「コストアップが進む中で、営業収益は計画を達成したものの、売上総利益率および販管費が課題と考えている。変化対応力という点で準備不足だった」
こう語るのは、イオン社長の吉田昭夫氏。
イオンが2024年3―8月期の連結業績を発表。営業収益は4兆9994億円(前年同期比6.1%増)と4期連続で過去最高を更新したものの、営業利益986億円(同16.2%減)、純利益54億円(同76.5%減)と大幅減益となった。
最も利益の下振れ要因となったのは人件費の上昇だ。同社では2024年に社員9%、パートやアルバイトも7%の賃上げを実施。イオングループは日本最大規模となる約40万人のパート従業員を抱えており、前年同期に比べて約285億円の負担増。売上が増えても、人件費コストの上昇分を補うことはできなかった。
同社では通期(25年2月期)で前期と比べて、電気代の上昇で約100億円、物流コストで約40億円、人件費で約650億円を見込んでいる。それでも営業収益10兆円(同4.7%増)、営業利益2700億円(同7.6%増)、純利益460億円(同2.9%増)とする通期予想は変更していない。
吉田氏は「消費者物価指数の調査を見ても食品は4%近く上昇しており、家計の負担は依然高い。また、年金生活者や賃上げの恩恵を受けない層の生活防衛意識は非常に高く、セールの日にお客様の来店が集中することが増えている」と指摘。
コスト上昇によるインフレが続く状況下、同社は価格訴求を行うスーパーが増えてきているとして、品質が良く、〝お値打ち〟なPB(プライベートブランド=自主企画)商品の強化を進める他、小型スーパー『まいばすけっと』の出店を加速する考え。
「この先も継続してコスト上昇が見込まれることを前提に、事業構造を抜本的に変えていかなければならない。中途半端だった価格の打ち出しを明確にし、お客様の暮らしを徹底的に支えていくことで、最大商戦である年末商戦の前に客数の増加を実現したい」(吉田氏)
経済全体で考えれば、物価上昇分を価格へ転嫁し、それを原資に賃上げし、真のデフレ脱却を図りたいところ。しかし、消費者と直で向き合う小売業者にとっては、自社の賃上げを実現した上で、他社との競争を生き抜くためには、ある程度の値下げも容認せざるを得ないのか。
理想と現実の狭間で揺れる吉田氏の姿がそこにある。
ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト・矢嶋康次の提言「岸田政権が残した光と影」
こう語るのは、イオン社長の吉田昭夫氏。
イオンが2024年3―8月期の連結業績を発表。営業収益は4兆9994億円(前年同期比6.1%増)と4期連続で過去最高を更新したものの、営業利益986億円(同16.2%減)、純利益54億円(同76.5%減)と大幅減益となった。
最も利益の下振れ要因となったのは人件費の上昇だ。同社では2024年に社員9%、パートやアルバイトも7%の賃上げを実施。イオングループは日本最大規模となる約40万人のパート従業員を抱えており、前年同期に比べて約285億円の負担増。売上が増えても、人件費コストの上昇分を補うことはできなかった。
同社では通期(25年2月期)で前期と比べて、電気代の上昇で約100億円、物流コストで約40億円、人件費で約650億円を見込んでいる。それでも営業収益10兆円(同4.7%増)、営業利益2700億円(同7.6%増)、純利益460億円(同2.9%増)とする通期予想は変更していない。
吉田氏は「消費者物価指数の調査を見ても食品は4%近く上昇しており、家計の負担は依然高い。また、年金生活者や賃上げの恩恵を受けない層の生活防衛意識は非常に高く、セールの日にお客様の来店が集中することが増えている」と指摘。
コスト上昇によるインフレが続く状況下、同社は価格訴求を行うスーパーが増えてきているとして、品質が良く、〝お値打ち〟なPB(プライベートブランド=自主企画)商品の強化を進める他、小型スーパー『まいばすけっと』の出店を加速する考え。
「この先も継続してコスト上昇が見込まれることを前提に、事業構造を抜本的に変えていかなければならない。中途半端だった価格の打ち出しを明確にし、お客様の暮らしを徹底的に支えていくことで、最大商戦である年末商戦の前に客数の増加を実現したい」(吉田氏)
経済全体で考えれば、物価上昇分を価格へ転嫁し、それを原資に賃上げし、真のデフレ脱却を図りたいところ。しかし、消費者と直で向き合う小売業者にとっては、自社の賃上げを実現した上で、他社との競争を生き抜くためには、ある程度の値下げも容認せざるを得ないのか。
理想と現実の狭間で揺れる吉田氏の姿がそこにある。
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