専制国家が多くなる今、民主主義を徹底して─。先の衆院選で自民党は少数与党に転落し、政治は流動化。一方、米国の新大統領にトランプ氏が再選し、世界では緊張感が走っている。約30年前に政治改革にも奔走した北川氏は「今回の選挙は時代を転換させるエポックメイキングな選挙になった」と総括する。今を生きる政治家はどうあるべきか、国際政治の中での日本の立ち位置はどうあるべきかを直撃した。
民主主義の曲がり角に来ている
─ 衆院選では国のあるべき姿や国家戦略といった骨太な政策議論が少なかった印象を受けました。どう総括しますか。
北川 民主主義の曲がり角に来ている選挙だったと思います。言い方を変えると、エビデンスです。DXやAIによる様々な指数を基にした社会の構造改革が求められるようになったということです。今までの永田町的な政治感覚からの変わり目になったと感じますね。
少々失礼な言い方になりますが、今回の選挙では減税します、このようなサービスを提供しますといった短絡的な内容が盛んに言われました。政治家が未だにそういった感覚でいることが顕著に表れたわけです。
─ 国のカタチを示す論議が交わされるべきだったと。
北川 ええ。国家の構造をどうするか、そして最も大事なことは、例えば国債発行額がどんどん増えていく中で、財政健全化をどう図るかという骨太の議論がなされていないということです。それを補う数字的なエビデンスがもっと語られる民主主義に変わっていかないと、結局は子どもたちに今の借金のつけを回すということになります。
さらに今回の選挙では、与党と野党の人数の転換が起こりました。それだけの大きな転換ですから、これを契機に、今までのやり方を考え直す大きなチャンスを得たとも言えます。政治とカネの問題を含めて、負担と投資の問題を考え直すきっかけにしなければなりません。その点で、今回の選挙は時代を転換させるエポックメイキングな選挙になったと思います。
─ 北川さん自身、政治改革に身を投じてきました。政治家としてのあるべき姿をどう描いていますか。
北川 先ほどのDXの時代の変化を言い表しますと、世代交代が起こっていると言えます。従来までの長老といわれる議員によって評価されるような方たちが必然的に政治の舞台から去らざるを得ない状況も生まれています。しかし、数値だけを追い求める若手が確実かというと、これも非常に危ないと思います。
むしろ、そういった人たちの間でミックスが起こっています。今の政治は数字だけで表せられないものになってきました。1+1が2という形で世の中が仕切れたら政治は必要ありません。そういう意味でも、幅の広い政治が行われるように、マイルドにうまく回転していくものに変わる必要があるでしょう。
約30年前に我々が行った政治改革がなければ、もっと早く日本の政治は潰れていた可能性があったと思います。しかし結果的に見れば、それも不十分だったと。30年後にこういう問題を引き起こした遠因にもなっているわけですからね。それだけ政治は変化しているのです。
ただ、政治改革に対する当時の熱量は大きかったと思いますね。それに比べて今回の選挙はどこかシャビー(古めかしい)だったように感じます。
─ 若い世代の政治家の行動についてはどう見ていますか。
北川 一概には言えませんが、「小泉チルドレン」などと呼ばれた人たちは中選挙区制で揉まれて生き抜いてきたという、いい意味の根性、地べたを這いつくばるという経験がありません。離党するにしても落選する可能性があるという覚悟を持つくらいでなければなりません。その意味では、少し弱い気がします。
分断・分裂の時代での日本
─ そういった転換が求められる中で、米国大統領選ではトランプ氏の再選となりました。足元の国際情勢は分断・分裂の様相を色濃くしています。こういった時代に政治家はもちろん、国民一人ひとりがどのような認識に立つべきだと考えますか。
北川 日本は宗教などの要因によって決定的な分断を生む要素が非常に少ない国でもあります。そういう意味からすれば、安定して物事が考えられる政治風土はまだ残っていると思うのです。この文化を世界に発信していくということが、これからの日本の世界の中での役割になるのではないかと思います。ですから、地政学的にも政治的にも、宗教的にも、日本は今こそ世界に打って出るべきです。
─ 仏教や神道など日本人の宗教観は全てに命が宿る共存・共生の思想になります。
北川 はい。日本は一神教の国ではありません。世界的な潮流を見ても、一神教の国・地域だと、どうしても対立を生んでしまう傾向にあります。これは世界政治史の中で一番大きな問題だと私は思っています。
ただ、中国の問題も含めて日本の政治の役割は大きいと思います。中でも大事なのがデモクラシー。専制主義の国が多くなる中、民主主義体制の日本の存在意義が高くなっているからです。この民主主義を何としても守り抜く。その精神を日本に残していかなければならないと強く思います。
民主主義の曲がり角に来ている
─ 衆院選では国のあるべき姿や国家戦略といった骨太な政策議論が少なかった印象を受けました。どう総括しますか。
北川 民主主義の曲がり角に来ている選挙だったと思います。言い方を変えると、エビデンスです。DXやAIによる様々な指数を基にした社会の構造改革が求められるようになったということです。今までの永田町的な政治感覚からの変わり目になったと感じますね。
少々失礼な言い方になりますが、今回の選挙では減税します、このようなサービスを提供しますといった短絡的な内容が盛んに言われました。政治家が未だにそういった感覚でいることが顕著に表れたわけです。
─ 国のカタチを示す論議が交わされるべきだったと。
北川 ええ。国家の構造をどうするか、そして最も大事なことは、例えば国債発行額がどんどん増えていく中で、財政健全化をどう図るかという骨太の議論がなされていないということです。それを補う数字的なエビデンスがもっと語られる民主主義に変わっていかないと、結局は子どもたちに今の借金のつけを回すということになります。
さらに今回の選挙では、与党と野党の人数の転換が起こりました。それだけの大きな転換ですから、これを契機に、今までのやり方を考え直す大きなチャンスを得たとも言えます。政治とカネの問題を含めて、負担と投資の問題を考え直すきっかけにしなければなりません。その点で、今回の選挙は時代を転換させるエポックメイキングな選挙になったと思います。
─ 北川さん自身、政治改革に身を投じてきました。政治家としてのあるべき姿をどう描いていますか。
北川 先ほどのDXの時代の変化を言い表しますと、世代交代が起こっていると言えます。従来までの長老といわれる議員によって評価されるような方たちが必然的に政治の舞台から去らざるを得ない状況も生まれています。しかし、数値だけを追い求める若手が確実かというと、これも非常に危ないと思います。
むしろ、そういった人たちの間でミックスが起こっています。今の政治は数字だけで表せられないものになってきました。1+1が2という形で世の中が仕切れたら政治は必要ありません。そういう意味でも、幅の広い政治が行われるように、マイルドにうまく回転していくものに変わる必要があるでしょう。
約30年前に我々が行った政治改革がなければ、もっと早く日本の政治は潰れていた可能性があったと思います。しかし結果的に見れば、それも不十分だったと。30年後にこういう問題を引き起こした遠因にもなっているわけですからね。それだけ政治は変化しているのです。
ただ、政治改革に対する当時の熱量は大きかったと思いますね。それに比べて今回の選挙はどこかシャビー(古めかしい)だったように感じます。
─ 若い世代の政治家の行動についてはどう見ていますか。
北川 一概には言えませんが、「小泉チルドレン」などと呼ばれた人たちは中選挙区制で揉まれて生き抜いてきたという、いい意味の根性、地べたを這いつくばるという経験がありません。離党するにしても落選する可能性があるという覚悟を持つくらいでなければなりません。その意味では、少し弱い気がします。
分断・分裂の時代での日本
─ そういった転換が求められる中で、米国大統領選ではトランプ氏の再選となりました。足元の国際情勢は分断・分裂の様相を色濃くしています。こういった時代に政治家はもちろん、国民一人ひとりがどのような認識に立つべきだと考えますか。
北川 日本は宗教などの要因によって決定的な分断を生む要素が非常に少ない国でもあります。そういう意味からすれば、安定して物事が考えられる政治風土はまだ残っていると思うのです。この文化を世界に発信していくということが、これからの日本の世界の中での役割になるのではないかと思います。ですから、地政学的にも政治的にも、宗教的にも、日本は今こそ世界に打って出るべきです。
─ 仏教や神道など日本人の宗教観は全てに命が宿る共存・共生の思想になります。
北川 はい。日本は一神教の国ではありません。世界的な潮流を見ても、一神教の国・地域だと、どうしても対立を生んでしまう傾向にあります。これは世界政治史の中で一番大きな問題だと私は思っています。
ただ、中国の問題も含めて日本の政治の役割は大きいと思います。中でも大事なのがデモクラシー。専制主義の国が多くなる中、民主主義体制の日本の存在意義が高くなっているからです。この民主主義を何としても守り抜く。その精神を日本に残していかなければならないと強く思います。