社で重要な役割を担っていたこともあり、数年の時間をかけて、当社に入社してもらいました。
その人と一緒に仕事をしたことで、お客様のニーズとテクノロジーが噛み合い、さらにいい商品ができ始めました。
そうして開発して主力になったのがIT資産管理ソフトの「AssetView」です。市場ニーズを汲み取って改良を進めたことで、年々業界シェアも高まっています。
IT資産管理、「セールスDX」を強みに
─ 今、デジタル化に伴って、企業は情報管理などセキュリティに課題を抱えていますね。
若山 ええ。当社の「AssetView」は情報漏洩対策に長けたセキュリティ機能を持っています。PCの操作ログを取ることで、社内からの情報漏洩を防ぎます。例えば社員が顧客名簿をUSBメモリにコピーして持ち出して売ってしまうという事例がありますが、こうしたものも防止します。
情報漏洩によって企業の信頼性に疑義が生じ、業績が悪化するケースがあるということを企業はわかっていますから、大企業、中堅企業問わず、皆さん積極的に対策を取られています。
─ セキュリティを提供している企業は多くあると思いますが、その中でハンモックのシステムの強みは?
若山 重要視しているのは「多層防御」です。1つの防御策だけでなく、二の矢、三の矢と、様々な視点で対策を取ることが本当の意味でセキュリティを強化することになるという考え方です。これが当社の「AssetView」の他社にない特長だと思っています。
例えば、先程のPCの操作ログにしても、単に情報を取るだけでなく、暗号化しています。また、ウイルス対策ソフトも自社製品として提供しています。
競合他社は、PCのログを取る、暗号化する、ウイルス対策をするといった機能を協力会社と一緒に提案していますが、我々は1つの商品として多面的な対策を提案できることが強みになっています。大企業だけでなく、対策にそこまで資金をかけられないという中堅企業も含めて導入していただいており、強い競争力につながっています。
それ以外にも、私が取締役の時代から様々な新規事業を立ち上げてきました。もちろん、うまくいかずにやめた事業もありましたが、その中で今、当社で最も伸びている事業を生み出すことができました。
それが「セールスDX」事業です。営業を強くし売上をアップするための名刺管理・営業支援ツール「ホットプロファイル」がヒットし、今最も成長しています。この事業によって、我々は上場することができたと言っても過言ではありません。
─ 失敗にめげずにチャレンジしたことで、成長する新規事業を生み出すことができたと。
若山 そうです。失敗もありましたが、とにかくチャレンジをし続けてきました。その意味で社内にはチャレンジすることの重要性を訴えています。
多くの場合、みんな「失敗すると怒られる」、「評価が下がる」といって失敗を恐れるんです。そうではなく、失敗することで経験ができるのだと思うんです。楽な道を選ばす、ガムシャラにチャレンジして欲しいということを常に言っています。
─ 社内で伸びている社員はどういうタイプですか。
若山 通常の考え方ではなく、「こうやったらどうなるだろう?」と常に考えている人です。そう考えていると、自ずと行動に移っていくわけです。言われたことだけをやっているのではなく、考えて行動できる人が伸びていますね。
─ そうした積極的にチャレンジする、行動する人材を報酬含め、どう評価していますか。
若山 高く評価しており、当社の評価制度に則った上で、非常に速いスピードで昇格をしています。例えば入社5年目で次長になっている社員もいます。当社では中途採用者でも一兵卒からスタートしていますが、チャレンジ精神と業績次第で活躍ができます。
今回、上場をしたのも、上場によって会社の認知度を上げて、多くのチャレンジしたい人達に入ってきてもらいたいという思いがあったからです。
─ 社長として、強みのある製品を生み出すために意識していることは?
若山 当社の強みは、先程お話した製品に表れているように、お客様のニーズをいち早くキャッチして、それをいち早く製品に転換していくスピードです。私自身も、常にその感覚を持っていたいので、営業担当者と一緒に現場に出ているんです。
お客様の他、協力会社にも訪問するなど、重要なお取引先には常に行くようにしています。その機会に、お客様のニーズを感じ取るんです。そうして私自身が得たニーズを現場と共有して、担当者達と議論をしています。
そして当然、私だけでなく、そうしたお客様のニーズをキャッチするという文化は現場にも根付いています。営業担当者が集めてくるニーズを、商品企画担当者がしっかりまとめて製品開発をし、すぐにプロトタイプを出す。そのサイクルのスピードが速いことが、当社の強みになっています。
製品開発とM&Aを軸にさらなる成長を
─ 今後、どのように会社を成長させていきたいと考えていますか。
若山 今回、上場したからには、さらに成長する会社にしていきたいと考えています。これまで売り上げは、年10%程度の成長でしたが、これを将来的には15%、20%に高めていきたいというのが目標です。
そのために今、経営メンバーを集めて中期経営計画を策定しており、3年後、5年後にどれくらい成長しているかという、具体的なロードマップを作成しています。
ロードマップでは、製品開発に投資する部分と、その方向性の中で協力し合えそうな企業に対するM&A(企業の合併・買収)という2つの軸で、成長をさらに加速させたいと思います。
M&Aは、単に買って売り上げだけ伸ばそうという会社も中にはありますが、我々は全くそういうことをしようとは思っていません。
我々の事業の発展の方向性の中で、本当にシナジーを生むことができる企業を絞り込んで、両社でWIN・WINの関係を実現する、しかもお客様に喜んでいただけるという本質をずらさずに進めていきます。
改めて製品開発とM&Aを軸としながら、事業の方向性をぶらさないような成長戦略を描いていきます。
─ 無借金経営を続けるなど、財務体質がいいですね。
若山 ええ。現預金も豊富で26億円程度あります。その資金をどう使っていくかも、我々の重要な課題です。
─ コロナ禍の影響は受けなかったんですか。
若山 当社はコロナの影響をあまり受けない業態のため、ほぼ横ばいか、少し落ちたかなという程度でした。資金繰りが大変な企業さんが多い中では、堅調だったと思います。
─ この健全な財務体質の構築は前会長の方針だった?
若山 そうです。非常に慎重な人でしたから。私が突っ走るタイプで、前会長はそれを抑える役でもありました。今は、私が走るところを、役員陣が抑えるという体制です。
アクセルを踏み続けるだけでは方向性を失ってしまいますから、会社としてのアクセルとブレーキのバランスを取りながら、今後も経営のカジ取りをしていきたいと考えています。