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井上祐巳梨・STEAM JAPAN代表理事「『創造性への自信』を育む『STEAM教育』の重要性」

財界オンライン 2024年11月6日 18時0分

私達は、近年の教育トレンドになっている「STEAM教育」「探究学習」など、より実践的で、進学や将来に役立つ次世代教育を推進している団体です。

 STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)。芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念です。

 今、教育改革の波は世界中で起きています。その中で、知識を入れる教育と、活用していく教育とのバランス感については、どの国も手探り状態です。

 私の姉が英ロンドン、米シリコンバレーにそれぞれ在住していることもあり、現地の最新情報をリアルタイムで取り入れています。その情報によるとロンドンやシリコンバレーでは「STEM教育」に力を入れている傾向が見えます。

 両都市は元々、クリエイティブ、アートに対する施策がきちんとあり、その上にSTEMを足していくという考え方です。さらに言えば、イギリスはアートに力を入れ過ぎた結果、理数科目の履修者が減少してしまうという事態が起きており、STEMの重要性が高まっています。

 逆に日本は元々、STEMに強い国ですが、現状は世界で経済的イニシアチブが取れているかというと違います。その要因について、私達は芸術・リベラルアーツ、言い換えれば「ビジョンを描く力」が足りないからではないかと考えています。

 今、日本でもSTEAM教育が注目されていますが、理数教育に創造性を育む「A」を加えると、概念的に広過ぎてわかりづらいという声もあります。

 ではなぜ今、日本でSTEAM教育が必要なのかと言えば、「ゼロからイチを創る人材」の育成に直結しているからです。イマジネーション、クリエイションの力で「ゼロイチ」を実現できる人材が台頭してくると日本はさらに強くなります。

 例えば、私どもが編集を担当した『ワクワク!かんたん!おうちSTEAM』(くもん出版)というムック本があります。家でできる、STEAMに関する様々なアクティビティを収録しており、実際に手を動かし、立体で学ぶことができます。

「創造性への自信」は手を動かすことで鍛えられると言われています。こうした力を持った人達が日本に増えていくことが、今後期待されているのです。

 日本では「管理教育」の側面が強く、創造性を育みやすい教育になっているかというと、変化の兆しはあるものの、まだまだ「教え方がわからない」という現場からの声も多いのが現状で、模索が続いています。

 現場の先生方に学んでいただくことは必要ですが、全てを先生方が教えるというものでもないと考えています。いかに実社会とつながった学習をしていくかを考えた時には、専門家との連携が重要になってきます。

 また「生成AI(人工知能)」が登場し、各国で規制の枠組みを構築している最中ですが、AIはあくまでもツールです。その活用の仕方や起き得るリスクについては、大人がきちんと教える必要があります。

 私はクリエイティブと地域創生に取り組む会社を経営していますが、その過程でSTEAM教育に出会いました。活動を通じて、子ども達が変わっていく姿を幾度も見てきました。経営者の皆様の中にも、公教育に関心をお持ちの方もおられると思います。ぜひSTEAM教育にご関心を持たれましたら、お声がけいただけると幸いです。

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