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インサイダー疑惑に揺れる東証、金融庁 資産運用立国戦略に冷や水も

財界オンライン 2024年11月19日 11時30分

前代未聞の不正行為


金融庁と東京証券取引所の関係者がインサイダー取引の疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を相次いで受けていたことが発覚し、大きな波紋を広げている。市場の公正を守る重責を担う監督者による前代未聞の不正行為だけに政府も深刻視。

 投資家の不信を解消できなければ、新NISA(少額投資非課税制度)の導入などで進んできた「貯蓄から投資」への動きに水を差し、石破茂政権が掲げる「投資大国」構想も頓挫しかねないリスクがある。

 東証の社員がインサイダー取引の疑いで調査を受けたのは今回が初めて。「海外の主要取引所でもこのようなスキャンダルは聞いたことがない」(日本取引所グループ幹部)というだけに、ショックの大きさがうかがえる。

 監視委の強制調査を受けたのは、東証の上場部開示業務室に勤める20代男性社員。上場企業が投資家などに開示する重要な情報を公開前に扱っていた。この立場を悪用して、企業のTOB(株式公開買い付け)に関する情報を親族に漏洩、株式の売買を推奨した疑いが持たれている。社員本人の取引は確認されていない。不審な株取引は監視委だけでなく、日本取引所自主規制法人も把握していた。

 監視委は、調査結果を精査し、東京地検特捜部への告発を検討する方針。事件化すれば、東証の管理責任も厳しく問われる。

 一方、金融庁では企画市場局企業開示課でTOBに関する書類の審査などを担当していた30代男性職員がインサイダー取引を繰り返していた疑いで監視委の強制調査を受けていた。

 この男性は2019年に裁判官に任官し、大阪地裁判事補などを経て今年4月に最高裁事務局から金融庁に出向していた。監視委はこの件でも東京地検特捜部への告発を視野に調査を進めており、金融庁は情報管理や出向者の法令遵守体制に不備がなかったかどうか、厳しく検証する必要がありそうだ。

 市場関係者は「政府が『資産運用立国』の旗を振る中、当局者の間でも自分も儲けたいとの誘惑に駆られる人が出てきても不思議ではない環境だ」と指摘。東証や金融庁は組織を挙げて社員・職員の職業倫理意識を改めて徹底させる覚悟が問われる。

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