3つの主力事業
「お客様の求めているものが世の中になければ自らつくる。技術商社でありながらメーカー機能を持っている強みを生かしていく」ー。このように強調するのは東京エレクトロンデバイス社長・CEOの徳重敦之氏。
半導体製造装置メーカーとして知られる東京エレクトロン。その電子部品部門を譲り受け、半導体と電子デバイスを販売するエレクトロニクス商社として1986年に誕生したのが東京エレクトロンデバイスだ。東京エレクトロンの名を冠してはいるが、「半導体製造装置を販売してはいない」(同)。
東京エレクトロンデバイスの主力事業は3つ。半導体や電子デバイスを扱う「EC事業」、IT機器やシステムの販売などを手掛ける「コンピュータシステム関連事業(CN事業)」、そして顧客の仕様に基づいた製品開発を行う「プライベートブランド事業(PB事業)」だ。
売上高2428億円(2024年3月期)のうち約2099億円を占めるのがEC事業。米国やドイツなどの海外有力メーカー約40社の半導体製品を扱い、産業機器や車載関連機器などのメーカーを中心に2000以上の顧客を持っている。その半導体市場も足元では調整局面を迎えている。徳重氏は「半導体不足の局面を迎えたことを受けて、各社が在庫を厚く持っている。だが、中長期的にはAIの普及に伴って右肩上がりで成長していくのは間違いない」と話す。
通常、商社というと、最先端の商品を仕入れて顧客に提案するもの。だが、同社の差別化要素は他にある。それが商社として仕入れた最先端の技術動向や、そこから生まれる新たなニーズを叶える自社ブランド商品の開発や設計・量産支援を行う「メーカー機能」を持っている点だ。
例えばCN事業では、セキュリティサービスの「TED-SOC」がある。同サービスは24時間365日の体制で、専任の運用チームが監視・分析をし、事象が発生したときの対応支援などを行うサービスだ。
これからは「AIの攻撃をAIが防御する」(同)という世界になるかもしれない。そのような先進的な技術を発掘するために「常に新しい技術を見つけるため、"目利き力"を持った社員をシリコンバレーに常駐させている」(同)。
その中で同社のメーカー機能の力が発揮されているのがPB事業。例えば、労働生産性の向上に寄与するために、半導体基板や半導体素子の材料となる円盤状の薄い板(化合物ウエハ)の表面についた微細なキズなどを高速・高感度で捉えることができる化合物半導体ウエハ検査装置を自社で開発。「検査員が目視で確認していた欠陥を自動検知に置き換えられる」。
さらに23年には日本エレクトロセンサリデバイスからシリコンウエハ検査装置事業を譲り受け、半導体の検査技術に磨きをかけている。加えて、同社のPB事業の範囲は半導体検査の領域にとどまらない。
例えば、医療機器や農業関連のIoT機器だ。医療機器に関しては、「医療機器を製造及び販売するために必要な第2種医療機器製造販売業許可を取得し、医療機器製造業の登録も完了している」と徳重氏。血糖値検査向けの検体検査装置や画像処理技術を活用した超音波診断装置向けの電子基板や筐体をはじめ、医療機器の開発・製造を手掛けている。
また、大手通信事業者が開発し、現在は事業譲渡された新会社が提供する農業AIブレーン「e-kakashi」。露地やビニールハウスなど屋内外の圃場から収集した環境データをAIで分析し、最適な栽培方法を提案する機器だが、東京エレクトロンデバイスが開発した環境センシングソリューションが採用されている。
グローバルニッチトップに!
徳重氏は自社を「超ハイテク御用聞き」と表現する。顧客の商品コンセプトを聞き取り、全社員の約3割を占めるエンジニアが技術支援や提案活動、設計開発を行っている。「顧客のオーダーメイドによってグローバルニッチトップになる」(同)というわけだ。
徳重氏はEC事業を安定事業に置きつつ、CN事業とPB事業で成長を牽引し、30年3月期には売上高3000億~3500億円の実現を目指す。優秀な人材を惹きつけるため、本社を横浜から東京・渋谷の「渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー」に移転させた。
同社の経営思想の根底には東京エレクトロンの"挑戦魂"が流れていると徳重氏は語る。「TBSの地下の1室から始まった東京エレクトロンも最初は電子部品を仕入れて売るだけだったが、それが半導体へと変わり、今では自ら半導体製造装置を作るメーカーへと変身した。当社にもその思想が根付いている」
そう語る東京エレクトロン出身の徳重氏は創業者の1人・小髙敏夫氏から薫陶を受けている。それが「増益増収」という発想。要は「利益が時価増額につながり、それが社員やその家族の幸せにつながる」という考え方。足元の経常利益率は5.7%。全業種の中央値(目安)は5.1%だ。これを8%以上に引き上げることが目標になる。
他の企業がやらないことをやるー。時価総額が1000億円超と11兆円を超える東京エレクトロンには企業規模などでは及ばないが、リスクをとって新しいことに挑戦するDNAは受け継いでいる。
「お客様の求めているものが世の中になければ自らつくる。技術商社でありながらメーカー機能を持っている強みを生かしていく」ー。このように強調するのは東京エレクトロンデバイス社長・CEOの徳重敦之氏。
半導体製造装置メーカーとして知られる東京エレクトロン。その電子部品部門を譲り受け、半導体と電子デバイスを販売するエレクトロニクス商社として1986年に誕生したのが東京エレクトロンデバイスだ。東京エレクトロンの名を冠してはいるが、「半導体製造装置を販売してはいない」(同)。
東京エレクトロンデバイスの主力事業は3つ。半導体や電子デバイスを扱う「EC事業」、IT機器やシステムの販売などを手掛ける「コンピュータシステム関連事業(CN事業)」、そして顧客の仕様に基づいた製品開発を行う「プライベートブランド事業(PB事業)」だ。
売上高2428億円(2024年3月期)のうち約2099億円を占めるのがEC事業。米国やドイツなどの海外有力メーカー約40社の半導体製品を扱い、産業機器や車載関連機器などのメーカーを中心に2000以上の顧客を持っている。その半導体市場も足元では調整局面を迎えている。徳重氏は「半導体不足の局面を迎えたことを受けて、各社が在庫を厚く持っている。だが、中長期的にはAIの普及に伴って右肩上がりで成長していくのは間違いない」と話す。
通常、商社というと、最先端の商品を仕入れて顧客に提案するもの。だが、同社の差別化要素は他にある。それが商社として仕入れた最先端の技術動向や、そこから生まれる新たなニーズを叶える自社ブランド商品の開発や設計・量産支援を行う「メーカー機能」を持っている点だ。
例えばCN事業では、セキュリティサービスの「TED-SOC」がある。同サービスは24時間365日の体制で、専任の運用チームが監視・分析をし、事象が発生したときの対応支援などを行うサービスだ。
これからは「AIの攻撃をAIが防御する」(同)という世界になるかもしれない。そのような先進的な技術を発掘するために「常に新しい技術を見つけるため、"目利き力"を持った社員をシリコンバレーに常駐させている」(同)。
その中で同社のメーカー機能の力が発揮されているのがPB事業。例えば、労働生産性の向上に寄与するために、半導体基板や半導体素子の材料となる円盤状の薄い板(化合物ウエハ)の表面についた微細なキズなどを高速・高感度で捉えることができる化合物半導体ウエハ検査装置を自社で開発。「検査員が目視で確認していた欠陥を自動検知に置き換えられる」。
さらに23年には日本エレクトロセンサリデバイスからシリコンウエハ検査装置事業を譲り受け、半導体の検査技術に磨きをかけている。加えて、同社のPB事業の範囲は半導体検査の領域にとどまらない。
例えば、医療機器や農業関連のIoT機器だ。医療機器に関しては、「医療機器を製造及び販売するために必要な第2種医療機器製造販売業許可を取得し、医療機器製造業の登録も完了している」と徳重氏。血糖値検査向けの検体検査装置や画像処理技術を活用した超音波診断装置向けの電子基板や筐体をはじめ、医療機器の開発・製造を手掛けている。
また、大手通信事業者が開発し、現在は事業譲渡された新会社が提供する農業AIブレーン「e-kakashi」。露地やビニールハウスなど屋内外の圃場から収集した環境データをAIで分析し、最適な栽培方法を提案する機器だが、東京エレクトロンデバイスが開発した環境センシングソリューションが採用されている。
グローバルニッチトップに!
徳重氏は自社を「超ハイテク御用聞き」と表現する。顧客の商品コンセプトを聞き取り、全社員の約3割を占めるエンジニアが技術支援や提案活動、設計開発を行っている。「顧客のオーダーメイドによってグローバルニッチトップになる」(同)というわけだ。
徳重氏はEC事業を安定事業に置きつつ、CN事業とPB事業で成長を牽引し、30年3月期には売上高3000億~3500億円の実現を目指す。優秀な人材を惹きつけるため、本社を横浜から東京・渋谷の「渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー」に移転させた。
同社の経営思想の根底には東京エレクトロンの"挑戦魂"が流れていると徳重氏は語る。「TBSの地下の1室から始まった東京エレクトロンも最初は電子部品を仕入れて売るだけだったが、それが半導体へと変わり、今では自ら半導体製造装置を作るメーカーへと変身した。当社にもその思想が根付いている」
そう語る東京エレクトロン出身の徳重氏は創業者の1人・小髙敏夫氏から薫陶を受けている。それが「増益増収」という発想。要は「利益が時価増額につながり、それが社員やその家族の幸せにつながる」という考え方。足元の経常利益率は5.7%。全業種の中央値(目安)は5.1%だ。これを8%以上に引き上げることが目標になる。
他の企業がやらないことをやるー。時価総額が1000億円超と11兆円を超える東京エレクトロンには企業規模などでは及ばないが、リスクをとって新しいことに挑戦するDNAは受け継いでいる。